天使の小夜曲〜黒水晶に恋をする〜

黒狐

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2章.断罪 ※

18.アクロアのいない日 モリオン、セドニーside

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 アクロアが天界に連れて行かれた日…屋敷に取り残されたモリオンは、自室で頭を抱えていた。

「アクロア……どうして、どうしてこんなことに……」

 今朝の出来事を思い出したモリオンは、自身の無力を嘆くように拳を強く握り締める。

(もしもあの時、俺に魔力があったなら、翼が無くなっていなければ……きっと、何か出来たはずだ。なのに……。)

「アクロア様は絶対に帰って来られます。ですからその時、モリオン様が元気でなければ、きっとアクロア様は貴方の事を心配されるでしょう。私達はせめて、怪我や病気をすることなく過ごしましょう……いいですね?」

 セドニーは思い詰めた様子のモリオンを諭すようにそう言うと、大鷲の姿でそっと肩に飛び乗った。

「あぁ……わかっている。それでも……やっぱり、心配で……」

 モリオンは声を震わせながら俯く。その様子にセドニーは困った表情を浮かべるが、自身の頭部をモリオンの頬に優しく擦りつけた。

「大丈夫です…モリオン様。私も、セドニーも貴方の側に付いています。とにかく今はアクロア様が帰って来るまで、この屋敷で待ち続けましょう。」
「……そう、だな。ありがとう、セドニー。少し、気が晴れた……。」
「いえ、これくらい当然のことです。」

 悲し気な笑みを浮かべたモリオンにそっと声を掛けると、セドニーは窓の外を憂い気に見つめる。
 この屋敷で暮らし始めた時から季節は移ろい、今はもう冬に差し掛かっており空には雪が僅かにちらつき始めていた。

「アクロア様、どうか早く帰ってきて下さい……」

 舞い落ちる白銀の結晶に、アクロアの姿を重ねたセドニーは、空に向かってポツリと呟いた。
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