6 / 9
6話 反乱組織
しおりを挟む
柚月が体臭を気にして来なくなった頃、眠ろうとした時だった。
ドアの下から何かの手紙が差し込まれたのが聞こえた。
私の名前が書かれた手紙を読んだ時、私の心に、明かりが灯る。
こんな生活から脱出できるかもしれないという一筋の光が。
この苦しい生活から抜け出さないかというメッセージ。
明日の17時に近くの公園で集会が開催されるらしい。
その下に、これからのメッセージの暗号の解き方も書いてあった。
私は、年に1日しかない休暇を取り、集会に参加することにする。
毎週7日働き、唯一その1日が年に1回だけの休暇。
そんな貴重な時間よりも、集会の方が何故か大切に思えた。
公園の広場は、入れないぐらい大勢の人で溢れている。
いかにも下層市民という雰囲気の大勢の女性たち。
何日もお風呂に入っていない酸っぱい匂いが立ち込める。
1人がステージで話し始めた。
人が多すぎてステージから遠い私には、よく聞こえない。
それでも、政府によって虐げられている不条理を語ってるのは分かった。
いくら働いても、生きるのに精一杯。
その理由は出産しないからだという。あまりに人権を無視している。
話は続く。
「私達は、何も悪いことはしていない。多くがレズビアンと、50歳以上で閉経までに子供を作れなかった女性。それなのに、こんな仕打ちは酷すぎる。実は、まだ噂レベルに過ぎないけど、どうも、男性は全て異星人で、女性は妊娠すると異星人に体が変わるという話を聞いた。これは、異星人による地球人の征服だという話しを。」
荒唐無稽なことを言い出している。そんなことがあるはずがない。
でも、女性達へのひどい仕打ちはそのとおり。
そう思ったとき、サイレンを鳴らすドローンが現れる。
「この集会は許可されていない。今すぐにやめなさい。この警告に従わない場合には、逮捕する。」
誰かがドローンに石を投げ、ドローンは落ちていく。
それと同時に、警察ロボットが私たちに突入してきた。
私たちは、クモの子を散らすように逃げ、一部の人は逮捕される。
逃げた私に、翌日の夜、また、ドアの下から手紙が舞い込む。
経済産業省の大臣殺害に協力してほしいと。
その下に、文章は続く。
何人か、別の大臣の殺害を図ったけど、いずれも失敗し、死刑となった。
期待しているけど、怖いならやめてもいい。
死ぬ気で仕掛けないと、中途半端なら後で後悔するからと。
いくら大臣が罪悪人だったとしても、人を殺していいのかしら。
そんな疑問を持つ余裕は私にはなかった。
もう、今の生活に疲れ果て、投げやりになっていたんだと思う。
死刑になって死にたかったのかもしれない。
私は指示された料亭のコンパニオンの仕事が与えられた。
この料亭のコンパニオンは一般市民が担い、上品な接客をする。
反乱組織は、私が一般市民だと偽装工作をしてくれている。
コンパニオンは笑顔で場を和ませ、経営のアドバイスをすることもある。
反乱組織が関与しているため、誰も私の存在に疑問を持つことはなかった。
そして、経済産業省の大臣がいる部屋に通される。
男性達が会話をしていた。
ここでは、秘密の話しをするために異星人のテレパシーは遮断されている。
だから、私が異星人でないことはばれていない。
「河田君、お久しぶりだね。元気でやっていたかい。」
「ええ。今日は、佐藤大臣とご一緒できるだけでもありがたいのに、そんなお言葉をかけていただけるなんて光栄です。今日は、コンパニオンも呼びましたよ。お楽しみください。」
「おお、かわいいね。まあ、座ってくれ。」
仲居さんは、料理とお酒を部屋に持ち込む。
仲居さんの仕事は下層市民の役割。
存在感を出さずに、言われたことを淡々と対応している。
「お嬢さんは、名前は何て言うのかね?」
「鷺宮 美羽です。よろしくお願いいたします。」
「鷺宮、いい名前だね。まあ、今日は楽しんでいってくれ。」
「美羽さん、佐藤大臣にお酒を注いでくれ。」
「そうですね。大臣、どうぞ。」
「ありがとう。美羽さんもいけるよね。」
「もちろんです。ありがとうございます。」
この料亭では、コンパニオンはお料理もお酒も味わえる。
お料理も、これまで見たことのない贅沢な品々。
「では、今回の新都市建設の成功と佐藤大臣の総理就任を祈念して乾杯しましょう。」
