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10話 裏切り
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翠が子育てをする一方で、私は、地球外生命体との戦いの準備を着々と進めていた。
でも、私が、本当に兵士たちを本当に指揮できるのかしら。
もっと、みんなが信頼できる立派な人がいるのではと不安に押し潰されそうだった。
そんな不安を払拭するために、図書館にある戦略、戦史等の本を読み漁る。
特に、孫氏の兵法という本が一番、心に響いた。
実戦も大切だけど、何事も、知識はあった方がいい。
それでも不安に押しつぶされそうになり、眠れない夜が続く。
そんな中、耳を疑う情報が入ってきたの。
「陽葵、町田の兵士訓練場が爆破されたわ。」
「澪、私もさっき聞いた。どうも私たちの情報が敵に漏れているみたいね。最近、地球外生命体の施設を攻撃して、大勢の人間を逃しているから、地球外生命体たちも、必死で私たちのことを探してるんだと思う。この吉祥寺の図書館も危ないかも。」
「でも、AIとは遮断しているし、どうして情報が漏れるのかしら?」
陽葵は何か心当たりがあるのか、私から目線を外す。
「そうね。こんなこと考えたくはないけど、誰か、地球外生命体に情報を流している裏切者がいるかもしれないわ。」
「私も、そう思っていた。最近、妊婦を増やすために、この施設に大量の人間を収容し始めたけど、メンバーが増えると、1人ぐらいそんな人が出てもおかしくない。でも、人間なのに、人間を裏切るなんて、どういうことなのかしら。」
「魅力的な報酬を提示されたのかもね。まずは、この話しは澪と私だけの秘密にしましょう。それで、みんなを地球外生命体から守るためという名目で、しばらく、集団で個々のメンバーの行動記録をとることにするわ。怪しい動きをしている人はいないか確認するために。」
「わかった。」
1週間ほど経った頃、驚愕の情報がでてきた。
芽衣がAIチップを脳に入れ直したという情報。
最近、増やした妊婦達からではなく、私たちの当初発足メンバーから容疑者が見つかる。
そんなことは考えたこともなかった。
だって、同じ目的に向かって、これまで一緒に歩んできたじゃない。
しかも、芽衣とはずっと一緒にいたのに、全く気づかなかった。
たしかに芽衣からAIと連絡する電波が確認された。
そういえば、食料確保ということで、2カ月ぐらい前、芽衣は単独行動をしていた。
1週間ぐらいして戻ってきたとき、髪の毛の一部が抜けていた。
芽衣は、ストレスで毛が抜けたと笑っていたけど、あれは手術をしていたんだと思う。
そういえば、AIは地球外生命体が仕組んだものだと芽衣が話していたことを思い出した。
その時は、漠然と、どこから情報を得たのかと思っていただけだったけど。
おそらく、地球外生命体との会話から得た情報だったんだと思う。
芽衣は秘密主義の人。
考えていることを言わず、いつもはぐらかす。
笑顔で、社交的な姿に騙されてしまうけど、本当は何を考えているかわからない。
そういえば、こんなこともあり得ると疑っておくべきだった。
私も、翠も過酷な経験をして大きく変わった。
でも、芽衣は逃げてばかりで、何も変わっていなかったのかもしれない。
しかも、変わっていないことを周りに気づかれずにここまできた。
香水で体臭を隠すように、ずっと、自分を隠していたのだと思う。
芽衣にも、自分が変わることを教え、人類の明るい未来に向けて一緒に行動しないと。
芽衣に目を向けると、芽衣の目からは涙が流れる。
反省しているのかしら。
「芽衣、どういうことなの。」
「昔の豊かな生活に戻りたかったのよ。美味しいステーキ、優雅な旅行、観劇とかの娯楽、そういった楽しみがなくなって辛かったの。こんな汗まみれの貧しい生活なんて、もう嫌。澪だって、そう思わない?」
澪には分かってもらえないことは分かっている。
だって、泥まみれになっても、澪は人類を救うために最後まで諦めない人だもの。
私は、人類なんてどうでもいい。自分が楽しく生きることが重要なの。
私だって、子供の頃はこうすべきと考え、進んだこともある。
でも、みんながよってたかって私の意見を潰した。
もう、あんな惨めな思いはしたくないし、疲れた。
そのうち、自分の気持ちは隠し、誰にでも笑顔でいれば無難に過ごせることを学んだ。
グループのリーダーをよいしょしておけば、楽に生きていける。
澪みたく、理想が高い人はグループから除け者にされるけど、それは本人のせい。
私には関係がない。
私は可愛らしく振る舞い、装う。
そうすると、みんなは憧れの的のように見てくれることも学んだ。
それで十分じゃない。みんなが私のことを褒めて、仲良くしてくれる。
それが表面的なことだということぐらい、自分が一番知っている。
誰もが、うわべだけの褒め言葉で、私の本当の姿なんて見てもいないもの。
でも、そんなもんでしょう。本当の姿なんて、みんな醜いし。
人より上に行きたい、目障りな人を蹴落としたい。
そんな欲望にまみれているのが人間じゃない。
私は、そんな姿を見られたくないし、自分がそんなこと考えていることを認めたくもない。
また、表面的なことさえ褒めてもらえずに埋もれていく人なんていくらでもいる。
どんなことでも、いい意味で注目されたいの。
私のことを悪く言っている言葉なんて聞きたくない。
また、短くても楽しく生きる方がいいじゃない。
泥にまみれて長く生きるなんて嫌。
短い人生でも、毎日、ステーキやお菓子に囲まれて生きたい。
ただ、笑って楽して過ごしたい。
そんなにおかしいことじゃないでしょう。
私は、かわいい、かわいいと言われ、楽して生きたいだけ。
「でも、その先には殺されるのよ。」
「痛みもなく、知らない間に殺されるんでしょう。だったら、それもありなのかと思うの。どっちが幸せかといえば、短く楽しく生きる方がいい。長い辛くて貧しい生活なんて、もう嫌。」
「今の生活でも、楽しみはいっぱいある。子供を産んだ翠だって、毎日が幸せと言っていたじゃない。」
「いろいろな人がいるのよ。陽葵、自分の嗜好を私に押し付けないで。私は昔の生活がいいの。」
「でも、芽衣が情報を地球外生命体に流せば、私たちが目指す世界はなくなる。」
芽衣の考えは、あまりに私たちと違い、なかなか合意点を見いだせない。
このままでは、芽衣には一線から外れてもらい、AIチップを外して隔離するしかない。
「地球外生命体と話し合ってみようよ。」
「地球外生命体は私たちの施設を破壊し始めたのよ。話し合いなんてできるはずがない。」
「それは澪たちが、地球外生命体の施設を破壊したからよ。」
「私たちは、人間を地球外生命体から解放するために施設を破壊したの。地球外生命体は人間を殺すために施設を破壊した。これは全く違うことでしょう。」
「もう、私のことは放っといて。地球外生命体にこれ以上の情報を流すことはしないから。」
「それはできない。芽衣はそう思っていても、地球外生命体は芽衣に薬を打ち、情報を聞き出すと思う。」
「芽衣、悪いけど、脳からAIチップを外して隔離させてもらう。これまで、ここにいる人たちの衣服、食料の整備のリーダーをしてもらって感謝しているけど、ここまでね。その役割は他の人に引き継ぐから。」
「AIチップを外すのだけはやめて。」
その時だった。
陽葵がいきなり立ち上がり、ピストルで芽衣の頭を撃ち抜いた。
芽衣が座る椅子は後ろに倒れ、芽衣の頭からでる血は床を染める。
「陽葵、なんてことを。」
「個人の欲望で一回、裏切った人は、何度も裏切るの。そういう人は放置できない。こうするのが一番なのよ。」
陽葵の顔には、これまでの笑顔はなかった。
人類が自ら豊かに過ごせる世界を目指す冷徹なリーダーとしての陽葵がそこにいた。
陽葵の目には、どこまでも暗黒が広がっている。
その先に、明るい未来への光があるのか私にはまだわからない。
でも、私が、本当に兵士たちを本当に指揮できるのかしら。
もっと、みんなが信頼できる立派な人がいるのではと不安に押し潰されそうだった。
そんな不安を払拭するために、図書館にある戦略、戦史等の本を読み漁る。
特に、孫氏の兵法という本が一番、心に響いた。
実戦も大切だけど、何事も、知識はあった方がいい。
それでも不安に押しつぶされそうになり、眠れない夜が続く。
そんな中、耳を疑う情報が入ってきたの。
「陽葵、町田の兵士訓練場が爆破されたわ。」
「澪、私もさっき聞いた。どうも私たちの情報が敵に漏れているみたいね。最近、地球外生命体の施設を攻撃して、大勢の人間を逃しているから、地球外生命体たちも、必死で私たちのことを探してるんだと思う。この吉祥寺の図書館も危ないかも。」
「でも、AIとは遮断しているし、どうして情報が漏れるのかしら?」
陽葵は何か心当たりがあるのか、私から目線を外す。
「そうね。こんなこと考えたくはないけど、誰か、地球外生命体に情報を流している裏切者がいるかもしれないわ。」
「私も、そう思っていた。最近、妊婦を増やすために、この施設に大量の人間を収容し始めたけど、メンバーが増えると、1人ぐらいそんな人が出てもおかしくない。でも、人間なのに、人間を裏切るなんて、どういうことなのかしら。」
「魅力的な報酬を提示されたのかもね。まずは、この話しは澪と私だけの秘密にしましょう。それで、みんなを地球外生命体から守るためという名目で、しばらく、集団で個々のメンバーの行動記録をとることにするわ。怪しい動きをしている人はいないか確認するために。」
「わかった。」
1週間ほど経った頃、驚愕の情報がでてきた。
芽衣がAIチップを脳に入れ直したという情報。
最近、増やした妊婦達からではなく、私たちの当初発足メンバーから容疑者が見つかる。
そんなことは考えたこともなかった。
だって、同じ目的に向かって、これまで一緒に歩んできたじゃない。
しかも、芽衣とはずっと一緒にいたのに、全く気づかなかった。
たしかに芽衣からAIと連絡する電波が確認された。
そういえば、食料確保ということで、2カ月ぐらい前、芽衣は単独行動をしていた。
1週間ぐらいして戻ってきたとき、髪の毛の一部が抜けていた。
芽衣は、ストレスで毛が抜けたと笑っていたけど、あれは手術をしていたんだと思う。
そういえば、AIは地球外生命体が仕組んだものだと芽衣が話していたことを思い出した。
その時は、漠然と、どこから情報を得たのかと思っていただけだったけど。
おそらく、地球外生命体との会話から得た情報だったんだと思う。
芽衣は秘密主義の人。
考えていることを言わず、いつもはぐらかす。
笑顔で、社交的な姿に騙されてしまうけど、本当は何を考えているかわからない。
そういえば、こんなこともあり得ると疑っておくべきだった。
私も、翠も過酷な経験をして大きく変わった。
でも、芽衣は逃げてばかりで、何も変わっていなかったのかもしれない。
しかも、変わっていないことを周りに気づかれずにここまできた。
香水で体臭を隠すように、ずっと、自分を隠していたのだと思う。
芽衣にも、自分が変わることを教え、人類の明るい未来に向けて一緒に行動しないと。
芽衣に目を向けると、芽衣の目からは涙が流れる。
反省しているのかしら。
「芽衣、どういうことなの。」
「昔の豊かな生活に戻りたかったのよ。美味しいステーキ、優雅な旅行、観劇とかの娯楽、そういった楽しみがなくなって辛かったの。こんな汗まみれの貧しい生活なんて、もう嫌。澪だって、そう思わない?」
澪には分かってもらえないことは分かっている。
だって、泥まみれになっても、澪は人類を救うために最後まで諦めない人だもの。
私は、人類なんてどうでもいい。自分が楽しく生きることが重要なの。
私だって、子供の頃はこうすべきと考え、進んだこともある。
でも、みんながよってたかって私の意見を潰した。
もう、あんな惨めな思いはしたくないし、疲れた。
そのうち、自分の気持ちは隠し、誰にでも笑顔でいれば無難に過ごせることを学んだ。
グループのリーダーをよいしょしておけば、楽に生きていける。
澪みたく、理想が高い人はグループから除け者にされるけど、それは本人のせい。
私には関係がない。
私は可愛らしく振る舞い、装う。
そうすると、みんなは憧れの的のように見てくれることも学んだ。
それで十分じゃない。みんなが私のことを褒めて、仲良くしてくれる。
それが表面的なことだということぐらい、自分が一番知っている。
誰もが、うわべだけの褒め言葉で、私の本当の姿なんて見てもいないもの。
でも、そんなもんでしょう。本当の姿なんて、みんな醜いし。
人より上に行きたい、目障りな人を蹴落としたい。
そんな欲望にまみれているのが人間じゃない。
私は、そんな姿を見られたくないし、自分がそんなこと考えていることを認めたくもない。
また、表面的なことさえ褒めてもらえずに埋もれていく人なんていくらでもいる。
どんなことでも、いい意味で注目されたいの。
私のことを悪く言っている言葉なんて聞きたくない。
また、短くても楽しく生きる方がいいじゃない。
泥にまみれて長く生きるなんて嫌。
短い人生でも、毎日、ステーキやお菓子に囲まれて生きたい。
ただ、笑って楽して過ごしたい。
そんなにおかしいことじゃないでしょう。
私は、かわいい、かわいいと言われ、楽して生きたいだけ。
「でも、その先には殺されるのよ。」
「痛みもなく、知らない間に殺されるんでしょう。だったら、それもありなのかと思うの。どっちが幸せかといえば、短く楽しく生きる方がいい。長い辛くて貧しい生活なんて、もう嫌。」
「今の生活でも、楽しみはいっぱいある。子供を産んだ翠だって、毎日が幸せと言っていたじゃない。」
「いろいろな人がいるのよ。陽葵、自分の嗜好を私に押し付けないで。私は昔の生活がいいの。」
「でも、芽衣が情報を地球外生命体に流せば、私たちが目指す世界はなくなる。」
芽衣の考えは、あまりに私たちと違い、なかなか合意点を見いだせない。
このままでは、芽衣には一線から外れてもらい、AIチップを外して隔離するしかない。
「地球外生命体と話し合ってみようよ。」
「地球外生命体は私たちの施設を破壊し始めたのよ。話し合いなんてできるはずがない。」
「それは澪たちが、地球外生命体の施設を破壊したからよ。」
「私たちは、人間を地球外生命体から解放するために施設を破壊したの。地球外生命体は人間を殺すために施設を破壊した。これは全く違うことでしょう。」
「もう、私のことは放っといて。地球外生命体にこれ以上の情報を流すことはしないから。」
「それはできない。芽衣はそう思っていても、地球外生命体は芽衣に薬を打ち、情報を聞き出すと思う。」
「芽衣、悪いけど、脳からAIチップを外して隔離させてもらう。これまで、ここにいる人たちの衣服、食料の整備のリーダーをしてもらって感謝しているけど、ここまでね。その役割は他の人に引き継ぐから。」
「AIチップを外すのだけはやめて。」
その時だった。
陽葵がいきなり立ち上がり、ピストルで芽衣の頭を撃ち抜いた。
芽衣が座る椅子は後ろに倒れ、芽衣の頭からでる血は床を染める。
「陽葵、なんてことを。」
「個人の欲望で一回、裏切った人は、何度も裏切るの。そういう人は放置できない。こうするのが一番なのよ。」
陽葵の顔には、これまでの笑顔はなかった。
人類が自ら豊かに過ごせる世界を目指す冷徹なリーダーとしての陽葵がそこにいた。
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