上 下
18 / 32

指輪

しおりを挟む
蘭にいつ渡すか迷っていた。
蘭はきっと喜んでくれるだろう。
そう思うと早く渡したくなってきた。
しかし蘭は最近戻りが遅い。
渡そうにもタイミングが上手く掴めない。
でも、お揃いの指輪を早く一緒に身につけたい気持ちもある。
「今日も遅いのか・・・先に休もう・・・」
そう呟いた矢先扉が開き、蘭が帰ってきた。
「舞子、もう寝たのか?」
「ううん。まだ起きてるわ」
舞子は眠たい目を擦りながらベッドから出てきた。
「最近忙しそうね」
「そうだな。ちょっと東の方で問題が起きてな。その対応に追われている」
「・・・?」
舞子はその話を聞いてもパッとしなかった。
要は分からなかった。
きっともっと詳しく聞かなければ分からないだろう。
しかし、蘭は疲れきっている。
「蘭様。もう休んだ方が良いよ」
「ああ、そうさせてもらう」
そう言うと舞子を抱きしめベッドへ向かった。
そのまま押し倒される形となった。
体が重みでベッドに沈んでいく。
柔らかいベッドなのでこれ位の衝撃は痛くない。
舞子の体の上でもう眠りについている蘭が少し憐れになった。
(く、苦しい・・・)
そして、蘭の体から少し体をずらした。
舞子は蘭の左手の薬指を見た。
あの指に指輪をはめることを想像してみた。
すると、段々指輪をはめたくなってきた。
小箱から指輪を取り出しそっとはめた。
店主の言った通りサイズがぴったりだった。
蘭が目を覚ます前に取ろうとしたが指から外れなくなった。
舞子は焦った。
(嘘でしょう!!)
「どうしよう取れない」
指輪は引っ張っても押しても取れない。
「う・・・ん。何をしているんだ?」
そう言い蘭が目を覚ました。
舞子は真っ赤になり今までの事を説明する羽目になった。
(ああ、こんな事ならもっと早く渡しておくんだった!!)
「ふーん・・・」
にやにやしながら自分の指にはまっている指輪を見つめている。
更に舞子の顔は真っ赤になっていく。
舞子は自分の分の指輪があるのを忘れていた。
小箱を見つけた蘭は、小箱を開けた。
すると、小さめの指輪が入っていた。
「これが舞子用の指輪か」
「・・・」
「そうだけど・・・」
そう答えると舞子の左手を取り、そっと薬指にはめられた。
「!」
「これでお揃いだな」
そういうと満足そうにうなずいてみせた。
「あの、この指輪の意味知ってる?」
「いや、知らないが?」
「この指輪の意味は結婚した者同士が誓いの品として身につけるものなのよ」
蘭にそう伝えると驚いていた。
蘭は顔を赤くして両手で顔を覆った。
珍しく照れているようだった
(可愛い!!耳まで真っ赤になっている!)
カメラがあったら絶対このシーンは撮影していた。
「不意打ちに告白してくるな」
そう言いながら蘭は嬉しそうに笑った。
これが初めて見る彼の本当の笑顔かもしれなかった。
「蘭様、迷惑じゃない?」
「いいや、嬉しい!」
(良かった・・・迷惑じゃなかったんだ)
そう思うと舞子まで嬉しくなってきた。

しおりを挟む

処理中です...