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最終話

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桃子に子ができた事で王族たちの騒ぎは収まった。
ルークも桃子も一安心した。
桃子はこれから安定期に入るまでは安静にしているように女医から言われた。
ルークからは部屋から一歩も出ないように言われた。
さすがにそれは聞き入れられない。
一日中部屋にいると気が滅入る。
ルークは桃子が無茶なことをしないか心配でたまらなかった。
桃子は束縛が好きではない。
どちらかというと自由にのびのびしていたい。
しかし、ルークがミューに桃子の見張りを頼んだ。
その為、桃子は自由に外に出る事さえできない。
ミューが食事の用意に行く時だけこっそり外に出て庭を歩き回っている。
そこにルークがやって来て見つかり担ぎ上げられ、部屋へ運ばれた。
「桃子、部屋から出るなと言っただろう?」
「・・・だって退屈なんだもん」
「だが、外は危険がいっぱいあるんだ」
今は国も安定し、他国ともうまくいっている。ラルーン国の動きもない。
それなのに何が危険だというのか。
桃子はあからさまにふてくされた。
「危険なんてないじゃない。ルーク何が危険だというの?」
「桃子は放っておくと何をしでかすか分からない」
「それで?」
「外の散歩だって躓いて転ぶかもしれないし、お腹をぶつけるかもしれない」
ルークは淡々と言って聞かせた。
「私はそこまでドジじゃないわ」
「いいや、桃子の事だからわからない」
「お二人ともお食事の準備が出来ましたよ~」
ミューは最近しっかりしてきたように思う。
一体何があったのだろう。
「ルーク王、桃子様にもたまには気分転換が必要だと思います」
「だが・・・やはり心配だ」
「それではルーク王が外に連れて行ってあげたらどうですか?」
「・・・それは考えてなかったな」
ミューの口添えで桃子は1日1回の庭の散歩の許可が下りた。
もちろんルークと一緒の時のみ。
桃子はそれでも外に出られることが嬉しかった。

城では今、桃子の懐妊の話題で持ち切りだ。
あの侍女たちを見返せた気がして桃子もすっきりした。
しかし、日々お腹が大きくなるにつれて少しずつ怖くなってくる。
本当にこの世界で無事お産ができるのか毎日不安だ。
その不安をルークに言っても理解してもらえそうにない。
元いた世界では色々な出産方法があった。
こちらの世界では自然分娩しか無いようだ。
自分に産む力があるか心配になる。
(考えても仕方がない!)
桃子は考え方を変えることにした。
まずは産めるように体力作りから入ろうと思い書庫で借りてきた出産の本を開いた。
そこには出産をするための体づくりの体操が載っていた。
桃子は早速その体操を始めた。
「桃子様、そんなに動いて大丈夫なんですか?」
「うん。この本には妊娠してからの体作りも大事だと書かれていたの」
「桃子様あまりご無理はしないでくださいね?」
「ありがとう。ミュー」
そうして体を動かしているとさっきの不安が少しは和らいできた。
「桃子!!」
そこへ、ルークがやって来た。
「何をしている!安静にしていてくれと言っただろう!?」
「大丈夫よ。子供を産める体づくりをしているだけだから」
「?」
「この本に書いてあったことをしてみているの」
その本をルークに渡すとルークは納得してくれた。
「ただ、あまり無理をするなよ?大事な体なんだから」
ルークは溜息を付きながらそう言った。
「はーい」
桃子は適当に返事を返した。
「ミュー、桃子にあまり無理させない様見張っておいてくれ」
「はい、わかりました」
「あと、ミュー。マオールが呼んでいたぞ?早く行ってやれ」
ミューは顔を赤く染め、部屋を後にした。
「ミュー、どうしたのかしら?顔が赤かったわ」
「桃子は鈍いな」
「桃子は知らないかもしれないが、マオールとミューは付き合い始めたんだ」
「え!?」
凄い年の差カップルだ。
桃子は態勢を崩し倒れかけた。
咄嗟にルークが支えてくれた。
「ほら、もう体操は止めて、お茶にしよう」
「うん」
「マオール達の話詳しく聞きたいだろう?」
「もちろん!」
桃子はお産の事も気になるが2人が付き合うきっかけとなった事柄にも興味がわいた。
今日も平和な1日が過ぎていく。
この平和な日々がずっと続けばいいのにと思う桃子だった。
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