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卒業間際
卒業式
しおりを挟む卒業の日。
久しぶりに会った夏目と今井に呆れられる。
「なんだよ。結局、告白は諦めたのかよ」
「せっかく何時間も一緒にいたのに」
「仕方ないだろう? それどころではなかったし……」
俺が知ることが出来た赤野の秘密は、二人には話していない。
必要なら、赤野から話すだろう。
勝手に俺が話すようなことではない。
田島葵は捕まり、行方不明になっていた女子高生が、こんなに大それた犯行に及んだと、世間は大きく報じた。未成年だからと、田島の名前は伏せられていたが、田島が行方不明になったことは被害者として報じられていたし、学校の名前はニュースに出ている。
誰が聞いても犯人である女子高生が「田島葵」だということは、明白だった。
SNSでは、ネット探偵たちが楽しそうに田島のプライベートを暴き、田島の両親は、ひっそりとどこかへ引っ越してしまったらしい。
田島自身は、未成年といえども、学校に爆弾を仕掛けるだなんて大きな犯罪を犯したのだから、すぐには外には出て来られないだろう。今後の裁判により、少年院に行くか、刑務所に行くか……何かしらの処罰は下るのではないかというのが、赤野の見解。
「まあ、実際に怪我をした人はいなかったからね。どのくらいの処罰になるかは分からないけれども、数年で出てくるんじゃない? それよりもだぶん、ネットにプライベートをさらされてしまっているからね。彼女の人生への影響は、そっちの方が大きいかも」
殺されかけたのに、赤野はヘラリと笑ってそんなことを言っていた。
「松尾君!」
赤野が後ろから抱きついてくる。
あれ以来、赤野のスキンシップが多い気がする。
ちょっと困る。
自制心が追い付かない。
俺の理性が、どのくらい仕事してくれるのか……。
「卒業しても、連絡してもいい?」
「そりゃ……当然」
こっちからお願いしたいくらいだ。
海外の父親の運営する傭兵訓練場へと行くという赤野。
ほんの半年ほどそこで、武器の扱いや体術、戦術などを学んで帰り、それから警察官になるための試験を受ける予定だそうだ。
あの木根刑事の元で、赤野が仕事をすると考えれば、また無茶なことをさせるのではないかと不安になるが、俺が言っても、赤野は止める気はないだろう。
「僕、殺人犯だからね。木根刑事の監視下で過ごすことが、穏便に過ごす条件なんだ」
冗談めかして、赤野はそんなことを言っていた。
赤野なら、本当にそうでもおかしくない気はするが、まさか……ね。
それぞれの道を歩み、大人になる俺達。
どんな未来が待っているかは、まだ分からない。
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