火の国へトリップ(日輪編)

えりー

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マリーの初トリップ

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マリーの家系は年頃になると皆色々な世界へトリップする決まりがある。
そうして伴侶を見つけ自分の世界へ連れてくる習わしがあった。
マリーも年頃になりトリップしてみた。
行き場はもちろん選べない。
マリーはとても暑い場所にトリップしてしまったようだ。
気がつくと空から地面へ落下していく。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「危ない!」
そう言い1人の男性がマリーを受け止めてくれた。
マリーはその男性のあまりの美しさに目を奪われた。
金色の髪に、水色の瞳。
「貴方は一体何者なのですか?」
「私は、マリーといいます。この世界にトリップしてきました」
そう言うとマリーはあまりの暑さで体がぐったりしてきたのを感じた。
「この昼間に日よけの布もなく外にいることは危険です。ひとまず私の家へ行きましょう」
そう言い男性はマリーを抱え急いで飛んだ。
マリーは驚いた。
この世界の住人は空を飛ぶことが出来るのか・・・。
だがそんな事呑気に考えている場合じゃない。
マリーはもう体を動かすことが出来なくなっていた。
男性は家へ入ると涼しい部屋にあるベッドの上に彼女の体を横たえさせた。
そして体を冷やすために彼女の服を少し脱がし、そこに冷たい手拭いをあて、何度もそれを繰り返した。
そして体を扇で扇いだ。
そうされていると体が徐々に回復してきた。
「あの、もう大丈夫です。助けてくださってありがとうございました」
「これを飲んでください、ただの水です」
「?」
何か引っかかる物言いをされた気がしたがマリーは気にしなかった。
「ありがとうございます」
マリーは一気にその水を飲み干した。
「生き返りました!暑くて死んじゃうかと思いました」
「貴方は警戒心がないんですか?」
「?」
「ここは私の家で、もしその水に何か入っていたらどうするんですか?」
「・・・じゃあ、飲まない方が良かったんでしょうか?」
マリーはそう言った。
すると男性は微笑んだ。
「・・・冗談ですよ」
そう言うと男性は部屋から出て行こうとした。
「待ってください。どこへ行くんですか?」
マリーは男性を引き留めた。
「あなたの名前は?」
「日輪と申します。今から食べ物を持ってきます」
日輪はたくさんの果物を抱え戻ってきた。
「どれでも召し上がってください」
「はい」
お腹が空いていたマリーは日輪から与えられた果物を手に取り食べた。
「甘くて美味しいです」
「それは良かった」
「それで、マリーさんは一体どうしてこの世界へやって来たんですか?」
日輪も果物を手に取り齧った。
「私の家では年頃になるとトリップして異世界へ行き伴侶を探してこなければいけない決まりがあります。それでトリップしてみたんですが・・・」
「そしたらこの世界へトリップしてしまった・・・という事ですね?」
「はい」
「一度トリップすると一か月はトリップできなくなるんです。その間ここにおいてくれませんか?」
日輪は驚いた。
彼女は男の一人暮らしの家に一か月おいて欲しいという。
「私は一向にかまいませんが・・・この世界はその服では厳しそうですね」
「確かに暑いです」
マリーは長袖に幾重にも重なったドレスのような服を着ている。
「でも、私着替え持ってこれなくて・・・」
そう言うと日輪は言った。
「着替えの調達はこちらでいたしますので気になさらないでください。今から出かけてきます。でもけしてこの部屋から出ないでくださいね?この部屋以外の場所は家の中でも暑いです」
マリーは素直に頷いた。
そんなマリーの頭を撫で、日輪は出かけて行った。
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