闘いの果てに Season 3

一宮 沙耶

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8話 地球の終焉

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彗星が地球に最接近する晩、地球防衛本部では、穏やかな時間が過ぎていた。
むしろ、お祭りのような雰囲気が漂っている。
恐ろしい事態が進んでいるにもかかわらず。

「ミロ、今日は壮大な天体ショーですよ。今日ぐらい休んで、楽しんだら、いかがですか。」
「この地球のためにやらなければならないことがたくさんある。休んでいる時間はないんだ。ただ、君は楽しんでおいで。せっかくの機会だし、家族と見ることを楽しみにしていたんだろう。」
「ありがとうございます。では、お身体にお気をつけください。私は、ここで失礼します。」

私の人生は二度目だから、もう楽しみはいらない。
でも、普通の人は、楽しませてあげないと。

ところで、最近、監視衛星から10個の惑星が情報のやり取りをしているのがわかった。
もう少し多いのかもしれない。
しかも、相互に交易をしているように見える。

この輪に参画できれば、地球にも利益をもたらすに違いない。
ただ、情報量が少なすぎて、交わされている言語の解析はできていない。
そんな中で、地球の位置を伝えてしまうにはリスクもある。

地球を支配しようとするかもしれない。
好戦的なのか、平和を重んじるのか、もっと情報が必要だ。

その解析を急ぎ、気づくと今夜ももう3時を過ぎる。
疲労が限界にきていたのだろう。
いつの間にか机の上で寝ていた自分に気づく。

この部屋は、昔、私が暮らしていた時と同じ地下20階。
地球防衛本部があった所と同じ階だ。
地下でも、窓からは外の風景が映され、まるで高層ビルのマンションにいるみたい。
その窓からは、これまでと変わらない朝日が上る。

その時だった。空から無数の攻撃ビームが地上に舞い落ちる。
どうしたんだ。シールドが作動していない。
そう、昨晩の天体ショーで良く見えるようにとシールドを外していたのに気付く。

でも、朝には技術班がシールドを再開しているはず。
どうして再開していないのだろうか。
私は、すぐに防衛本部に駆けつけ、シールドを再開した。

でも、もう遅かった。
パネルの映像では、地球の大部分のエリアが攻撃で大きなダメージを受け、燃えている。
生き残っているのはごく僅かだろう。

しかも、朝方の薄青い空に浮かぶ月が粉々に破壊されていた。
目の前に、月の破片が降り注ぎ、それも地球を火の海に巻き込んでいる。

どうして、この防衛本部の部屋には誰もいないのだろうか。
このビル自体がひっそりとしていて、人気がない。

炎に包まれる地獄のような地上にカメラを向ける。
そこには、おどろくような光景が広がっていた。

攻撃ビームからなんとか逃れた人が、道路で彷徨っている。
いかにも目が見えないという姿で。
どうしたのだろうか。攻撃の炎で、目にダメージが出たのだろうか。

嫌、違う。世界中で、同じ状態だ。
どうしてだ。考えろ、ミロ。
関係があるとすると、昨日の彗星の天体ショー。

そうだ、あれは攻撃だったんだ。おそらく、人々の視力を奪う。
しかも、いつの間にか自らが浮かれ、お祭り騒ぎをしていた。
これも、敵の狙い通りだったに違いない。

部屋には高齢の技術主幹があわててやってきた。

「何があったのですか? すごい振動で起きて、外を見たら火の海です。」
「シールドが外れているときに、地球外生命体から攻撃を受けた。しかも、映像から推測すると、昨日の彗星は武器で、人々の視力を奪ったように見える。月も破壊され、その破片が地球に降り注いでいる。」

