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婚儀2

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ラックスは式には姿を見せなかった。
「お兄様はやはりお見えにならないのね」
「まぁ、仕方ないさ」
そう言われればそこまでなのだが・・・。
(これからはグランと居れる!)
マリーは嬉しくて本当に堪らなかった。
だが故郷や家族と離れるのは辛かった。
マリーが母と父を眺めている事に気が付き、グランは足をマリーの両親の方へ向けた。
「次は何処へ?」
「最後はマリーの両親のところだ」
「え?」
「お別れ・・・言いたいだろう?」
婚儀が終わればすぐグラン国へ向かう事になっていた。
話す機会はなかなかない。
「ありがとうグラン」
「俺も挨拶したかったんだ」
グランの優しさが心に染みた。
グランは立ち止まった。
「どうしたんですか?」
「本当に母親と似ているんだな」
「よく言われます」
うんざりするくらい言われたセリフでもグランなら不快に思わなかった。
「お父様!お母さま!!」
マリーが声をかけると向こうから挨拶にやって来た。
「マリー!良く似合っているな花嫁衣裳」
「ええ!綺麗よマリー」
「お父様、お母様ありがとうございます」
マリーのドレスはやはりグランが選んだもので少し濃いピンクの物だった。
「マリー様との結婚をお許し下さりありがとうございました」
「お前たちを離れ離れにしておくと何をしでかすかわからないからな」
父が謎の発言をした。
「え?それってどういう意味ですか?」
「お互い国から出て逢引きしたり、マリーに至っては家出しそうだしな」
父王はマリーの事をよくわかっている。
「そうよねぇ、家出してグラン国に住むと言い出しかねないわね」
「お母様まで!!」
「そんな事・・・してしまいそうですよね」
真面目な顔でグランが答えた。
(グランは否定してくれると思ったのに・・・)
マリーは深呼吸をし改めて両親に挨拶をした。
「お父様、お母様。今日まで育てていただきありがとうございました」
「うむ」
「マリー・・・」
両親は少し瞳に涙を浮かべた。
だが、めでたい日なので涙は見せなかった。
「グラン王、マリーを泣かせるような事があれば即刻連れ戻すからな」
父王は低い声音で言った。
これはどうやら本気らしい。
「泣かせるつもりはありませんし辛い思いもさせません」
グランはまるで神にでも誓うように言った。
「それを聞いて安心しました」
母は心底安堵している。
「それでは失礼いたします」
「マリー今、幸せか?」
「はい」
「ならば良い。もうそろそろ出発の時間だろう」
「・・・はい」
なかなか離れがたいと感じているマリーを横抱きにし、グランは馬車まで急いだ。
「ど、どうしたんですか?」
「マリー、こんな目でたい日に泣いてはいけない」
そう言いマリーの頬を拭ってくれた。
2人は馬車に乗り込み皆に見送られ出発した。
皆、馬車が見えなくなるまで見送り続けた。
馬車の中では2人は疲れ果てた姿を晒していた。
マリーは靴を脱ぎ、グランは上着とネクタイを外しブラウスのボタンも外していた。
マリーが目のやり場に困っているといつものグランに戻っていた。
「どうした。そんなに顔を赤くしてそっぽを向いて」
「目のやり場に困ります!服を正してください!!」
グランは気にしていないようだが逞しい胸板が見えている。
「今日は高級な宿を取ってある」
「?」
「何故か分かるか?」
「わかりません」
「はははは、マリーはまだ子供だものな」
むっとしたマリーは反論した。
「私は子供ではありませんもう成人しています!!」
「そうだな。立派な淑女だものな?」
マリーは思い出してしまた。
「やっぱりまだ子供でいいです」
「そんな事を言っても駄目だ。逃がさない」
「だって今夜はー・・・」
「そう、初夜だ。もう手を出しても良いんだよ」
マリーは後ずさりしてグランの腕から逃れようとした。
「逃がさないと言っただろう?もう10年も待ったんだ」
「~っや、優しくしてくださいね?」
マリーも覚悟を決めた。
「いつも優しいだろう?」
そう言いながら長く甘いキスを交わした。
「いつも意地悪です」
「それなら酷くするぞ?」
マリーは初夜に怯え始めていた。
知識にはあるがあんな恥ずかしい事本当にするのだろうか?
グランには怖くて聞けなかった。
馬車はもう止められない。
グランも10年待ってくれたのだからー・・・。
マリーは自分に言い聞かせた。
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みんなの感想(1件)

Yuuno
2019.07.23 Yuuno

「男の嫉妬って言うのは大変厄介だ」とはよく聞くけど、この物語はそれがよく
わかりやすく、一例ですね。
しかもグレンの場合の様に、立場がからむと周りは振り回される一方。
思い込みだけで周りにそして相手にも迷惑をかけてしまう。
グレンとマリーはまさにそれを踏まえて大変さを表していると思います。

えりー
2019.07.24 えりー

グランの嫉妬は描いていて面白かったですね。
私も嫉妬されてみたい・・・(´・ω・`)。
マリーが羨ましい。
感想参考になりましたありがとうございます!

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