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卒業間際
爆弾魔 8
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暗号を解いて慌てて赤野を追ってプールへ俺は向かった。
赤野の体が水底に沈んでいるのを見た時には、心臓が止まるかと思った。
冷たいとかそんなの何も考えずに、とにかく服だけ脱いで水の中へ俺は飛び込んだ。
必死で動かない赤野の体を掴んで、プールサイドまで引きずる。
「赤野! 赤野!」
呼んでも赤野は答えない。
『松山の浪のけしきはかはらじを かたなく君はなりまさりけり』
暗号の紙に書いてあった、ヒントにならなかった和歌が脳裏をよぎる。
犯人は、最初から、赤野を波間に殺すつもりで、こんな和歌を添えていたのかもしれない。
そう思えばゾッとする。
目を覚まさない赤野。
完全に気を失っている。
えっと、こういう時は、どうするんだっけ?
人工呼吸?
俺が赤野に?
は、恥ずかしがっている場合ではないよな。
ええっと、まず気道を確保するために顎を上にあげて……。
俺がまごまごしている間に、赤野の口から、ケホッと水が漏れろ。
どうやら発見は早かったようだ。
「あ……れ? 松尾君?」
目を覚ました赤野が薄く笑う。
良かった。
少しぐらい人工呼吸をしてみたかったという、邪な一抹の残念な気持ちは、正直あるが、それよりもやっぱり赤野が無事な事が嬉しい。
「良かった! 赤野! 大丈夫か?」
「にげて……罠だから……」
赤野が枯れた声で、そう俺に警告する。
赤野を置いて逃げられるわけがない。
「罠なら、今すぐ俺と一緒に逃げよ?」
俺は、そう声をかけて、赤野の体を起こす。
「ちょっと、いちゃつくのもいい加減にしてよね」
聞いた事のある声が、後ろから聞こえる。
この声。まさか……?
そうだよな。仙石が学校に忍び込んであちこちに爆弾を仕掛けるなんて、どう考えても不自然だ。
学校の中を歩き回っても不自然でない人物。
赤野が泳げないことも知っている可能性がある人物。
そして、赤野と木根刑事が知人であることを知っている人物。
これだけ条件が揃えば、犯人は、おのずと分かってくる。
振り返れば、意地の悪い笑顔を見せる人物が、制服姿で立っていた。
「あと少しで消えてくれるところだったのに!」
やっぱりそうだ……。
「お前、こんなところで何しているんだ。赤野は、お前には関りないはずだ」
「そっちにはそうでも、私は困っているの。あの人は、赤野君に執心なのよ。じゃあ、私は一番になるには、赤野君に消えてもらうのが、手っ取り早いじゃない?」
普通の人間だったはずなのに、完全に向こう側の人間に染められている。
それほど、仙石の考え方に感化しているということか。
笑う顔は、普通の女の子にしか見えないのに、こんな風に簡単に人は堕ちてしまう。
「田島葵……。お前な。赤野に助けられたくせになんだよ!」
「あら、私は、赤野君に助けられたなんて思っていないわ」
私は、特別なの!
田島は、そう自信満々に言い放った。
赤野の体が水底に沈んでいるのを見た時には、心臓が止まるかと思った。
冷たいとかそんなの何も考えずに、とにかく服だけ脱いで水の中へ俺は飛び込んだ。
必死で動かない赤野の体を掴んで、プールサイドまで引きずる。
「赤野! 赤野!」
呼んでも赤野は答えない。
『松山の浪のけしきはかはらじを かたなく君はなりまさりけり』
暗号の紙に書いてあった、ヒントにならなかった和歌が脳裏をよぎる。
犯人は、最初から、赤野を波間に殺すつもりで、こんな和歌を添えていたのかもしれない。
そう思えばゾッとする。
目を覚まさない赤野。
完全に気を失っている。
えっと、こういう時は、どうするんだっけ?
人工呼吸?
俺が赤野に?
は、恥ずかしがっている場合ではないよな。
ええっと、まず気道を確保するために顎を上にあげて……。
俺がまごまごしている間に、赤野の口から、ケホッと水が漏れろ。
どうやら発見は早かったようだ。
「あ……れ? 松尾君?」
目を覚ました赤野が薄く笑う。
良かった。
少しぐらい人工呼吸をしてみたかったという、邪な一抹の残念な気持ちは、正直あるが、それよりもやっぱり赤野が無事な事が嬉しい。
「良かった! 赤野! 大丈夫か?」
「にげて……罠だから……」
赤野が枯れた声で、そう俺に警告する。
赤野を置いて逃げられるわけがない。
「罠なら、今すぐ俺と一緒に逃げよ?」
俺は、そう声をかけて、赤野の体を起こす。
「ちょっと、いちゃつくのもいい加減にしてよね」
聞いた事のある声が、後ろから聞こえる。
この声。まさか……?
そうだよな。仙石が学校に忍び込んであちこちに爆弾を仕掛けるなんて、どう考えても不自然だ。
学校の中を歩き回っても不自然でない人物。
赤野が泳げないことも知っている可能性がある人物。
そして、赤野と木根刑事が知人であることを知っている人物。
これだけ条件が揃えば、犯人は、おのずと分かってくる。
振り返れば、意地の悪い笑顔を見せる人物が、制服姿で立っていた。
「あと少しで消えてくれるところだったのに!」
やっぱりそうだ……。
「お前、こんなところで何しているんだ。赤野は、お前には関りないはずだ」
「そっちにはそうでも、私は困っているの。あの人は、赤野君に執心なのよ。じゃあ、私は一番になるには、赤野君に消えてもらうのが、手っ取り早いじゃない?」
普通の人間だったはずなのに、完全に向こう側の人間に染められている。
それほど、仙石の考え方に感化しているということか。
笑う顔は、普通の女の子にしか見えないのに、こんな風に簡単に人は堕ちてしまう。
「田島葵……。お前な。赤野に助けられたくせになんだよ!」
「あら、私は、赤野君に助けられたなんて思っていないわ」
私は、特別なの!
田島は、そう自信満々に言い放った。
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