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アイ・ウィル・ネバー・フォーゲット
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「ミキコ。。落ち着いて聞いてくれ……えらい事になっちまった」
昨夜の大雨で母の家が土砂崩れに巻き込まれたと、離れて暮らす父から連絡がきた。
私は慌てて飛び起き、隣県の母の家へと車を飛ばす。
どうか……どうか無事でいて……
ー翌日ー
私の願いは虚しくも届かず。
家を押し潰した土砂の中で母は遺体となって発見された。
レスキュー隊が身元確認の為に私と父を呼ぶ。その光景は多分……いや絶対に忘れる事は出来ないだろう。
母は手にしっかりと携帯を握りしめていた。最後まで諦めずに、助けを呼ぼうとしていた筈だ。そんな母の遺体を見て私は溢れ出す涙を止める事が出来ない。
「間違いありません……妻です……」
「なんでこんな事に……」と父は言う。
夫婦の在り方は多種多様となる今日。
父と母は離婚という選択はせずに離れて暮らしていた。父は私の産まれ育った実家に、母は自分の産まれ育った在所にと、まぁ元を正せば母の父、私の祖父の介護がきっかけだったのだが……祖父が亡くなってからも母は1人在所で暮らしていたのだ。
「だから言わんこっちゃない……」と父は拳を握りしめ、震える声で呟いた。
私はそんな父を見て また涙が止まらなく 溢れ出すのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからは母を送り出す準備に色々と忙しくて、悲しんでいる時間はあまりにも無かった。
ようやく一息つけたのは、葬儀が終わり、火葬場から母の遺骨を持って実家へと戻って来てからだ。
「はぁ…………疲れた…………」
父は母の遺骨を仏壇に供えて徐に線香へと火を付ける。
「ちょっと寝ていい?」と私
「あーー……部屋はそのままにしてあるから」と父は言った。
高校を卒業して早3年。県外への就職が決まり、私は実家を出たのだが、父の言う通り、私の部屋はあの頃と何も変わっていない。
いや、あの頃よりも若干と綺麗か……いつでも私が帰れる様にと、父が毎日の様に掃除をしてくれていた事が伺えた。
ベットにゴロンと横になると、ジワジワと母の事が頭に浮かんで来て、また涙が溢れ出す。
『リリーーン!リリリーーン!』
私の携帯が私を呼んでいる。誰??と思って画面を見ると……
画面にはなんと母親の名前……
え?なんで?と思った。
だって……母の携帯はあの土砂の中でバリバリに割れて壊れていたのだから。
「もしもし……」と恐る恐る電話に出てみると、
「あっもしもしーーミキコー??
どうしたのあんた??そんな怖い声出しちゃって」
と元気な明るい声で母が話す。
え?なんで?でも確かに確かにだ。間違えるはずもなく、確かにこの声は私の母だ。
「え?なんで?」と考える前に口走る私。
「え?なんで?って何よ!そんな事よりミキコあんた今度いつ帰って来るのよ?」
「え?うん……」
「うんってあんた いつかを教えてくれないと、こっちも予定があるんだから」
頭の整理がつかないまま母のマシンガントークが炸裂し、私はうんうんと聞きながら、
そうか……これはきっと神様がくれた母との最後の時間なんだ……と解釈した。
「ゴロゴロドーン!!」
「ひぃぃぃ」と母「何?」と私。
「雷!雷よ!どっかに落ちたんじゃないかしら?」
「待って!!そっちって今大雨??」
「そうそう大雨よ。大雨……大雨特別警報って奴??出てるわよ」
「待って待って!!ちょっと待って!!」
「何よ?」
「今日って何日??」
「今日??今日は9日に決まってるでしょ?」
私は9日と聞いてすぐさま叫ぶ。
「お母さん!!!!今すぐそこから逃げて!!!」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
「え?何かしら?何か変な音がするわね」
「お母さん!!早く!!早く!!逃げて!!」
「あっダメだ」
「ガジャンガッグググガッゴッブーーーガッ」
ツーーーツーーーツーーーツーーー……
電話はそこで切れました。
あれ以来 母から電話はかかって来ません。
私はいつも思うのです。私がもっと早くに気が付いて、母に避難を呼びかけてさえいればと。
だけどもこうも思うのです。それが出来ていたら、母は助かった訳であって、そうしたらアベコベの世界が出来上がってしまうなと。
どちらにせよ……
母の最後の言葉
あっダメだ は、
