自殺志願少女と獣の王

えりー

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舞踏会

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会場に入るともう舞踏会は始まっていた。
「舞踏会の前にお前に紹介しておきたい人間がいる」
「あ、ダルさんの恋人の方ですよね?」
「良く知っているな。ティが話したか」
「はい」
「そうか。まぁ、いい。ティには後で色々話があるからな」
(何だかリハ様穏やかになられたみたい)
前だったらもっとピリピリしていて怖かったのに・・・。
本当に狂気をコントロールできるようになったのだろうか?
「兄貴、ダルと朋美を連れて来たぜ」
「こっちがダルで、こっちがその恋人の朋美だ」
ダルは猫の獣人だった。
真っ白の毛並みで青い瞳をしていた。
ダルは唯奈を見るなりいきなり跪いた。
「お初にお目にかかります。側近補佐をさせて頂いておりますダルと申します」
「ダルさん、立ってください。私は・・・人間なんですから」
「朋美も一緒です。人間です。私は人間も、獣人も関係ないと思ております」
そう言いすっくと立ちあがり、堂々とした態度で自分のパートナーにダンスを申し込んでいた。
ダルと朋美は獣人たちの中に入り楽し気に踊り始めた。
「お前らは踊らないのか?唯奈はあんなに練習してたじゃないか」
「!!」
「その事は秘密にしてください!!」
「唯奈は踊れるのか?」
「はい、あまり上手くはありませんが・・・」
「それなら私と踊ってください」
今度はリハに跪かれた。
リハは手を差し伸べた。
唯奈は一礼しその手を取った。
「あんまり期待しないでくださいね?」
「はっ、そう言われると期待してしまう」
2人はざわつく獣人たちの中に入り踊り始めた。
「唯奈、だいぶ練習したんだな」
「はい」
(できれば内緒にしておきたかった。何だか恥ずかしい)
そう思いながら2人は密着して踊り続ける。
他の獣人たちは呆気にとられた様子でリハと唯奈を見ている。
「ドレス、ありがとうございました」
「気にするな。妃への贈り物は当然だろう?」
リハはいつの間にか人型になっていた。
「リハ様、お会いしたかったです」
「私もだ」
そう言い2人は見つめ合いキスを交わした。
その時だった。
「ああ、嫌だ!」
「また人間が入り込んでいる」
「今度は2人もいる」
「信じられない」
「何て汚らわしい」
以前のリハなら問答無用で剣を抜いていた。
しかし今回は一睨みしただけで黙らせてしまった。
その気迫は凄まじいものがあった。
「私は人間も獣人も同じように扱う!他に意見がある者はいるか!!」
その場は静まり返った。
「唯奈疲れただろう。あっちで飲み物でも飲もう」
「あ、はい!」
唯奈が呆気に取られているとリハからそう声をかけられた。
「唯奈、俺とも一緒に踊ってくれないか?」
そう声をかけてきたのはティだった。
「はい」
「リハ様ちょっと行ってきます」
そう言うとリハを残しティの元へ行った。
行く途中また足を引っかけられ唯奈は無様に転んだ。
「唯奈!大丈夫か」
「はい」
「今、唯奈を転ばした者は早々に出てこい」
そう冷静にリハは言った。
その者は肩を震わせていた。
「何故こんな真似をした?」
「・・・人間風情がこの場に相応しいとは思えませんので」
「そうか。唯奈、この者に罰を与えようと思う。お前はどうしたい」
皆、固唾をのんで見守った。
唯奈は立ち上がり言った。
「私は、罰なんて望んでいません。その方がいつか受け入れてくださるのを待ちたいです」
「ふっ、相変わらず優しいな。唯奈に免じて許してやる。しかし2度目はないと思え」
やはりリハは変わっていた。
王らしい判断だったと思う。
しかし、本当にいつか獣人たちが人間を受け入れてくれる日が来るのだろうか?
でも、今はそれを信じるしかない。
人の考え方はそう簡単には変わらない。
「唯奈手を」
「はい」
ティの手を取り唯奈はティと踊り始めた。
唯奈は嬉しそうにティと踊っている。
それを見てリハは少し妬いたが以前ほど強い独占欲はない。
今のところ上手く狂気をコントロール出来ているようだ。
これで唯奈を引き取れる。
そう思うとリハは嬉しくなった。
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