水神の愛し子

えりー

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蓮の目的

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横に愛しい娘が眠っている。
初めての行為だったのに受け入れてくれた。
「泣いていたな・・・さぞ痛かっただろう・・・」
ベットのシーツには血が点々と落ちている。
「泣かせるつもりはなかったんだけどな・・・」
湯殿を用意させ横抱きで愛しい美羽を連れて行った。
まだ目を覚ます気配のない彼女とともに湯につかった。
「う・・・ん」
湯につかってみると美羽は少しずつ目を覚まし始めた。
「美羽?大丈夫か?起きれるか?」
「えっ?ここは!?」
確か自分はベッドにいたはずだ。
「体を清めようと思って湯の用意をさせた。動けるようで安心した」
一糸まとわぬ姿をみられたことを今になって恥ずかしくなってきた。
美羽はジタバタして蓮から距離をとった。
「懐かしいなそのジタバタする姿懐かしいな」
ぷっと蓮が吹き出した。
「あの時と一緒ですね」
助けてもらった時驚いてジタバタしてしまった。
今思うとあのころから蓮の姿は変わっていない。
そういえば蓮は一体いくつなのだろうか・・・?
「蓮様は今おいくつなのですか?」
「俺の年齢?そんなものが気になるのか?」
ふーむっと考え込む蓮は幼い。
「この川ができてからずっと存在しているから年齢は千歳は超えていると思うが・・・」
「え?」
すごい年の差婚だった。
「そんなに・・・」
そういえば木の寿命も長い。
それを考えれば蓮は軽く千歳は超えているんだろう。
「俺はそろそろ上がるが美羽はゆっくり体を休ませておいてくれ」
そういうとザバっと立ち上がり湯殿から出て行った。
美羽はほっとした。このまま湯に入って体を隠し続けたらのぼせるところだったからだ。
きっと蓮は気を使ってくれたに違いない。
自由で奔放な人に見えてもあの人は優しさも持ち合わせている。
初めて会った時も、そうだった。
そしてあの行為の最中も時間をかけて私を労わりながらしてくれた。
「私、やっぱり蓮様のこと好きだわ」
高鳴る胸を抑えながら美羽はつぶやいた。

「・・・」
(ああ、やっぱりそうか)
美羽を抱いたり触れたりすると自分が浄化されていくのがわかる。
今まで薄れていた神力が少し戻った。
美羽は特別な少女だったのだ。
(俺は美羽を愛している)
あの穢れない心も美羽のすべてを愛おしく思っている。
想い想われる相手と結ばれると神力が強くなる・・・ただの伝承かと思っていたがどうやら本当だったらしい。
その相手が美羽でよかったと蓮は思った。
ただ、このことを知られたくないと思った。
これではまるで美羽を利用しているみたいだからだ。
例え神力のことがなくとも蓮は美羽を娶るつもりだった。
それほど愛おしいと感じていた。
本当ならあの幼いままの美羽をこの場にとどめておきたかった。
だが、それだとあまりにも哀れだと感じた。
美羽がもしこのことを知ったらどう思うだろう。
他の者から聞かされる前に自分から打ち明けよう。蓮はそう思った。
でも、もう少しこのままの関係でいたいー・・・。
もし打ち明けてしまったら美羽は俺の元を去っていくかもしれない。
嫌われてしまうかもしれない。
俺はそれが何よりも恐ろしかった。



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