淡恋

えりー

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桜の木の下で

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湊はいじめが原因で高校に行かなくなった。
きっかけは他の虐められていた子を庇ったことから始まった。
ターゲットがその日から湊に移ったのだ。
そんな湊は学校が嫌になり行くことを止めた。
学校に行かない代わりに図書館へ通うことにした。
図書館は静かで居心地がとても良かった。
学校のような騒がしさが無く心穏やかに過ごせた。
家にも居づらい為、湊はいつも川辺の桜の木の下で本を読み過ごした。
学校帰りの学生の声が聞こえる前に家に帰る日々。
そんな日々がずっと続くと思っていた。

桜が満開になったある日、ひらりと花びらが読んでいた本の上に落ちてきた。
(綺麗・・・)
桜の花に見惚れていると桜の木の枝に紙が結付けられているのを見つけた。
湊は自然と手を伸ばしその紙を手に取った。
初めは何かわからなかったがそれは手紙だった。
しかも自分の名前が書かれていた。
湊は驚いた。
「・・・どうして私の名前が書いてあるの?」
手紙の内容はこうだった。

中村 湊様へ
私は、あなたの事が心配です。
一度学校へ来てみませんか?

短い文章だった。
湊はあたりを見渡した。
しかし人の気配はなかった。
ざわつく胸を抑え、本と手紙を持ってその日は早めに帰宅した。
帰宅すると母から色々言われた。
「湊、いつまで学校に行かないつもり?」
「このままでいいと思っているの?」
「・・・」
湊は何も答えずに階段を上がり自室へと逃げ込んだ。
(このままじゃいけないことくらい知っているわ・・・)
母に分かってもらえない辛さで思わず涙ぐんでしまった。
しかし、母が自分の為を思って言ってくれていることを湊は知っていた。
だからこそ、余計に辛かった。
湊はベッドに転がり手紙を読み返した。
短い文章でとても丁寧に書かれていた手紙。
その手紙は本当に自分を心配して書かれたものだと湊に伝わった。
だから湊もそれに応える為に返事を書くことにした。
湊は何を書こうか迷った。
(何て書こう・・・)
はーっと溜息を付き湊は何枚も手紙を書いた。
どう書いたら思いが伝わるか分からないので失敗しながら一生懸命書いた。
一番思いが伝わりそうなものを数枚のうちから一枚選んだ。
湊が書いた内容はこうだった。

ご心配ありがとうございます。
でも学校には私の居場所がありません。
私の事を知っているのなら虐めにあっていることもご存知ですよね?
私は学校が怖いのです。
だから学校へは行けません。

(これで通じるかな・・・?わかってくれるかな?)
そう思い湊は翌日桜の木の下に行き手紙を木の枝に結んだ。
そうしていつものように本を開き読み始めた。
送り主のない手紙・・・一体誰が送ってきたのか少し興味はあった。
いつもより少し長めに桜の木の下で本を読んだ。
もしかしたら送り主に会えるかもしれないという思いがそうさせた。
しかし、誰も姿を現さなかった。
湊は諦めて家路に着いた。
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