母が最後に見た光景が、絶望的なモノであったと想像出来て、私はそれを想うと胸が張り裂けそうになるのです。
昨夜の大雨で母の家が土砂崩れに巻き込まれたと、離れて暮らす父から連絡がきた。
私は慌てて飛び起き、隣県の母の家へと車を飛ばす。
どうか……どうか無事でいて……
ー翌日ー
私の願いは虚しくも届かず。
家を押し潰した土砂の中で母は遺体となって発見された。
レスキュー隊が身元確認の為に私と父を呼ぶ。その光景は多分……いや絶対に忘れる事は出来ないだろう。
母は手にしっかりと携帯を握りしめていた。最後まで諦めずに、助けを呼ぼうとしていた筈だ。そんな母の遺体を見て私は溢れ出す涙を止める事が出来ない。
「間違いありません……妻です……」
「なんでこんな事に……」と父は言う。
夫婦の在り方は多種多様となる今日。
父と母は離婚という選択はせずに離れて暮らしていた。父は私の産まれ育った実家に、母は自分の産まれ育った在所にと、まぁ元を正せば母の父、私の祖父の介護がきっかけだったのだが……祖父が亡くなってからも母は1人在所で暮らしていたのだ。
「だから言わんこっちゃない……」と父は拳を握りしめ、震える声で呟いた。
私はそんな父を見て また涙が止まらなく 溢れ出すのだ。
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それからは母を送り出す準備に色々と忙しくて、悲しんでいる時間はあまりにも無かった。
ようやく一息つけたのは、葬儀が終わり、火葬場から母の遺骨を持って実家へと戻って来てからだ。
「はぁ…………疲れた…………」
父は母の遺骨を仏壇に供えて徐に線香へと火を付ける。
「ちょっと寝ていい?」と私
「あーー……部屋はそのままにしてあるから」と父は言った。
高校を卒業して早3年。県外への就職が決まり、私は実家を出たのだが、父の言う通り、私の部屋はあの頃と何も変わっていない。
いや、あの頃よりも若干と綺麗か……いつでも私が帰れる様にと、父が毎日の様に掃除をしてくれていた事が伺えた。
ベットにゴロンと横になると、ジワジワと母の事が頭に浮かんで来て、また涙が溢れ出す。
『リリーーン!リリリーーン!』
私の携帯が私を呼んでいる。誰??と思って画面を見ると……
画面にはなんと母親の名前……
え?なんで?と思った。
だって……母の携帯はあの土砂の中でバリバリに割れて壊れていたのだから。
「もしもし……」と恐る恐る電話に出てみると、
「あっもしもしーーミキコー??
どうしたのあんた??そんな怖い声出しちゃって」
と元気な明るい声で母が話す。
え?なんで?でも確かに確かにだ。間違えるはずもなく、確かにこの声は私の母だ。
「え?なんで?」と考える前に口走る私。
「え?なんで?って何よ!そんな事よりミキコあんた今度いつ帰って来るのよ?」
「え?うん……」
「うんってあんた いつかを教えてくれないと、こっちも予定があるんだから」
頭の整理がつかないまま母のマシンガントークが炸裂し、私はうんうんと聞きながら、
そうか……これはきっと神様がくれた母との最後の時間なんだ……と解釈した。
「ゴロゴロドーン!!」
「ひぃぃぃ」と母「何?」と私。
「雷!雷よ!どっかに落ちたんじゃないかしら?」
「待って!!そっちって今大雨??」
「そうそう大雨よ。大雨……大雨特別警報って奴??出てるわよ」
「待って待って!!ちょっと待って!!」
「何よ?」
「今日って何日??」
「今日??今日は9日に決まってるでしょ?」
私は9日と聞いてすぐさま叫ぶ。
「お母さん!!!!今すぐそこから逃げて!!!」
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
「え?何かしら?何か変な音がするわね」
「お母さん!!早く!!早く!!逃げて!!」
「あっダメだ」
「ガジャンガッグググガッゴッブーーーガッ」
ツーーーツーーーツーーーツーーー……
電話はそこで切れました。
あれ以来 母から電話はかかって来ません。
私はいつも思うのです。私がもっと早くに気が付いて、母に避難を呼びかけてさえいればと。
だけどもこうも思うのです。それが出来ていたら、母は助かった訳であって、そうしたらアベコベの世界が出来上がってしまうなと。
どちらにせよ……
母の最後の言葉
あっダメだ は、
母が最後に見た光景が、絶望的なモノであったと想像出来て、私はそれを想うと胸が張り裂けそうになるのです。
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