魔王の息子に惚れられました

えりー

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指輪

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夜になり部屋に和樹が帰ってきた。
「唯奈、ただいま」
「おかえりなさい」
唯奈は笑顔を作り出迎えた。
「体はもういいのか?」
「うん。少しだるいだけ」
「そうか」
「うん」
「・・・」
2人の間に重い沈黙が落ちる。
沈黙を先に破ったのは和樹だった
「今日は一日何をしていた?」
「寝てたわ」
「唯奈に渡したいものがある」
「何?」
「手を出して目を閉じていてくれ」
唯奈は言われた通り手を出した。
すると指に何かをはめられた。
「もう目を開けていいぞ」
「あつ・・・」
目を開けると左手の薬指に指輪がはめられていた。
「サイズは合っているか?」
「・・・うん」
唯奈の指にぴったりだった。
シンプルなデザインの銀の指輪だった。
ふと視線を和樹の指に移した。
すると彼の左の手の薬指にも指輪がはまっていた。
「これ・・・もしかして結婚指輪?」
「に、人間界ではこういう習わしがあるんだろう?」
「うん」
(でも、どうして・・・今、このタイミングで渡すのだろう)
少し和樹は照れていた。
「和樹もしかして照れてる?」
「!!」
どうやら図星らしい。
唯奈は指輪が嬉しくて思わず和樹に抱きついた。
「ありがとう。和樹、大事にするね」
「ああ、今日人間界に行って買ってきたんだ」
「そうなんだ。いくらしたの?」
「・・・無粋な事は聞くな」
「ゴメン」
だが、値段が気になった。
そもそも人間界のお金を持っていたことに驚いた。
「指輪一つで唯奈の機嫌が直るなら安いものだ」
「だって結婚指輪をもらえるなんて思っていなかったから」
魔界には結婚指輪の習慣がないそうだ。
その事を知っていたから唯奈は驚いたのだ。
「だ、抱きついているがもう俺の事怖くないのか?」
「もう、平気みたい」
「それは良かった」
「?」
「じゃあ、抱かせてくれるか?」
「き、今日は優しく抱いてくれる?」
唯奈は昨夜の事を思い出し少し怖くなった。
「ああ、約束する」
そう言うと和樹は唯奈に優しいキスをした。
その日の晩は全身を愛撫され、優しく抱かれた。

翌朝、体に倦怠感は残っているののその日は動き回れそうだった。
唯奈は指輪を見て顔がにやけそうだった。
「和樹とお揃いの指輪。大切にしないと」
1人そう呟き王の間へと向かった。
指輪を見ていたら無性に和樹に会いたくなったのだ。
王の間へ行くと和樹が書類の山に囲まれていた。
「和樹?私だけど・・・」
「唯奈か。どうかしたのか?」
「ううん。顔が見たくなっただけ」
「あまりかわいい事を言うな。襲いたくなるだろう?」
「おそう・・・!?」
唯奈はその言葉に驚いた。
しかし和樹は本気でそう言ったようだった。
「和樹、これだけは伝えておこうと思ったの。私ね、和樹の事好きよ」
その言葉を聞き和樹は唯奈の手を引っ張り自分の腕の中へ引き寄せた。
「か・・・和樹?」
「誘惑してきた唯奈が悪いんだからな」
そう言うと机の上に押し倒され襲われそうになった。
唯奈は和樹の股間に蹴りを入れた。
「ぐっ!」
和樹は低く呻きその場に座り込んだ。
唯奈はその隙に王の間から出て行った。
「危なかった・・・襲われるところだったわ」
唯奈は危険を回避した。
思いも伝えられたし唯奈は満足した。

これから2ヶ月後に唯奈は妊娠する。
和樹は大喜びした。
唯奈も喜んだ。
2人は幸せに包まれた。
これはまだ先の話ー・・・。
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