4 / 6
4話 感染
しおりを挟む
1時間後にホテルから出発し、病院の建物に入る。
そこは悲劇が広がっていた。
廊下には歩けないぐらいの数の白骨遺体が重なる。
私たちは、仕方がないので、骨を踏みながら前に進んだ。
骨は思ったより柔らかく、踏み込むと粉々になる。
長い時間が経っていたからかもしれない。
廊下の先には、診察室のような部屋があり、棚の冷蔵庫には多くの試験管が並んでいる。
試験管には緑色の液体が入り、キャップがされ、冷蔵されているので液体のまま。
昨日の探索の様子では、この惑星の人達の血液なのだと思う。
病院にこれだけの人が押し寄せているとすれば、考えられるのは1つ。
なにかの感染症が蔓延したに違いない。
感染力が強く、あっという間に広がり、短時間で死に至ったのだと思う。
全ての生き物が死に、その後、宿主を失ったウィルスも死滅したとしか考えられない。
この部屋の椅子には、両腕を垂らした医者らしい白骨遺体が座る。
研究の末、何もできずに、自らも死に至ったのだと思う。
無念だったに違いない。
ただ、1つの不安が頭をよぎった。
これだけ地球と同じ環境なら、この感染症は私達にも襲いかかる。
この空中では死滅していても、病院なら、研究のためにウィルスは保管されているはず。
まずは、この病院からすぐに出た方がいい。
できるだけ、保管されたウィルスを放出してしまうリスクを避けるべき。
ただ、その場合でも、地震とかで、私達と関係なく放出してしまうリスクは残る。
人類の数を増やす長い時間の中で、どう対処すればいいのかしら。
病院は、立ち入り禁止エリアだと語り継ぐのかしら。
保管されたウイルスをどこか遠い所に輸送し、宇宙船のエンジンで焼き切るとか。
いずれにしても、そう簡単なことじゃない。
一つでも漏れがあれば、ここで死滅した生命体と同じ運命が待ち構えている。
そんなことを考えて、私が目を離しているときだった。
陽翔が冷蔵庫を開けて試験管を取り出していた。
「危ない。」
そう言った時だった。陽翔の手から1本の試験管が床に落ちる。
試験管は割れ、緑色の液体が飛び散った。
同時に腕に付けた装置が鳴り響く。
「危険、危険、みなさんはウィルスに感染しました。今から45分以内に、みなさんは死に至ります。この星にある宇宙船には治療キットは積みこまれていません。生き残るには、アンドロイドに脳を移植するしか方法はありません。」
警告は何度も鳴り響く。
「ごめん。なんていうことを。」
「そんなこと、どうでもいいから、早く宇宙船に戻り、アンドロイドに脳を移植しないと。」
私たちは、全速力で宇宙船に戻る。
私は、白骨遺体で転んでしまったけど、陽翔が手を差し伸べてくれて再び走り始める。
15分程して宇宙船に乗り込み、4人は移植のカプセルに入り込んだ。
移植開始ボタンを押したからもう大丈夫なはず。
横をみると4人とも、青いランプが付き、無事に移植が進んでいるみたい。
悠真は、私を見て笑顔で、新しい体で再会しようと言っているように見える。
私たちは、カプセルの中で、麻酔を打たれ、気が遠のいていく。
頭蓋骨から脳を取り出し、無数の糸の先にある針が芸術的に神経を紡いでいく。
外で見ていた人がいたら、その美しさに感動したに違いない。
気がつくと、私は薄ぼんやりと明るさだけを感じる。
まだ、神経が繋がるためには1週間はかかると思う。
だるいから、眠ることにしよう。
どのぐらい時間が経ったのかしら。少し、音も聞こえるようになった。
体には力が入らない。横を見ると、3人も動かない。
あと2日ぐらいかしら。眠たい。
私は、肩を叩かれて目が覚める。
「乃愛、そろそろ大丈夫みたいだけど、起きられる?」
一華が笑顔で笑いかけてくれている。
「この技術、本当にすごいわよね。顔も、脳を移植した人の顔に変わっているし、身長も同じぐらいになっている。どこからみても、乃愛にしか見えないわ。」
「そうね。この技術をマスターすれば永遠に生きられるのに、そこまでできていないのは残念。」
「仕方がないわ。限界というものもある。」
私は、このアンドロイドの問題点を知っている。
地球外生命体がスイッチを押すと、一定割合のアンドロイドが操られる。
その結果、周りの人々を殺害することもある。
そのスイッチはどこか判明していなし、地球外生命体は私達のことに気づいていないはず。
だから、このアンドロイドを操作するなんて事態にはならないと思う。
だから、みんなにはこのことは言わないでおく。
不安にさせることもないし、疑心暗鬼になればチームの連帯感も損なわれる。
「陽翔と悠真を起こそうか。」
「そうね。悠真、起きて。」
声をかけられた2人の男性も、眠たそうに起き始める。
4人は、陽が照りつける宇宙船の外に1週間ぶりに出る。
まるで、1週間前の4人がそのまま歩いているようで、不思議な感覚。
