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3章.日常
24.アクロアの帰還 モリオンside
しおりを挟む──あれから1ヶ月経った。
アクロアは未だに屋敷に戻って来ない。
セドニーが言うには、自分に渡された首飾りと同じ石を使用した腕輪をアクロアは付けているという。万が一命を落としてしまった場合は石が砕け散ってしまうと言っていたが、幸い今までそのようなことは無かった。
しかしそれでも不安は残る。首飾りは時折チカチカと明滅しており、彼の身に何か良からぬ事が起きていることだけは分かってしまう。
そんな彼がまだ帰ってこない、アクロアの無事な姿が見られるまで、俺は落ち着かない日々を送っていた。
「アクロア……いつ帰って来るんだろうか……」
俺はセドニーにポツリと尋ねた。
「まだわからないです。でもアクロア様との繋がりはしっかりと感じます。必ず…必ずアクロア様は帰って来ますよ。」
「あぁ……そうだな。アクロア…早く、会いたい。」
そう会話をしてしていた時、玄関の方から突然ドサリと人が倒れるような音が聞こえてきたた。
「もしや…モリオン様、アクロア様が帰って来たかもしれません!!」
セドニーはそう言うと、俺の腕をとって急ぎ足で玄関へと向かった。
───そこには扉の前で全裸のまま倒れるアクロアの姿があった。
逞しい身体は、痣や傷だらけになって血が滴っていた。透き通るような髪の毛も今は汚れてパサついてる。そして何より…彼の美しい6枚の翼が、根本からばっさり切断されて無くなってしまっていた。
慌ててアクロアを抱き締めると、何度も彼に呼びかけた。
「アクロア…アクロアッ!!目を覚ましてくれ…!!」
涙を流しながら呼びかけると、アクロアは微かに目を開いて俺の顔を見つめてきた。
「あぁ……ただいま、モリオン……すまなかったな……遅くなってしまって……」
アクロアは掠れた声で呟くと、俺の頬を血塗れの腕でそっと撫でた。
「おかえり、アクロア……!帰って来てくれて……本当に良かった……!!」
アクロアを抱きしめて泣いていると、後ろでその様子を見ていたセドニーがどこかオロオロした様子で話しかけてきた。
「モリオン様、アクロア様を急ぎ屋敷の中に…!!傷だらけですし、その…全裸なので…!」
「そうだな…アクロア、すぐに手当ての準備をする!」
「ありがとうな……お前にも迷惑をかけた……すまない。」
「いえ、そんなことありませんよ」
モリオンはセドニーと共にアクロアを抱えると、急いで寝室へと運びベッドへそっと寝かせた。
「ぐっ…ぅ…魔力で、翼や身体を修復するのにも…時間がかかりそうだ…」
アクロアは苦々しい表情をすると、そのまま眠りについてしまった。
「アクロア…天界で一体何が……?」
モリオンはアクロアの頭を優しく撫でながら心配そうな顔で眠る彼を見つめ続けた。
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