軍神の寵愛

えりー

文字の大きさ
上 下
6 / 21

仁の怒り

しおりを挟む
神々は由奈が神の妻になることを反対していた。
その理由は、やはり元の世界へ戻してやらないと可哀そうだという事だった。
いきなり神々の世界へトリップしてしまいきっと不安な思いをしているに違いないと神々は思っていた。
しかし、仁はそんな神々の言葉に聞く耳を持たなかった。
「すでに契りを交わした」
そう言うと周りにいた神々が怒った。
「お前、初めからそのつもりで・・・!?」
「どういうことか説明しなさい仁!」
「それは妻にしたいという事か?」
仁は由奈に惹かれていて由奈を手元とから離したくなかった。
だから昨日の晩無理やり抱いたのだ。
「俺と由奈はもう夫婦だ、誰にも文句は言わせない」
そういうと彼は由奈が待つ自分の神殿へと戻って行った。
その姿を見ていた他の神々は思っていることを口にした。
「それほどまでに入れ込んでるのか・・・」
「あの仁が・・・」
「どうする?もう契りを交わしてしまったらしいぞ」
「そうなるともう手遅れだろう」
「あとはその由奈って娘の気持ちを聞いてもし、少しでも人間界に帰りたいと思ているのなら帰してやろう。あいつには内密に」
「ああ、それがいいだろう」
そう言いながら皆納得した。
「しかし仁はどうしてあの娘に執着したんだ?」
「分からん」
「ただ、あいつも男だったんだな・・・」
そこでコホンと女神たちが咳払いをした。
「そういう話は私たちがいないときにしてくださらない?」
そう言い彼女たちは去って行った。

仁はまだ眠っている由奈にキスをした。
由奈はまだ起きる気配はない。
(無理をさせすぎたのか・・・?)
加減なんて初めてした行為なので彼は分からなかった。
そうしてさらにキスを深めていった。
さすがに異変に気付き彼女は目を覚ました。
目を覚ますと頭がぼんやりしていた。
我に返った時には仁にキスをされていることに気がついた。
しかも深いキス。
「んぅ!」
ジタバタ暴れるがキスが終わる様子はない。
そして暫くしてようやく唇を解放された。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
由奈は息切れを起こしていた。
「もう!朝から何をするんですか!?」
「キスだが?」
何事もなかったように彼は答えた。
「私、帰らなくちゃっ・・・」
その時由奈は起き上がろうとしたが、足腰が立たないことに気がついた。
「その体でどこへ行く気だ?」
「私は・・・自分の世界へ帰らなくちゃいけないの」
「それは帰りたいという事か?」
彼の目が鋭く煌く。
その目で見られると身が竦みそうになる。
彼は彼女が”帰りたい” ”帰らなきゃ”というたびに人が変わったようになる。
彼の事が嫌いなわけではないが、やっぱり自分の世界が一番いいと思う。
その事を伝えたが彼には理解できない様子だった。
「帰りたくなくなるようにしてやろうか?」
そう言い仁は剣で脅してきた。
切っ先を向けられ恐怖を感じた。
「や、やめて」
「では、ここに残ると誓え」
切っ先は喉に押し当てられもう少しで肌に刺さりそうだった。
「ち、誓うから、やめて・・・」
恐怖と戦いながらそう答えた。
そう由奈が言うと仁は彼女を抱きしめた。
由奈は仁の狂気に怯えそうになった。
自分の何をそんなに気に入ったというのか。
それは仁にしかわからないことだった。
しおりを挟む

処理中です...