我が家の守り神

えりー

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最終回

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二人は狭いながらも部屋を借りた。
彼女の姿は相変わらず自分しか見えない。
今のところ追っても来ない。
なんとなくTVをつけると八代の家の事件が流れていた。
周りは野次馬や、TV局の関係者でごった返していた。
こうやって八代家は徐々に落ちぶれていった。
もう追手の心配はないのかもしれない。
家はこのままいくと完全につぶれるだろう。
「後悔はしていないの?」
「ああ、何の後悔のない」
(むしろ清々しい気分だ)
悟は結局警察に捕まった。
その事もニュースで知った。
今、八代家には当主はいない。
ふと、不思議に思った事がある・・・。
もしかして、虎次郎は彩を見ることが出来ていたのではないのだろうか。
そうでないと会話したり、逃がしたりできるはずはない。
虎次郎も彩に魅了された一人だったのかもしれない。
きっと虎次郎は彩の姿を見ることが出来る人間だ。
でも何故もっと早く助けてあげなかったのだろうか?
やはり家を守る為だろうか?
その事も虎次郎に聞かないとわからなかった。
虎次郎は彼女を逃がすために見えないふりをし続けていたのかもしれない。
樹はそう思った。
虎次郎の傷は深くまだ意識が戻っていないらしい。
早く回復して欲しいと願う二人だった。
二人は体を寄せ合いキスを交わした。
これからは平穏に暮らしていけると思うと彩も樹も嬉しかった。
もう誰にも咎めることなく、好きなだけ二人で一緒にいられる。
そして、樹は収入は低くなったが、転職をした。
今のところ何の問題もなく仕事に励んでいる。
彩は時間を見つけては外へ出て散歩を楽しんでいた。
今までの時間を取り戻そうとするかのようにも見えた。
季節を感じ、人々の会話を聞き、仕事中の樹の様子を見に来ることもあった。
樹たちは幸せだった。
もう、八代家とは何の関係もなく生きていける。
樹は全てを捨て、彩と生きることを選んだ。
見合いも、結婚ももうしなくていい。
二人ともが自由を手に入れたのだった。
好きな相手が物の怪だろうと何だろうと関係ない。
愛してしまったのだから愛し抜いてみせるし守ってみせる。
樹は心にそう誓った。
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