「おい、河田君、総理なんてまだ早いよ。」
「いえ、今回の新都市計画が成功すれば、次の総理で間違いないですよ。国家の繁栄、佐藤総理の樹立、そして当社の成長は目の前です。ぜひ、一緒に成長しましょう。乾杯!」
席に座る3人と私は乾杯をした。
その直後に、河田常務が箱を大臣に差し出した。
中身をみると、大量の札束が入っている。
「美羽さん、こういう行為は悪いかね?」
「いえ、佐藤大臣と河田常務が協力することで日本が成長するのであれば、良いことだと思います。」
「そうだよな。この料亭はコンパニオンをよく教育している。やはり、大臣クラスがよく使う一流の料亭は違うな。」
こんな政治と近い料亭を反乱組織がどう味方に引き入れたのか分からない。
女性達のためと無理して色仕掛けをしたのか、脅したのか。
まあ、調べても分からないことは考えても仕方がない。
「でも、美羽さんは大丈夫だとしても、仲居さんには聞かれないようにした方がいいですよ。下層市民は先日も決起集会を開いたようですし。」
「いや、下層市民なんて、結局、何もできないんだよ。下層市民は、複数の大臣殺害を企んでいたが、全て阻止した。そんなこと気にしていては政治なんてできない。河田君も臆病だな。」
「そうおっしゃるなら、いいですが。次はどの日本酒にしますか?」
佐藤大臣は上機嫌で、河田常務と仕事の話しで盛り上がっている。
デザートが運ばれてきた頃、河田常務は小声で私に話しかける。
「美羽さん、大臣のお車の手配をお願い。」
「承知しました。」
私は、大臣の運転手に連絡する。
この料亭の周りで待機していた大臣の車は、すぐに料亭の前に来る。
黒塗りの車で、高級車なのは見るだけで分かる。
私は、ハンカチを落とし、自然に車の横でかがむ。
ハンカチを拾うときに、大豆ぐらいの大きさの小型爆弾を車の下につけた。
そして、車が来たと大臣に伝え、大臣をお見送りをする。
河田常務は紙袋を大臣に渡す。
「大臣、このお土産、うな重なんですけど、お土産の域を超えていて、本当に美味しいですよ。ご家族の方とご一緒にご賞味いただければと思います。今夜は遅いので、明日にでもお召し上がりください。明日夜までは持ちますので。」
「ありがとう。妻も息子も喜ぶよ。今日は、本当に美味しかった。ありがとう。」
「ありがとうございました。」
大臣は車に乗り込み、銀座の街を消えていく。
赤いテールランプが線のように流れていく。
そして、合わせて呼んでいたタクシーに乗り込んだ河田常務も見送る。
今日も終わった。これで良かったのかしら。
でも、もう決めたこと。これから起きることは気にせず、家に帰ろう。
料亭を出て見上げると、夜の12時を過ぎても、煌々と光るビルがみえる。
下層市民は、まだ大勢が働きつづけるのだと思う。
みんなストレスを抱えて、単調な仕事を終わりも見えずに続けている。
料亭の横にある私のマンションのエントランスに入る。
今は、一般市民に紛れてマンションに住んでいる。
今週も、よく頑張ったと自分を褒めてあげた。
シャワーを浴び、髪をドライヤーで乾かして、ふかふかのベッドで寝る。
奴隷になってからの不条理が憤りに変わっていく。
昔は、当たり前のようにできていたことが、奴隷にはできないことが。
この恵まれた生活で昔の悔しさは、かえって増幅する。
いつの間にか深い眠りに落ちていた。
カーテンから朝日が漏れる。何時間、寝たのかしら。
今の仕事はお昼に出て、夜だけだから、ゆっくり眠ることができている。
お昼に起きてテレビをつけると騒がしい。
ニュースキャスターは、昨日私が会った大臣が爆破で殺されたと語る。
もう、私は逃げられないところまできていることを実感した。
ドアの下から何かの手紙が差し込まれたのが聞こえた。
私の名前が書かれた手紙を読んだ時、私の心に、明かりが灯る。
こんな生活から脱出できるかもしれないという一筋の光が。
この苦しい生活から抜け出さないかというメッセージ。
明日の17時に近くの公園で集会が開催されるらしい。
その下に、これからのメッセージの暗号の解き方も書いてあった。
私は、年に1日しかない休暇を取り、集会に参加することにする。
毎週7日働き、唯一その1日が年に1回だけの休暇。
そんな貴重な時間よりも、集会の方が何故か大切に思えた。
公園の広場は、入れないぐらい大勢の人で溢れている。
いかにも下層市民という雰囲気の大勢の女性たち。
何日もお風呂に入っていない酸っぱい匂いが立ち込める。
1人がステージで話し始めた。
人が多すぎてステージから遠い私には、よく聞こえない。
それでも、政府によって虐げられている不条理を語ってるのは分かった。
いくら働いても、生きるのに精一杯。
その理由は出産しないからだという。あまりに人権を無視している。
話は続く。
「私達は、何も悪いことはしていない。多くがレズビアンと、50歳以上で閉経までに子供を作れなかった女性。それなのに、こんな仕打ちは酷すぎる。実は、まだ噂レベルに過ぎないけど、どうも、男性は全て異星人で、女性は妊娠すると異星人に体が変わるという話を聞いた。これは、異星人による地球人の征服だという話しを。」
荒唐無稽なことを言い出している。そんなことがあるはずがない。
でも、女性達へのひどい仕打ちはそのとおり。
そう思ったとき、サイレンを鳴らすドローンが現れる。
「この集会は許可されていない。今すぐにやめなさい。この警告に従わない場合には、逮捕する。」
誰かがドローンに石を投げ、ドローンは落ちていく。
それと同時に、警察ロボットが私たちに突入してきた。
私たちは、クモの子を散らすように逃げ、一部の人は逮捕される。
逃げた私に、翌日の夜、また、ドアの下から手紙が舞い込む。
経済産業省の大臣殺害に協力してほしいと。
その下に、文章は続く。
何人か、別の大臣の殺害を図ったけど、いずれも失敗し、死刑となった。
期待しているけど、怖いならやめてもいい。
死ぬ気で仕掛けないと、中途半端なら後で後悔するからと。
いくら大臣が罪悪人だったとしても、人を殺していいのかしら。
そんな疑問を持つ余裕は私にはなかった。
もう、今の生活に疲れ果て、投げやりになっていたんだと思う。
死刑になって死にたかったのかもしれない。
私は指示された料亭のコンパニオンの仕事が与えられた。
この料亭のコンパニオンは一般市民が担い、上品な接客をする。
反乱組織は、私が一般市民だと偽装工作をしてくれている。
コンパニオンは笑顔で場を和ませ、経営のアドバイスをすることもある。
反乱組織が関与しているため、誰も私の存在に疑問を持つことはなかった。
そして、経済産業省の大臣がいる部屋に通される。
男性達が会話をしていた。
ここでは、秘密の話しをするために異星人のテレパシーは遮断されている。
だから、私が異星人でないことはばれていない。
「河田君、お久しぶりだね。元気でやっていたかい。」
「ええ。今日は、佐藤大臣とご一緒できるだけでもありがたいのに、そんなお言葉をかけていただけるなんて光栄です。今日は、コンパニオンも呼びましたよ。お楽しみください。」
「おお、かわいいね。まあ、座ってくれ。」
仲居さんは、料理とお酒を部屋に持ち込む。
仲居さんの仕事は下層市民の役割。
存在感を出さずに、言われたことを淡々と対応している。
「お嬢さんは、名前は何て言うのかね?」
「鷺宮 美羽です。よろしくお願いいたします。」
「鷺宮、いい名前だね。まあ、今日は楽しんでいってくれ。」
「美羽さん、佐藤大臣にお酒を注いでくれ。」
「そうですね。大臣、どうぞ。」
「ありがとう。美羽さんもいけるよね。」
「もちろんです。ありがとうございます。」
この料亭では、コンパニオンはお料理もお酒も味わえる。
お料理も、これまで見たことのない贅沢な品々。
「では、今回の新都市建設の成功と佐藤大臣の総理就任を祈念して乾杯しましょう。」
「おい、河田君、総理なんてまだ早いよ。」
「いえ、今回の新都市計画が成功すれば、次の総理で間違いないですよ。国家の繁栄、佐藤総理の樹立、そして当社の成長は目の前です。ぜひ、一緒に成長しましょう。乾杯!」
席に座る3人と私は乾杯をした。
その直後に、河田常務が箱を大臣に差し出した。
中身をみると、大量の札束が入っている。
「美羽さん、こういう行為は悪いかね?」
「いえ、佐藤大臣と河田常務が協力することで日本が成長するのであれば、良いことだと思います。」
「そうだよな。この料亭はコンパニオンをよく教育している。やはり、大臣クラスがよく使う一流の料亭は違うな。」
