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高校一年生(暗号・トリック中心)

タイムカプセル3

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 あの四人の女の子の制服から調べた学校。
 木根刑事達が乗って来たのであろうパトカーが停まっている。

 勝手に中に入る訳にはいかないから、木根刑事に来ていると連絡だけとって外で待つ。

「なあ、何で連続殺人と言い切れるんだ?」
と俺が聞けば、

「確率の問題だよ」
と赤野が答える。

「四人に警察から連絡が取れない。その理由として考えられる事象は、死亡、重体、行方不明くらい。旅行とか他の理由なら、警察から連絡取れるでしょ。……で、四人一緒に行方不明の可能性は? それってかなり低くない? しかも、警察に見つかっていないんだよ?」

 なるほど。

 例えば、二人行方不明なら、きっと他二人は、死亡か重体。それならば、もはや連続殺人か殺人未遂か。三人が行方不明なら、一人が重体か死亡か……。三人行方不明ということは、この三人が共謀して一人を殺害して……。無いか。それだと、なんで三人で行方不明になる必要があるのか、訳が分からない。え、強盗団とか? そんな風には見えなかった。四人とも行方不明としたら……四人が同時に誘拐された? それもどうだろう? もしそうだとしても、四人とも生存している確率は、極めて低そうだ。だって、四人を同時に監視するなんて、かなり難しい。


「まあ、その辺のところは、木根刑事に聞けば分かるんじゃない? 出てきたし」

 赤野の言う通り、苦虫を噛み潰したような表情の木根刑事が出てきた。
 タイムカプセルは見つからなかったのだろうか?
 赤野が手を振れば、木根刑事がノロノロとこちらに近づいてくる。

「すまんが、もう一つ暗号を頼む」

 そう言って、木根刑事が渡したのは、五枚の手紙。
 やっぱり関係者は五人だったんだ。

「滝川の」

「逢はむとぞ思ふ」

「瀬をはやみ」

「われても末に」

「岩にせかるる」


五枚には、そう書かれている。

「ふうん。暗号というよりかは、和歌だよね。『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ』だよね」

「和歌……」

俺は、以前に赤野に仙石が送った和歌を思い出してゾッとする。

「崇徳院の詠んだ歌。別れて別々になっても、また会おうねって意味。本当は、恋人に詠んだ歌なんだけれども、今回は、友達同士で、また会おうねって、……まあ、タイムカプセルにはピッタリな歌なんじゃないかな?」

赤野の説明では、邪悪な感じは無さそうだ。

でも、これがどうだと言うんだろう?

赤野が、手紙を順番に並べて裏返せば、『・』と『―』が並んでいる。

「知ってる。これ、モールス信号だ」
と夏目が言った。
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