波が一定周期で寄せる砂浜。
ヤシの木から、暖かい陽の光が漏れる。
昨日と何も変わらない。ウィルスがあたりを漂っているだけ。
でも、そのウィルスも宿主がいない今では、そのうち死滅すると思う。
しかも、このアンドロイドの体で、子作りはできると聞いている。
ただ、ウィルスがどのぐらいで死滅するかを調べ、その後に子作りをすることになる。
産まれた子供は普通の人間だから、アンドロイドがなくても繁殖していけるはず。
ただ、さっき、私が考えたリスクは排除しておかなければいけない。
だから、ウィルスに感染しないこの体で、保管された全てのウィルスを排除しておく。
それが、当面の私達のやること。この星には大量の病院がある。
でも、想像していたよりも遥かに体調はよく、気持ちはいい。
力がみなぎり、なんでもできそうな気持ちがする。
しかも、アンドロイドだから、生きていける時間は500年ぐらいで、時間はたっぷりある。
私の計画を伝え、みんなも同意する。
その晩も、豪華な食べ物、お酒で私たちの再起を願った。
人類のDNAがこの星で根付き、人類が繁栄するために。
リクライ人ングベッドに横たわりながら、食後に4人は、海辺から星空を見ていた。
賑わいの後の静けさを波の音が演出する。
この4人で、この惑星で人類を繁栄させていく責任を噛み締めていた。
「陽翔は、地球陸軍での体力測定では歴代一位の成績をだしたのよね。あの日のこと思い出しちゃった。」
「そうだったっけ。」
「忘れたの? まだ、完全にアンドロイドに定着していないのかな。しっかりしてね。」
「ああ。そういえば、明日、別の建物を調べに行きたいから、だれか一緒に来てくれないか。」
眠そうにしていた陽翔が唐突に話し始めた。
「何を調べたいの?」
「まだ自信がないから、この時点では秘密にさせて。」
「なんか、慎重すぎて陽翔らしくないわね。」
「なんかバカにしていないか?」
陽翔と一華が笑いながら、お互いに茶化している。
その中に入るのを躊躇いながら、悠真が答えた。
「僕だったら同行できる。」
「陽翔、ごめん、私は研究をしたいことがあって、宇宙船にずっといるから同行できない。」
「私も。武器の手入れをしないとだから、悠真と2人で行ってきて。」
「わかった、そうする。」
ビーチで静かな波の音を聞いて4人は眠りにつく。
翌日、陽翔と悠真は2人で出かけ、悠真は帰ってこないなんて思うこともなく。
そこは悲劇が広がっていた。
廊下には歩けないぐらいの数の白骨遺体が重なる。
私たちは、仕方がないので、骨を踏みながら前に進んだ。
骨は思ったより柔らかく、踏み込むと粉々になる。
長い時間が経っていたからかもしれない。
廊下の先には、診察室のような部屋があり、棚の冷蔵庫には多くの試験管が並んでいる。
試験管には緑色の液体が入り、キャップがされ、冷蔵されているので液体のまま。
昨日の探索の様子では、この惑星の人達の血液なのだと思う。
病院にこれだけの人が押し寄せているとすれば、考えられるのは1つ。
なにかの感染症が蔓延したに違いない。
感染力が強く、あっという間に広がり、短時間で死に至ったのだと思う。
全ての生き物が死に、その後、宿主を失ったウィルスも死滅したとしか考えられない。
この部屋の椅子には、両腕を垂らした医者らしい白骨遺体が座る。
研究の末、何もできずに、自らも死に至ったのだと思う。
無念だったに違いない。
ただ、1つの不安が頭をよぎった。
これだけ地球と同じ環境なら、この感染症は私達にも襲いかかる。
この空中では死滅していても、病院なら、研究のためにウィルスは保管されているはず。
まずは、この病院からすぐに出た方がいい。
できるだけ、保管されたウィルスを放出してしまうリスクを避けるべき。
ただ、その場合でも、地震とかで、私達と関係なく放出してしまうリスクは残る。
人類の数を増やす長い時間の中で、どう対処すればいいのかしら。
病院は、立ち入り禁止エリアだと語り継ぐのかしら。
保管されたウイルスをどこか遠い所に輸送し、宇宙船のエンジンで焼き切るとか。
いずれにしても、そう簡単なことじゃない。
一つでも漏れがあれば、ここで死滅した生命体と同じ運命が待ち構えている。
そんなことを考えて、私が目を離しているときだった。
陽翔が冷蔵庫を開けて試験管を取り出していた。
「危ない。」
そう言った時だった。陽翔の手から1本の試験管が床に落ちる。
試験管は割れ、緑色の液体が飛び散った。
同時に腕に付けた装置が鳴り響く。
「危険、危険、みなさんはウィルスに感染しました。今から45分以内に、みなさんは死に至ります。この星にある宇宙船には治療キットは積みこまれていません。生き残るには、アンドロイドに脳を移植するしか方法はありません。」
警告は何度も鳴り響く。
「ごめん。なんていうことを。」
「そんなこと、どうでもいいから、早く宇宙船に戻り、アンドロイドに脳を移植しないと。」
私たちは、全速力で宇宙船に戻る。
私は、白骨遺体で転んでしまったけど、陽翔が手を差し伸べてくれて再び走り始める。
15分程して宇宙船に乗り込み、4人は移植のカプセルに入り込んだ。
移植開始ボタンを押したからもう大丈夫なはず。
横をみると4人とも、青いランプが付き、無事に移植が進んでいるみたい。
悠真は、私を見て笑顔で、新しい体で再会しようと言っているように見える。
私たちは、カプセルの中で、麻酔を打たれ、気が遠のいていく。
頭蓋骨から脳を取り出し、無数の糸の先にある針が芸術的に神経を紡いでいく。
外で見ていた人がいたら、その美しさに感動したに違いない。
気がつくと、私は薄ぼんやりと明るさだけを感じる。
まだ、神経が繋がるためには1週間はかかると思う。
だるいから、眠ることにしよう。
どのぐらい時間が経ったのかしら。少し、音も聞こえるようになった。
体には力が入らない。横を見ると、3人も動かない。
あと2日ぐらいかしら。眠たい。
私は、肩を叩かれて目が覚める。
「乃愛、そろそろ大丈夫みたいだけど、起きられる?」
一華が笑顔で笑いかけてくれている。
「この技術、本当にすごいわよね。顔も、脳を移植した人の顔に変わっているし、身長も同じぐらいになっている。どこからみても、乃愛にしか見えないわ。」
「そうね。この技術をマスターすれば永遠に生きられるのに、そこまでできていないのは残念。」
「仕方がないわ。限界というものもある。」
私は、このアンドロイドの問題点を知っている。
地球外生命体がスイッチを押すと、一定割合のアンドロイドが操られる。
その結果、周りの人々を殺害することもある。
そのスイッチはどこか判明していなし、地球外生命体は私達のことに気づいていないはず。
だから、このアンドロイドを操作するなんて事態にはならないと思う。
だから、みんなにはこのことは言わないでおく。
不安にさせることもないし、疑心暗鬼になればチームの連帯感も損なわれる。
「陽翔と悠真を起こそうか。」
「そうね。悠真、起きて。」
声をかけられた2人の男性も、眠たそうに起き始める。
4人は、陽が照りつける宇宙船の外に1週間ぶりに出る。
まるで、1週間前の4人がそのまま歩いているようで、不思議な感覚。
波が一定周期で寄せる砂浜。
ヤシの木から、暖かい陽の光が漏れる。
昨日と何も変わらない。ウィルスがあたりを漂っているだけ。
でも、そのウィルスも宿主がいない今では、そのうち死滅すると思う。
しかも、このアンドロイドの体で、子作りはできると聞いている。
ただ、ウィルスがどのぐらいで死滅するかを調べ、その後に子作りをすることになる。
産まれた子供は普通の人間だから、アンドロイドがなくても繁殖していけるはず。
ただ、さっき、私が考えたリスクは排除しておかなければいけない。
だから、ウィルスに感染しないこの体で、保管された全てのウィルスを排除しておく。
それが、当面の私達のやること。この星には大量の病院がある。
でも、想像していたよりも遥かに体調はよく、気持ちはいい。
力がみなぎり、なんでもできそうな気持ちがする。
しかも、アンドロイドだから、生きていける時間は500年ぐらいで、時間はたっぷりある。
私の計画を伝え、みんなも同意する。
その晩も、豪華な食べ物、お酒で私たちの再起を願った。
人類のDNAがこの星で根付き、人類が繁栄するために。
リクライ人ングベッドに横たわりながら、食後に4人は、海辺から星空を見ていた。
賑わいの後の静けさを波の音が演出する。
この4人で、この惑星で人類を繁栄させていく責任を噛み締めていた。
「陽翔は、地球陸軍での体力測定では歴代一位の成績をだしたのよね。あの日のこと思い出しちゃった。」
「そうだったっけ。」
「忘れたの? まだ、完全にアンドロイドに定着していないのかな。しっかりしてね。」
「ああ。そういえば、明日、別の建物を調べに行きたいから、だれか一緒に来てくれないか。」
眠そうにしていた陽翔が唐突に話し始めた。
「何を調べたいの?」
「まだ自信がないから、この時点では秘密にさせて。」
「なんか、慎重すぎて陽翔らしくないわね。」
「なんかバカにしていないか?」
陽翔と一華が笑いながら、お互いに茶化している。
その中に入るのを躊躇いながら、悠真が答えた。
「僕だったら同行できる。」
「陽翔、ごめん、私は研究をしたいことがあって、宇宙船にずっといるから同行できない。」
「私も。武器の手入れをしないとだから、悠真と2人で行ってきて。」
「わかった、そうする。」
ビーチで静かな波の音を聞いて4人は眠りにつく。
翌日、陽翔と悠真は2人で出かけ、悠真は帰ってこないなんて思うこともなく。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる