25億光年先のクエーサー

ねこ沢ふたよ

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狂気と恋は紙一重かもしれない

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「私に何の関係があるのよ!」

 奈美が理人の手から逃れようともがくが、理人は手を離そうとはしない。

「中本先輩を騙しましたね? 紗栄が全部教えてくれました」
「紗栄が?」

 奈美がうろたえる。
 やはり、身に覚えがあるのだろう。

「紗栄とコイツで、中本先輩を揶揄ったんです。純粋な中本先輩は、友達を信じて一人で屋上へ行って、絶望して死んだんです」
「そんな。だって、ちょっとした冗談よ? 本気にするなんて思わないじゃない! 芸能人の友達の逃亡を助けるだなんて、できっこないのに」
「中本先輩は、本当に辛かったんです。春から、沼二のみんなとも引きはがされて東京へ行かされる。そうなれば、もっと仕事漬けになって、普通の生活なんてできなくなる。限界の心が、ずっとスマホのメモ帳に記されていました」

 理人が、手に持ったスマホを見つめる。
 あれは、貴子のスマホなのだろう。

「理人、落ち着け! だからって、奈美を殺していいわけないだろ?」

 慎也が叫ぶ。
 待って、それ今言ったら……

「嘘! 私、殺されかけているの? ちょっと、やだ! 理人!」

 ほら、奈美がとんでもない動揺している。

「煩いな。ちょっと静かにしてくれませんか?」
「ひぃ!」

 ほら、理人も逆上してポケットからカッターナイフを取り出しちゃったし。

「この女も紗栄も最低です。最後にコイツが中本先輩に送った言葉、『ヤバッ! なに本気にしてんの? あんたみたいな偉そうな女、誰も助けないってww』ですよ。最低です」

 味方と思って信頼していた友達にそれ言われたら、確かに心折れるかもしれない。
 奈美の言葉を見た貴子の気持ちを考えたら、辛くなる。

「どうしてそんなことを……」
「だって、腹立つでしょ? 美人だってだけで映画のヒロイン役抜擢されて、何かと理由付けて学校の行事にも部活にも出てこない。どこまで高飛車なんだって感じでしょ? なんでアイツだけ特別枠なのよ」

 色々と並べ立てているけれども、全部、奈美の嫉妬だ。
 貴子は、望んで学校に来なかったわけではない。
 貴子を芸能人にしたいお母さんのために、我慢していたのだ。

「そんなに恵まれているくせに、『皆みたいに普通の生活がしたい~』だなんて言いだして。嫌みかよ! って、誰でも思うでしょ? 紗栄だって、『確かにそうですよね。腹立ちますよね』って、ずっと言っていたし」

 奈美の言葉が止まらない。
 きっと、恐怖でパニックになっているのだと思う。
 この場を脱したくて自己弁護するけれども、ポロポロ本音が滑り出て落ちる。
 そっか……私の知らないところで、そんなことになっていたんだ。
 紗栄は、強気な奈美の言葉に流されるままに同意していたんだろう。
 そして、紗栄が同意してくれることで、奈美の貴子への反感は止まらなくなった。

「お前……もう黙れよ」

 低い低い地を這うような声だった。
 普段丁寧な言葉遣いの理人から、敬語は消えた。
 
「待て! 理人! 落ち着け!」

 慎也が理人に跳びかかる。
 理人のカッターナイフを持っている手を押さえる。

「な、奈美! 今のうちにこっちへ!」

 私は、奈美を腕を引っ張って、自分の後ろへと隠した。
 バランスを崩して、私はその場でしりもちをつく。

「この!」

 理人が奈美めがけて振るったカッターナイフが、逃げた奈美の代わりに私の上に降り下ろされた。
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