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隣国の兵士

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何故隣国のルーン国の兵士が昨日極秘で城外に出たことを知っていたのか・・・。
それともずっと待ち伏せされていたのか。
どちらにしても物騒な話だ。
最近ではあまり桃子を外に出してやることが出来なかったが以前は度々、時間を作って城外へ散歩に行くのが日課になっていた。
その情報が洩れ、待ち伏せされていたと考えるのが自然かもしれない。
だが、その日どこに行くかは護衛のマオールくらいにしか伝えていない。
彼が情報を漏らすとは思えない。
「マオール何かわかったか?」
「はい、ここで前に働いていた侍女に聞いたそうです」
「前に働いていた侍女ー・・・?」
「国外追放なさったアーシュでは?」
2人は顔を見合わせた。
彼女の本当の狙いは軽い罪で国外追放され、隣国に今のミネン国の状況を漏らすことだったのだ。
見落としていたのはこの事だったのだ。
彼女はこの国から出すべきではなかった。
アーシュは色々な情報を知っている。
今になりルークは後悔した。
しかし、今回は本当にルーン国は戦争までするつもりはないようだ。
もし、相手が本気なら本当に大勢で押し掛けてきたに違いない。
今のルーン国の王は代がわりしたばかりで戦争なんてしている余裕はないはずだ。
それを考えると今回の事は威嚇か何かの意味合いの攻撃だろう。
「マオール、拷問を変わろう」
「何か聞きだせるかもしれない」
「はい」
こうして長い拷問の時間が始まった。

聞き出せた情報はやはりアーシュから聞いたとしか思えない内容ばかりだった。
いつ議会が行われているかや、この国の催し物や、秘密裏に行われている儀式。そして主に桃子の事だった。
この国では異世界から召喚した女性を娶る習わしがあることを他の国は知らない。
そしてその女性が魔女と呼ばれ魔術を使えることも知られていない。
自国の国民も知らないことまで知られていた。
今回の攻撃は威嚇ではなく桃子の能力を見るためのものだったようだ。
桃子がどの程度の魔術を使えるか知りたかったようだ。
それが予想以上のものだった為、彼らは逃げ出したそうだ。
もしそれが本当なら桃子はこれから狙われることになるかもしれない。
しかし、桃子の能力は身を守るためにも使える。
彼女は今能力の鍛錬をしているらしい。
だが、ルークは桃子の事が心配になった。
桃子に会いたくなり地下牢を後にした。

地下牢から急いで桃子の元へ行った。
「桃子」
「ルーク?どうしたの?そんなに急いで」
「もしかしたら桃子が狙われているのかもしれないことを伝えようと思ってな」
「何かわかったの!?」
「裏で糸を引いているのはアーシュだという事は分かった。この国の情報を持って他国へ行きミネン国の情報を流しているようだ」
「?」
桃子にはそれがどういうことかさっぱりわからなかった。
「え?どういうこと?」
「だから、桃子が魔女であることがバレた。他の国の連中がお前を欲しがる」
「?」
状況がよくわかっていない桃子をルークは強く抱きしめた。
ミューは静かに部屋から出ていった。
「そういえば私次に行く場所は泉かもしれないって話した事があったわ」
「そうか、そしたらやはりますますアーシュの可能性が高くなったな」
「でもいつ行くかなんて言ってない」
「多分お前の力を見るためにルーン国の兵士を配置しておいたんだろう」
桃子は不思議に思った。
「異世界から召喚できるのってミネン国の王様だけなの?」
「ああ。何故かは分からないがそうらしい」
ルークは急に不安になった。
”魔女”の存在は偉大だ。
実際に何度桃子に助けられたかわからない。
これから先”魔女”の件で他国と揉めるかもしれない。
先手を打ってこちらから害がないことを話にいくか?
きっとそれが良いだろう。
桃子には酷な旅になるだろうがこのまま籠の鳥にしておくのも可哀そうだ。
ルークは決めた。
桃子を連れ、まずは隣国のルーン国へ挨拶へ行くことにした。
そして、こちらは戦う意思がないことを伝えようと思った。
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