6 / 6
6話 人類の最後
しおりを挟む
私は目をつぶったけど、まだ死んでいない。
ゆっくりと目をあけると、頭が撃ち抜かれた陽翔が床に倒れていた。
その先に、銃口をおろした一華が立っている。
「乃愛、大丈夫? 陽翔が怪しいと監視していたの。その時、2人で部屋に入っていくから、乃愛が危ないと思って、後ろを付けていた。」
私は、ほっとしたのか床に倒れてしまった。
「ごめんなさい。実は、アンドロイドの一部は、地球外生命体に操られるというデータがあって、黙っていたの。疑心暗鬼にさせるのはいけないと思って。」
「そうなのね。私も、陽翔と乃愛がグルで、私を殺そうとしていると疑っていたからおあいこね。でも、そうなると私や乃愛が、これから地球外生命体に操られることもあり得るってことね。」
「可能性はゼロじゃない。でも、確率は低いと思う。地球での検査では10体で1つの確率だったし、今回は4体のうち1体はそうであれば3体は大丈夫のはず。」
「それを聞いて安心した。じゃあ、陽翔の体を調べて、体を操る仕組みを調べてもらえないかしら。」
「わかった。また、万全をきすためにも、地球外生命体は絶滅しておく方がいいから、その方策も考えてみる。」
私は、一華を見つめ、悲痛な思いを告げた。
「でも、これで、私たちの使命は果たせなくなってしまったわね。」
「それも、運命だったの。その意味では、アンドロイドの精巣だけでも機能させることはできないかしら。」
「そういう方法もあったわね。考えてみる。」
一華が前向きなのなら、これから何かの代替案は見つかるかもしれない。
この体で子供を産まなくても、DNAから子供を生み出せるかもしれない。
固定観念に囚われて、自分の使命を自ら諦めるところだった。
ところで、体を操る仕組みが分かっても、スイッチを動作させないことはできるのかしら。
動作させないためには、地球外生命体を絶滅しておく方がいいのは明らか。
でも、地球外生命体の居場所が分かっても、この惑星には攻撃できる武器はない。
何ができるのかしら。乃愛、考えなさい。
悩んでいても進まないから、まず、陽翔の体を調べることにした。
脳髄の後ろに発信機が見つかり、この惑星の位置をどこに連絡したのかわかる。
驚いたことに、13もの惑星に情報を発信していた。
敵は13もの惑星に住んでいるのだと思う。そうすると、全てを攻撃するのも難しい。
ただ、敵が分散していることは問題ではないと一華が言う。
地球では、物質瞬間移動の技術があり、惑星を破壊できる武器があればいい。
2人は、物質瞬間移動装置の開発に着手した。
テクノロジーとしてはすでに分かっているので、製造することは簡単だった。
一番難しかったのは、惑星を破壊するだけの爆弾。
この星では、火薬の材料を見つけられておらず、爆弾を作れない。
そこで、宇宙に散在するブラックホールを各惑星に向けることにした。
ブラックホールの重量から瞬間移動は難しいと最初は思っていた。
でも、少し重力を傾けるだけで、容易に移動できることが判明する。
それができるのであれば、13の惑星をこの2人で攻撃することができる。
攻撃できれば、私達が万が一にも、地球外生命体に支配されることはない。
一華と私は、すぐに物質瞬間移動装置の開発に取り掛かる。
3ヶ月もかからずに装置ができた。
一華とは、その晩、成功を祈り、一緒にワインで乾杯をする。
この作戦が成功すれば、地球外生命体に自分たちが支配されることはなくなる。
そうすれば、まだ若いのだから、いろいろな方策は見えてくるはず。
ミロの期待にも応えられる日が来る。
お互い、久しぶりに大笑いをして夜を過ごした。
一華は、本当に素直で、真っ直ぐで、いい子。
私も、こんな女性になりたいと思う程、邪心とかない。
しかも、1つのゴールに向かって直線を引いて真っ直ぐに進む力を持っている。
この人とだったら、なんでも達成できそうな気持ちにさせてくれる。
悠真や陽翔と出会えたのも良かったけど、一華と会えたのは奇跡かもしれない。