二日酔いの様子の技術主観は、一瞬にして酔いが冷めたように見える。
ペットボトルの水を飲み干し、話しを続ける。

「あれは武器だった? そういえば、私も家族とかいないので、昨晩はお酒を飲み、夜は寝ていました。天体ショーに出た人たちの視力が奪われていたとすると、ほぼ全員の人が目が見えないのかと。大きな天体ショーとして、参加しない方が変人扱いされていましたから。大変なことになってしまった。どうしましょうか。」
「あれから攻撃はやんだ。これは、攻撃元をわからなくするためだろう。だから、当面の攻撃はなく、これ以上の被害はでないと思うが、月の破片の落下は続いていて、被害も拡大している。敵の位置も特定できず、敵への攻撃もできない。まずは、死なずにすんだ人を救助しなくては。」

ミロの慌てようはすごいものだった。
また、自分の前で地球の大勢の人々が死んでいったのだから。

「まずは救助が必要ですが、それは別の人に任せて、私たちがやらなければならないことがあります。」
「それは?」
「月が破壊されたと言いましたよね。そうなると、これから地球は超高速で自転するようになり、強風、砂嵐が地表で荒れまくるようになります。また、地軸が傾き、灼熱から極寒まで極端な気候となり、人類は生き続けることができなくなるはずです。それが、敵が考えているトドメなのかもしれません。」
「どうすればいいんだ?」
「月と同じものを、月の軌道に持ってくるしかありません。」
「できるのか?」
「物質瞬間移動装置で理論的にはできるはずですが、自信がありません。」
「君は、それに専念してくれ。私は、生き残った人々の救助に向かう。」

その技術主幹は、月の候補を探し出す。
すぐに、木星の衛星イオを候補として特定する。
それを移動した場合の木星への影響は未知だが、木星の圧倒的な質量から問題はなさそう。

すぐに、月の軌道にイオを物質瞬間移動装置で移動させた。
ただ、その軌道の安定化ができない。
イオは地球を楕円で周りはじめ、地球に最短で近づいたときに、悲劇が襲う。

お互いに引力で引き合い、地球の地面が割れ、宙に舞う。
その後は、砂だらけの荒野が広がってしまった。

「どうして、こんなことになるんだ?」
「イオを安定化することができません。」
「まず、イオを地球と火星の中間地点に退避させなさい。このままだと地球は壊れてしまう。」

退避させた後も、何度も挑戦したが、軌道を安定化させることはできなかった。

「こんな時に、彩華がいてくれれば。そう、彩華をこの時代に移動させられないのだろうか。死ぬ前から今へ。」
「彩華さんとは誰ですか?」
「物質瞬間装置を開発した人だ。」
「それは1000年以上前ですよね。私の技術では、そんな昔の人をここに移動させるのは無理です。」
「やっぱり、最後は人材なんだな。」

やることはやり尽くした。
有効な手は打てず、今、地球では暴風雨と熱風が荒れまくっている。
私がいるビルも、あと10分も持たずに崩れ去るだろう。

私がいながら、この地球を、そこに住む人々を救うことができなかった。
いくら詫びても、許してもらえない。

私は、床に崩れ落ち、顔をカーペットに押し付ける。
こんなことで私がくじけるとは。カーペットは涙にぬれた。
その時に、天井は空に飛び去り、私の体も宙に浮く。

もう、この地球で生き残っている人はいないだろう。
この頑丈な防衛本部でさえ、もうこの暴風雨に耐えられない。

ごめん、地球のみんな。
私は、みんなと一緒にこの地球と命を共にする。
地獄に落ちるのは私だけでいい。みんなは天国に行きなさい。

砂と瓦礫で覆われる地上を下に見ながら、体はどんどん舞い上がっていく。
どこか高い空から、いきなり落とされるのだろう。
下には、ただ、荒れ狂う嵐しかない。

さようなら。私が愛した美しい地球。

その時、地球から一艘の宇宙船が飛び立つ。
若い男女の科学者と、男女の兵士が、4体のアンドロイドを持って。
生き延びる可能性も低い中、あてのない宇宙に消えていった。

アンドロイドに脳を移植するときに、位置が特定されることも知らずに。
しかも、アンドロイドは一定の割合で地球外生命体から操作されるリスクを内包しながら。
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