25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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もう一度校舎へ

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「お前、そういうところ、本当に……まあいいや」
「なにその煮え切らない態度」
「そもそも、そんなに疑っている相手とこんな話をしているミライの方が分からん」
「呼び出したのは、慎也だって!」

 そう、私は、喫茶店に呼び出されたの。
 で、黙っているのも嫌だから、素直に怪しいと思うと言ったのだ。

「で、その疑っている理由が、俺が観測会を企画して、鍵を持っていたからだろう?」
「そうね。だって、写真の件は、理解したから」
「だったら、行こうじゃないか」
「どこへ?」
「学校だよ。学校で、もう一度確かめるんだよ。本当に鍵がなきゃランタンは持ち出せなかったのかとか」
「え、今から?」

 唐突だ。
 また学校に行くのは、実はちょっと気が引けるのが、慎也はかなりやる気だ。
 
「ほら、いくぞ!」

 慎也に促されて、私は、後をついていく。

「観測会を企画したのは、俺だけれども、ほら、あれだ。沼二が廃校になるのが、悲しくってだな」
「それ、観測会の企画を出したときにも言っていたね」

 慎也が三月三十一日の観測会を企画したのは、一月のことだ。
 沼二の廃校が決まって、沼二よりも人数の多い沼一に見学に行った時だ。
 天文部は、恐らく廃部同然となる。
 沼一では、夜間の活動を禁止されている。
 天文部はきっと表立っては観測なんてできなくなる。
 部活としてではなく、個人が勝手に集まって……なんて、まどろっこしい建前で動くことになるし、当然その活動に部費なんてものは使えない。
 今でも少ししかない部費が削られれば、もう、沼二天文部は終わりなのだ。
 それが、どうしても慎也には、悔しかったから。
 そんな話を、私は、慎也から聞いた。

「そうだよ。どうして忘れていたんだろう」
「は? 何をだ?」

 慎也が、眉間に深い深い皺を寄せる。

「だって、ほら、理人が怪しいって言っていた、観測会を企画したのは慎也だって話!」
「うん。だから、それは……」
「そう! 『もう一度、最後に観測会したいよな』ってグループ連絡の慎也のぼやきに、貴子が大喜びで話を進めたんだよ」


 今でも、その経緯は残っている。
 私は、慎也の後をついて歩きながらスマホを開く。

「お前、それ、歩きスマホは危ないだろ」

 慎也が私が何かにぶつからないように、腕を掴んでくれる。
 慎也の手が熱いし、何故か震えている。

「え、慎也? どうしたの? なに緊張しているの?」
「うっさいな。いいからほら、ミライはさっさとスマホ確認しろ」

 なぜ私が怒鳴られたのかは不明だが、ともかくスマホだ。
 連絡用のグループ連絡に、延々と綴られる慎也のボヤキに、『ウッザ、もう決まったことだしどうでもいい』という奈美の言葉に、『まあ、そうですよね』と賛同する紗栄。
 そして、『もう一度、最後に観測会したいよな』という言葉に『それ、絶対にいい!』と言い出す貴子と、『え、中本先輩も来てくれるんですか?』と、大喜びをする理人。
 ほんの数か月前なのに、この仲の良さそうな天文部のメンバーから二人も死者が出て、残りのメンバーは互いに疑っている。
 思ってもみなかった未来だ。
 グループ連絡では、そのまま慎也を中心として、日程の決定や、集合場所なんて話が続く。

「そっか。慎也だけが決めたわけじゃなかったよね」
「最悪だな。なんでそこ忘れるんだ」
「だって、断言されたら、え、そうだっけって思うじゃない」
「そういうとこだぞ」

 慎也に叱られながらも、私はスマホを確認する。
 廃校舎になった沼二にどうやって忍び込むのか。
 これには、ひそかに一階のトイレの窓の鍵を壊しておくことに話は落ち着いた。
 旧式のクレセント錠は、長年の使用ですでに緩んでいたから簡単に壊れたと理人が言っていた。
 学校で入っている警備会社は、三月の半ばで契約は終了している。
 それは、奈美が職員室で確認してくれた。

「そうよ、みんなで準備を進めたのよ」
「そう。そして、部室の鍵を先生に返却する前に、複製を作った」

 慎也がスーパーマーケットの隅にある小さな鍵販売店で作ってくれた。

「で、本物は、先生に返却した」

 慎也が、間違いないと断言する。

「その鍵って、沼一に保管しているのかな?」

 先生たちは、そのまま沼一に移動になった。
 沼二の物は古くて使えないから置いて行かれる備品も多いけれども、捨てたり沼一に持って行く備品も多い。

「いらないだろ。おんぼろ部室の鍵なんて沼一は」
「そうだよね。だったら、解体業者が使えるように、学校の中に保管?」

 今もあるのだろうか。鍵。
 鍵の保管場所は知っている。
 職員室の壁にボックスがあった。
 沼二が学校として機能しているときには、鍵の入ったボックスは施錠されて、学年主任の先生の机に保管されていた。
 私達は、校門をくぐって、校舎に忍び込んだ。



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