これからも、ずっと一華を大切にしていこう。
それが、私の幸せに繋がると思う。
翌朝、1つ目のブラックホールを1番目の惑星に移動するよう装置を操作する。
これで、敵は1つ減る。恐怖に慄き、地球人は侮れないことを知るはず。
私は装置を動かした。
それから1分程経ち、とんでもないことが起きていることに気づく。
この星のあらゆるものが宇宙に吸い込まれていく。
空を見上げると、真っ黒な穴が空いていた。
私が移動させたブラックホールがこの上空にある。
敵も、ブラックホールを送り込んでくることを予見していたんだと思う。
だから、ミラーのように、私の方に移動するように仕向けたに違いない。
そうやって、私がブラックホールを自分たちに向けて移動させることを妨害した。
単純な考えで進んでしまった自分を責める。
物質瞬間移動装置で一度は被害を受けていたんだから、対策を講じていてもおかしくない。
今からできることは何もない。
この星は、すべてブラックホールに吸い込まれていった。
最初はものすごい力で引っ張られる。
そして、周りが真っ暗になった時、時間が歪んだと思う。
時間はゆっくり進み、体が押しつぶされる時間を永遠に苦しむことになる。
これで、地球の人類のDNAも途絶えてしまう。
また、宇宙には数少ないこんなに美しい惑星を私は壊してしまった。
浅はかな知識で勝てると思っていた私がバカだった。
地球で昔聞いたウィルスを忍び込ませエネルギー源を破壊した方が良かったかもしれない。
歓喜の渦が沸く地球外生命体の姿が見える。
地球人はバカな生命体だとニヤけて笑い飛ばしているに違いない。
どこで失敗したのだろう。
おそらく、軌道計算するときに、この体が操られていたのだと思う。
敵の方が一枚上手だったということだけ。
ごめんなさい。私の力が及ばず。
横では一華が悲鳴をあげ、苦しんでいる。
私は、暗闇の中で、永遠に続く苦痛に耐えていた。
人類の最後となることをお互いに認めざるを得ない悔しさを噛み締めながら。
ゆっくりと目をあけると、頭が撃ち抜かれた陽翔が床に倒れていた。
その先に、銃口をおろした一華が立っている。
「乃愛、大丈夫? 陽翔が怪しいと監視していたの。その時、2人で部屋に入っていくから、乃愛が危ないと思って、後ろを付けていた。」
私は、ほっとしたのか床に倒れてしまった。
「ごめんなさい。実は、アンドロイドの一部は、地球外生命体に操られるというデータがあって、黙っていたの。疑心暗鬼にさせるのはいけないと思って。」
「そうなのね。私も、陽翔と乃愛がグルで、私を殺そうとしていると疑っていたからおあいこね。でも、そうなると私や乃愛が、これから地球外生命体に操られることもあり得るってことね。」
「可能性はゼロじゃない。でも、確率は低いと思う。地球での検査では10体で1つの確率だったし、今回は4体のうち1体はそうであれば3体は大丈夫のはず。」
「それを聞いて安心した。じゃあ、陽翔の体を調べて、体を操る仕組みを調べてもらえないかしら。」
「わかった。また、万全をきすためにも、地球外生命体は絶滅しておく方がいいから、その方策も考えてみる。」
私は、一華を見つめ、悲痛な思いを告げた。
「でも、これで、私たちの使命は果たせなくなってしまったわね。」
「それも、運命だったの。その意味では、アンドロイドの精巣だけでも機能させることはできないかしら。」
「そういう方法もあったわね。考えてみる。」
一華が前向きなのなら、これから何かの代替案は見つかるかもしれない。
この体で子供を産まなくても、DNAから子供を生み出せるかもしれない。
固定観念に囚われて、自分の使命を自ら諦めるところだった。
ところで、体を操る仕組みが分かっても、スイッチを動作させないことはできるのかしら。
動作させないためには、地球外生命体を絶滅しておく方がいいのは明らか。
でも、地球外生命体の居場所が分かっても、この惑星には攻撃できる武器はない。
何ができるのかしら。乃愛、考えなさい。
悩んでいても進まないから、まず、陽翔の体を調べることにした。
脳髄の後ろに発信機が見つかり、この惑星の位置をどこに連絡したのかわかる。
驚いたことに、13もの惑星に情報を発信していた。
敵は13もの惑星に住んでいるのだと思う。そうすると、全てを攻撃するのも難しい。
ただ、敵が分散していることは問題ではないと一華が言う。
地球では、物質瞬間移動の技術があり、惑星を破壊できる武器があればいい。
2人は、物質瞬間移動装置の開発に着手した。
テクノロジーとしてはすでに分かっているので、製造することは簡単だった。
一番難しかったのは、惑星を破壊するだけの爆弾。
この星では、火薬の材料を見つけられておらず、爆弾を作れない。
そこで、宇宙に散在するブラックホールを各惑星に向けることにした。
ブラックホールの重量から瞬間移動は難しいと最初は思っていた。
でも、少し重力を傾けるだけで、容易に移動できることが判明する。
それができるのであれば、13の惑星をこの2人で攻撃することができる。
攻撃できれば、私達が万が一にも、地球外生命体に支配されることはない。
一華と私は、すぐに物質瞬間移動装置の開発に取り掛かる。
3ヶ月もかからずに装置ができた。
一華とは、その晩、成功を祈り、一緒にワインで乾杯をする。
この作戦が成功すれば、地球外生命体に自分たちが支配されることはなくなる。
そうすれば、まだ若いのだから、いろいろな方策は見えてくるはず。
ミロの期待にも応えられる日が来る。
お互い、久しぶりに大笑いをして夜を過ごした。
一華は、本当に素直で、真っ直ぐで、いい子。
私も、こんな女性になりたいと思う程、邪心とかない。
しかも、1つのゴールに向かって直線を引いて真っ直ぐに進む力を持っている。
この人とだったら、なんでも達成できそうな気持ちにさせてくれる。
悠真や陽翔と出会えたのも良かったけど、一華と会えたのは奇跡かもしれない。
これからも、ずっと一華を大切にしていこう。
それが、私の幸せに繋がると思う。
翌朝、1つ目のブラックホールを1番目の惑星に移動するよう装置を操作する。
これで、敵は1つ減る。恐怖に慄き、地球人は侮れないことを知るはず。
私は装置を動かした。
それから1分程経ち、とんでもないことが起きていることに気づく。
この星のあらゆるものが宇宙に吸い込まれていく。
空を見上げると、真っ黒な穴が空いていた。
私が移動させたブラックホールがこの上空にある。
敵も、ブラックホールを送り込んでくることを予見していたんだと思う。
だから、ミラーのように、私の方に移動するように仕向けたに違いない。
そうやって、私がブラックホールを自分たちに向けて移動させることを妨害した。
単純な考えで進んでしまった自分を責める。
物質瞬間移動装置で一度は被害を受けていたんだから、対策を講じていてもおかしくない。
今からできることは何もない。
この星は、すべてブラックホールに吸い込まれていった。
最初はものすごい力で引っ張られる。
そして、周りが真っ暗になった時、時間が歪んだと思う。
時間はゆっくり進み、体が押しつぶされる時間を永遠に苦しむことになる。
これで、地球の人類のDNAも途絶えてしまう。
また、宇宙には数少ないこんなに美しい惑星を私は壊してしまった。
浅はかな知識で勝てると思っていた私がバカだった。
地球で昔聞いたウィルスを忍び込ませエネルギー源を破壊した方が良かったかもしれない。
歓喜の渦が沸く地球外生命体の姿が見える。
地球人はバカな生命体だとニヤけて笑い飛ばしているに違いない。
どこで失敗したのだろう。
おそらく、軌道計算するときに、この体が操られていたのだと思う。
敵の方が一枚上手だったということだけ。
ごめんなさい。私の力が及ばず。
横では一華が悲鳴をあげ、苦しんでいる。
私は、暗闇の中で、永遠に続く苦痛に耐えていた。
人類の最後となることをお互いに認めざるを得ない悔しさを噛み締めながら。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる