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第5章 人生の交換

3話 復讐

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 俺は、3年ぐらい前に癌だと発覚し、治療もしたけど、もう半年ぐらいしか生きれないと通知され、絶望して道を歩いていた。その時に、あのおじさんと出会ったんだ。

 女になることは想定外だったけど、新しい体をゲットできたんだから、文句はない。むしろ、女としての人生を楽しむのも面白いと思う。

 意外だったのは、あの日に目の前に座っていた女性と体を交換することになったことだ。人生をやり直すというのは、あのメンバーで体を交換することだったんだろうか? そのことは、結局、分からないままだった。

 それにしても健康な体って、本当に気持ちいいな。ずっと、お腹や背中が痛くて、眠れない日々だったが、昨晩は、1回も起きることなく、ぐっすり眠れた。こんなに快適な朝が、いつからなくなったのか思い出せない。

 今日は、土曜日なので、横浜の赤レンガ倉庫とかをぶらぶらしてみることにした。女の服装で外に出るのは少し勇気がいたんだが、これからずっと女として過ごすんだし、知らない人で試してみて、だんだん身につけていく方が早道だろう。

 ということで最初からチャレンジで短めのスカートと、少し寒かったのでロングソックスと、シャツにカーディガンを着て、横浜に向かった。横浜では、春の爽やかな風が吹き、本当に気持ちいい。こんなに気持ちがいい外での散歩は久しぶりだ。

 スニーカーできて、歩きやすかったので、半日、ぶらぶらした。1人で観覧車に乗ったら、少し、変な目で見てくる人もいたが、今更、そんなことを気にすることはない。

 夕方になって、カフェでパスタを食べて、その後、昔、時々行っていたショットバーに行ってみた。この前まで不健康で食欲もなかったが、この体では何も気にせず、お酒を飲めて、楽しめるなんて最高じゃないか。

 1人でカウンターで飲んでると、同年代の男が声をかけてきた。面白いもんだな。美しい女という表面だけで、男は素性を気にせずに声をかけてくるんだから。

 男の気持ちはわかるので、くすぐってやったら、だいぶ気分がよかったらしく、この後、ホテルで過ごさないかと誘ってきた。まあ、経験してみることもいいだろうと思い、ついて行ってみることにした。

 その男は、夜景の綺麗なホテルの一室に入り、シャンパンで乾杯をし、1時間程度、話したところで、抱きしめてきた。俺は、最初から妊娠するのも困るから、つけてねと言ったら、大丈夫だと言ったので、体を任せた。

 女のエッチも、結構いいじゃないか。というより、これまで癌だったからかもしれないが、男より気持ちいいと思った。これなら、これからの人生も期待以上に楽しめそうだ。

 男は、既婚者なのか、部屋は清算しておくから好きな時に出て行っていいよと話し、机に3万円を置いて出ていった。なんか、俺が体を売ったようにも見えるが、俺も楽しみ、お金ももらえるなんて最高だな。

 月曜日になって、会社に行った。会社では俺は営業部の社員で、様子を見ていると、男の課長に同行して、お客に笑顔を振りまいているのが大半の仕事のようだった。こんなんで金もらえるなんて、なんて楽なんだ。

 火曜日には、夜の接待も入っていて、美味しい料理を食べながら、お酒とか注いでいればいい。お客からお尻を触られたけど、常務はエッチなんだからとか言って笑ったら、みんなが大笑いをして、それ以降、触られることもなく、満足してお客は帰っていった。

 1週間ぐらいすると、社長プロジェクトとかのメンバーとして呼び出され、社長とランチしながら、CMを撮影しにノルウェーに同行してくれと言われた。女って、顔がいいと、こんなに楽しいこともできるのかってびっくりだね。

 もちろん、いろんな女はいるんだろうけど、どうも、俺には、美しい25歳の女というフラグが立っていて、どの役員にも知られていて、何かあると、彼女を使ってはという話しになるらしい。しかも、どの男も、デレデレして、本当に細かいことまで手取り足取り、教えてくれるし、サポートしてくれる。

 まあ30歳ぐらいまでなのかもしれないが、これは楽だな。この顔とスタイルが貴重な財産ということだろう。これを活かさない手はないな。この体の持ち主は、どうして俺と交換したんだろう。自分の実力でチャレンジしたいとか。まあ、高望みするから、いけないんだよな。

 そういえば、この前、体を交換したあいつが、俺のところに文句を言いにきた。騙したんだろって。でも、今更、そんなこと言われてもどうしょうもないし、軽くあしらっておいたよ。お前自身が決めたことだろうって。

 俺はノルウェーに出張したけど、ほとんどが、社長と一緒に観光という感じだった。CM撮影の現場には、お疲れという感じで社長と1回だけ顔を出しただけだ。社長が部屋に俺を誘わないか心配したけど、見た目は豚のように太っていたが、対応はとても紳士で、そんな心配は不要だった。

 女の社員たちからも、きっと、やっかみはあったと思うが、上司はいずれも男で、お局さんみたいな人はいなかったのがよかったのかもしれない。

 社長とかから可愛がられていると、みんな知っていたから、変な陰口を社長とかに言われても困ると思ってか、誰も、嫌がらせをしてくることはなかった。

 冬には、同期の6人でスキーに誘われてニセコに行ったが、男たちはみんな、スキーをしたことがない俺に、ずっと付きっきりで教えてくれた。なんと、レンタルとかレッスンの予約まで、なんでもしてくれてた。美女って、笑顔を振り撒いてさえいれば、こんなに楽なんだな。

 また、夕食も、女が料理を取り分けたり、お酌をしたりするのかと思ったら、オーダーとかも全部してくれて、俺は笑顔で座っているだけでよかった。本当に男って馬鹿だなと思ったし、女って、綺麗なだけでチヤホヤされて楽だなと実感したよ。

 他の2人の女は、俺には話しかけてこなかったから、あまりよく思っていないと思う。後で聞いたら、俺がくるからって、2人が気になっている男性を誘ったらしくて、お互い様ってところかな。

 だが、1月も終わりって時に、渋谷のスクランブル交差点を歩いていたら、びっくりした。俺が正面にいるじゃないか。すっかり衰弱しているが、間違いなく俺の体だ。そして、いきなり、俺の胸に上から包丁で刺してきた。

「あなたは、騙した報いを受けないとダメなのよ。あなたを道連れにしないと死ねないわ。」

 俺は、心臓から血が噴き出して、その場で倒れ、声を出すことができずに、道路一面が俺の血で染まった。そして、周りでは悲鳴が聞こえ、包丁を持った男は警察官に押さえつけられ、連行されて行った。

 俺は、これから充実した生活を満喫するつもりだったのに、どうしてこうなるんだ・・・。そして、救急車が来たが、目の前が真っ暗になっていった。
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