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3話 自爆

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 眠ると入れ替わるのは分かった。そう、私は、ベットから起きて、今日は休みだったから、少し遠出して、昭和記念公園を歩いてみることにした。

 1人だったけど、本当に久しぶりの公園で、暖かい風を浴び、こんなに世の中は色に溢れているんだと気づいたの。噴水では水飛沫が上がり、その周りで子供たちは走り回っている。そして、新緑で溢れた木々は楽しそう。

 公園では、家族づれや男女のペアが多かった。グループで来て、マラソン大会みたいなことをやっている人達もいた。みんな、今の幸せを楽しんでいる。幸せの輪が重なり合い、どんどん大きくなって公園を包み込んでいるよう。どうして、これまで、こんなことが見えなかったんだろう。

 暖かい公園を歩いていると、体調も良くなってきた。そういえば、ここ数年、自分の家と学校を往復するだけで、学校以外は、ほとんど自分の部屋に閉じこもっていた。だから、時間とともに暗くなってしまったんだと思う。

 あのままだったら、電車のホームとかで身投げしていたかも。何かに取り憑かれていたのかもしれない。将来得られるかもしれない幸せを自分から捨てていたかもしれない。

 そうだった。気持ちを暗くしていたのは私だったのね。別にブラが盗まれたって、死ぬわけじゃない。そんなことで暗くなっていた私が馬鹿だった。もっと、この世の中を楽しまないと。

 友達も作ろう。クラスの人じゃなくたって、例えば、SNSとかで誰かと知り合ってもいい。気があえば、会って話せばいい。大切な時間を無駄にしてきちゃった。

 私は、昔、好きだった風景画を描き始め、インスタに投稿することにした。そうすると、1時間もしないうちに、いいねを何人もの人が押してくれた。そう、人とのつながりは学校だけじゃない。自分を変えるなんて、簡単なことだったのね。

 その晩は、笑顔のまま眠ることができた。

 そして、また目覚めると、また、あの避難所だった。ただ、リーダーが、とんでもないことを言い始めた。

「戦況は悪化するばかりだ。我々には、もう武器のエネルギーが底をついてきた。今、できることは、一人ひとりが、武器そのものになって、出来るだけ多くの敵を道連れにするしかない。まずは、それぞれがビームを出しながら、出来るだけ多くの敵がいるところに突撃し、そこで、この爆弾で自爆するんだ。ただ、納得できない人は離脱してもいい。無理強いはしない。どうだ、やってくれるか。」
「もう、それしかないんですね。もちろん、私も、みんなも、その作戦をやり抜きます。いいよな、みんな。」
「おー。」
「ありがとう。みんなで相互に援護射撃もして、敵に少しでも近づくんだ。分かったな。」
「はい。」

 なんということを言っているのだろう。ただ、みんなの目はキラキラと輝き、自分達の行動で、大切な人を守ろうと思っている気持ちが伝わってくる。みんなが、やってやるって大声で歓声をあげている。

 どうして、そんな気持ちになれるんだろう。でも、周りの男性たちの顔は、やる気と笑顔で満ち溢れていた。

 私は、死ぬと、どうなるんだろう。怖い。でも、そんなこと言える雰囲気ではなかった。男性って、すごいと思う。みんな、自分のこととか、余計なことは考えず、ゴールに向かって直進して、大切な人を守ろうとする力は、こんなこと言うのは変だけど、憧れてしまう。

 私も、平和な時代に男性に守られたかった。まだ、間に合うのかしら。わからないけど、みんなと一緒に戦場に向かった。

 敵は、これまでとは違い、突進してくる私たちに困惑しつつ、逃げ道を失い、大混乱となった。敵の世界では、自分を犠牲にして戦うという考えがなかったのかもしれない。

 各地で爆破があり、多くの敵を倒せたのは間違いないと思う。でも、私は、逃げたわけじゃないけど、突っ込むタイミングを逃し、生き延びてしまったの。そして、敵はほぼ壊滅して、避難所に戻った時、私たちは3人だけになっていた。

 そのうち1人は、手を吹き飛ばされたのか、血を流し、フラフラと戻ってきた。そして、仲間たちがみんな死んでしまい、自分達だけが生き残ってしまったことが申し訳なくて涙を流した。私は、その場で気分が悪くなり、倒れた。
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