天狗の花嫁

えりー

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啓の想い

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啓は由香の事を本気で愛している。
だから、仕方なく由香を悠の元に置いている。
本当は自分の元に置いておきたいと思っている。
啓は、一度由香を抱いた。
その時由香は泣いていた。
だからもう由香を抱かないことを誓った。
しかし、由香を抱きたくて堪らなくなることがある。
由香は、気にしていないのか無防備に啓に近づいてくる。
啓はそんな由香の警戒心のなさに少し呆れている。
悠の事は相変わらず好きではないが協力して由香を守っている。
またいつ由香を狙って天狗が現れるか分からないからだ。
由香からなるべく目を離さないように気を付けている。
だが、由香はちょこまかと動き回る。
危なっかしくて放っておけない。
庇護欲を掻き立てられる。
啓の目から見ると由香はとても可愛く見える。
他にもたくさん言い寄ってくる女子がいるがやはり由香以外目に入らない。
でも、由香は結局悠を選んだ。
悠とずっと昔に嫁になると約束しているらしい。
そして由香の意思も硬い。
悠の嫁として自覚している。
だが、啓はこれからも由香を守っていくつもりでいる。
悠1人では頼りない。
啓はそう思っていた。
しかし啓だって男だ。
好きな女が近くに居れば触れたくなってしまう。
それがたとえ、悠の目の前だとしてもだ。
手を握ったり、唇にキスをしたりはしている。
もし、2人が喧嘩をし、付け入る隙があればそうするつもりだ。
そう思う反面、喧嘩せず仲良くいて欲しいとも思っている。
そうすれば由香は幸せなままなのだから。
啓は由香が幸せになることを一番に願っている。
このまま、何も起こらず平穏に過ごしてもらいたい。
啓はそう思った。
啓は登校時間になってもなかなか地上に降りてこない二人を迎えに行った。
すると啓は来なければよかったと後悔した。
「由香、悠。遅刻するぞ」
そう言いドアを開けた。
すると2人は言い争っていた。
「啓~・・・」
よく見ると由香は泣いていた。
「悠!由香に何をした」
「・・・ただ抱いただけだ」
すかさずそう答えた。
しかしあの泣き方から何かを無理強いしたのは確かだろう。
「・・・悠、あまり由香を泣かせるようなら俺が貰うぞ」
「お前には渡さない」
「由香、俺と啓。どちらを選ぶ?」
自分が選ばれる自信があるのでそう強気に訊ねた。
「今のままの悠じゃ嫌。今は啓を選びたい」
そうはっきり言われてしまい悠はショックを受けた。
(悠は一体何をしたんだ・・・?)
啓はそう思った。
今だけでもそう言ってもらえて啓は嬉しかった。
啓はこれから後に花嫁を迎えるがこれはまた別のお話・・・。
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