こんな政治と近い料亭を反乱組織がどう味方に引き入れたのか分からない。
女性達のためと無理して色仕掛けをしたのか、脅したのか。
まあ、調べても分からないことは考えても仕方がない。
「でも、美羽さんは大丈夫だとしても、仲居さんには聞かれないようにした方がいいですよ。下層市民は先日も決起集会を開いたようですし。」
「いや、下層市民なんて、結局、何もできないんだよ。下層市民は、複数の大臣殺害を企んでいたが、全て阻止した。そんなこと気にしていては政治なんてできない。河田君も臆病だな。」
「そうおっしゃるなら、いいですが。次はどの日本酒にしますか?」
佐藤大臣は上機嫌で、河田常務と仕事の話しで盛り上がっている。
デザートが運ばれてきた頃、河田常務は小声で私に話しかける。
「美羽さん、大臣のお車の手配をお願い。」
「承知しました。」
私は、大臣の運転手に連絡する。
この料亭の周りで待機していた大臣の車は、すぐに料亭の前に来る。
黒塗りの車で、高級車なのは見るだけで分かる。
私は、ハンカチを落とし、自然に車の横でかがむ。
ハンカチを拾うときに、大豆ぐらいの大きさの小型爆弾を車の下につけた。
そして、車が来たと大臣に伝え、大臣をお見送りをする。
河田常務は紙袋を大臣に渡す。
「大臣、このお土産、うな重なんですけど、お土産の域を超えていて、本当に美味しいですよ。ご家族の方とご一緒にご賞味いただければと思います。今夜は遅いので、明日にでもお召し上がりください。明日夜までは持ちますので。」
「ありがとう。妻も息子も喜ぶよ。今日は、本当に美味しかった。ありがとう。」
「ありがとうございました。」
大臣は車に乗り込み、銀座の街を消えていく。
赤いテールランプが線のように流れていく。
そして、合わせて呼んでいたタクシーに乗り込んだ河田常務も見送る。
今日も終わった。これで良かったのかしら。
でも、もう決めたこと。これから起きることは気にせず、家に帰ろう。
料亭を出て見上げると、夜の12時を過ぎても、煌々と光るビルがみえる。
下層市民は、まだ大勢が働きつづけるのだと思う。
みんなストレスを抱えて、単調な仕事を終わりも見えずに続けている。
料亭の横にある私のマンションのエントランスに入る。
今は、一般市民に紛れてマンションに住んでいる。
今週も、よく頑張ったと自分を褒めてあげた。
シャワーを浴び、髪をドライヤーで乾かして、ふかふかのベッドで寝る。
奴隷になってからの不条理が憤りに変わっていく。
昔は、当たり前のようにできていたことが、奴隷にはできないことが。
この恵まれた生活で昔の悔しさは、かえって増幅する。
いつの間にか深い眠りに落ちていた。
カーテンから朝日が漏れる。何時間、寝たのかしら。
今の仕事はお昼に出て、夜だけだから、ゆっくり眠ることができている。
お昼に起きてテレビをつけると騒がしい。
ニュースキャスターは、昨日私が会った大臣が爆破で殺されたと語る。
もう、私は逃げられないところまできていることを実感した。
2
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ずっと一緒にいようね
仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた
「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」
「ああ もちろんだよ」
「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」
「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・
次は別のひとがいいかも お前もそうだろ? なぁ?」
言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると
「・・・・・」
失意の顔をした 妻と目が合った
「え・・・?」
「・・・・ 」
*作者ご都合主義の世界観のフィクションです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる