悪魔のささやき

一宮 沙耶

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1話 TSの部屋

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「みなさん、今夜は、異性の体に変わりたい男女6人にお集まりいただきました。ようこそ、TSの部屋に。夢が叶うなんて、ワクワクするじゃないですか。これからお互いに話しをして、どの異性と体を交換したいか、みなさんで決めてください。」

 話しの内容だと明治時代の洋館のようなイメージだが、全く似つかない、テーブルと椅子しかない殺風景なマンションの1室に男性3人、女性3人が呼ばれ、座らされた。

 僕らは、道端で知らないおじさんに、今の体に違和感があるんでしょ、異性の体になりたいんでしょと声をかけられ、この部屋に集められた。そんなこと、あり得ないけど、死んだ時の記憶を貰うのでお金もいらないと言っているし、興味本位で来たんだ。嫌だったら断ればいいし。

 外見は、イケメン男性と美女の6人という感じだけど、お互いは知らないようだ。でも、おじさんの話しだと、他のメンバーも僕と同じで今の体には馴染めてないんだろう。

 僕は、昔から、この体が嫌いだった。1人で部屋にいるときは、シリコンパットをブラに入れて胸を作り、スカートを履いている。女装、特に胸ができると落ち着くんだ。でも、やっぱり男だから、限界がある。声を出すと、やっぱり男性なんだって思い知らされる。

 でも、男性が好きなわけでもない。男性とキスをするとかは気持ち悪くてだめだ。でも、女性を抱きたいわけでもない。そう、昔、何か変わるかもと思い、女性と寝たこともあったが、立たなかった。

 男性とか女性とか関係ないし、そもそも人と一緒にいたいとも思わない。1人でいるのが楽でいい。そう、誰かに見せたいとか、同性が好きだとかじゃなくて、自分の中だけで、体の性に違和感があるだけなんだ。

 手術することも考えたけど、失敗したりすると怖いし、男性の声は治らないみたいで、結局、完全な女性になるのは無理って聞いて、やめた。胸だけ作るんだったら、簡単そうだけど、そうすると、温泉とか海とかに行けなくなるし、会社でも、ごまかせなくなる。

 戸籍の法律が変わって、手術して精巣を取ったりすれば法律上も女性になれるって聞いたけど、今更、女性として生活する勇気はない。人間関係を1から作り直さなくちゃいけないって、できないよ。

 ところで、交換ってなんだ? そんなことできるはずがないじゃないか。

「体の交換って、どうやるんですか? 手術とかですか?」
「手術ではなく、あっという間に終わります。痛いこともありません。でも、どうやってということはお話ししても、分からないと思いますよ。皆さんの言葉だと、魔法だと思っていただけると近いですね。」
「何を話し合うっていうんですか?」
「交換した後は、相手の人生を過ごすことになるので、今、どんなふうに過ごしてるのかということを聞いてみるといいと思います。今回は、どの方と交換しても、それほど人生は変わらないように、年齢はもちろんですが、働き先とか、学歴とか、出身地とか同じ方々を集めてみました。大変だったんですから、褒めてください。」
「違う人の人生になるということですか?」
「そうですね。1回しかチャンスがなくて、戻れないから慎重に決めてくださいね。」

 いくら聞いても、よく分からなかったが、前にいる女性に話しかけてみた。

「僕は、男の体に違和感があって、たとえばバストがあると落ち着くんです。下半身も違和感があって。」
「そうなんですね。私は逆。バストがあるのが汚らわしくて。生理になる体も嫌なんです。」
「いろいろなんですね。男性になりたいのは、やっぱ体への違和感ですか?」
「それもあるけど、女性への蔑視とか、制約が多くて、男性になって自由に行動したいという方が強いですね。」
「そんなことないと思いますけど。男性だって、苦労は多いですよ。」
「あなたにはわからないんですよ。そんなこと、今議論しても時間の無駄ですよね。ところで、今、仕事は何をされているんですか?」
「五輪コンピュータサービスでSEをしています。」
「私は、一菱システムズのSEをしています。体を交換しても仕事はすぐに出来そうね。」
「そうですね。一菱システムズなら、似たような規模の会社だし。僕は1人暮らしで、親は新潟に両親とも住んでますけど、あなたはどうなんですか?」
「私も1人で、両親は奈良に住んでます。大きな問題はなさそうですね。貯金はどのぐらいありますか? 私は200万円ぐらいですが。」
「僕も同じぐらいです。月給もあるから、お互いに、生活にはそれほど困りませんね。いい感じじゃないですか。」

 この女性の容姿を見たが、こんな女性になりたいという感じだったし、相手もそう思っているようだった。そこで、仕事も問題なさそうだったので、お互いに交換しようということで話しがついた。他の2人も合意ができて、あと2人は難しいと決めたようだった。

「まず、そのままお帰りいただく2人には記憶を消させていただきます。この薬を飲むと、道を歩いているうちに記憶がなくなり、ふと自分に気づくという感じになります。では、お飲みいただき、退出してください。で、他の4人は、この薬を飲んでください。眠くなりますが、すぐに目が覚めます。そしたら、相手の異性と体の交換は終わりです。」
「本当なのかな?」
「やばい薬じゃないんですか?」
「大丈夫です。さあ、信じて、飲んでみてください。」

 2人は薬を飲み、玄関から出ていった。そして4人は、薬を飲んで、テーブルに顔を埋めた。その瞬間、僕は、谷底に落ちるような感じがあり、その後、目を覚ましたら驚くことが起きていた。体が横の女性になっていて、横に、自分を見る、元自分がいたからだ。
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