ちょっとハッとする話

狼少年

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パジャマを裏返しに着たらどうなるよ?

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「パジャマをね。
パジャマを着たの。裏表逆に。間違えちゃって。
そしたらさ……何が起こった思う?」


そんな質問をしてきた彼女は、大学2年の時に出来た友人だ。
あまり目立つタイプでは無く、自分から率先して話をする人では無かった。
俺と彼女は丁度同じ講義を3つも4つも取っていて、俺の記憶が確かなら俺から彼女に話しかけたと思う。
それから何だかんだと彼女を見かける度に、
「よっ!!」
「おっす!!」
「おはよう!!」
などと、声をかけ、階段教室の隣の席で講義を受ける間柄になった。

「パジャマをね。
パジャマを着たの。裏表逆に。間違えちゃって。
そしたら……何が起こったと思う?」

唐突な質問に俺は何の事だか。。と思って聞き返す。

「何それ?」

「んーーん?
 あっやっぱいいや。何でも無い」

そう彼女は話を濁し、この講義つまらないね。必修じゃ無いのに……ミスったな。
と、苦笑いをした。

「気になるなぁ。何だよそれ?」

俺は彼女に詰め寄るも、

「いいって。いいって。忘れてよ」

いつもそうだ。その答え。彼女の答えは決まってそれ!俺は気になり何度か聞いたんだ。

「パジャマ逆に着たらどうなったの?」

「忘れてよ」

考えてみれば変な質問だな。普通は

(あっ間違えた…面倒くさ)

くらいだろ。。
それとも何か?
見えもしないモノが見えるようになっただとか……
時間が戻って、私、実は未来人なんですとか……
考え過ぎか馬鹿馬鹿しい。。




                              ☆☆



夏が過ぎ、秋を通り越して、冬が来て、コンコンと白い雪が降り積もり、
教室の窓の外には長いツララが何本か出来ている。

「寒いなぁ……」

階段教室の1番上の席だ。そこが彼女の指定席。順を追って見上げて行くと、やっぱり彼女はそこに座っていた。

「よ!!寒いなぁ……」

「おはよう!寒いねぇ……」

俺は彼女の横に座り黙々と講義を受けていた。

「ねぇ!あの質問の答えわかった?」

またも唐突……

「質問??」

その頃にはもう何の質問の事やら、記憶の片隅に追いやられて、彼女にもう一度質問されるまで、そんな事などは忘れていた。

「パジャマをね。裏表逆に着たの。

 そしたら……何が起こったと思う?」

あぁそうだ…そうだ!!思い出した!!
変な質問されてたわ。

「あぁその質問ね!俺が何回も聞いたのに、教えてくれなかったじゃないか、答え。
 
 忘れてよって……言うから
言われた通りに忘れてたわ」

    俺、 笑う。

「そ……」
      、
 教室の窓の外には、ドス黒い雪雲が広がりチラホラと粉雪が舞い始めていた。
それが背景だ。その背景を背負って、
彼女は
   
  「まだ 。…わかって無いんだ。
     
         ね……」

意味深な答え。呟く彼女に、

「何が??」と聞き返す。

「しょうがないなぁ。。まだ気付いて無いなら教えてあげるよ。
 
 パジャマを裏表逆に着たらね。
   『生き返ったんだよ』」


                          


                           え????

何故……気が付か無かった??
俺は今まで何を見ていた??

その瞬間、彼女の着ている服がパジャマだと認識した。
しかも…………

      裏表逆だ。

俺は怖くなり。
講義中だ。でも関わらず、
    『ガタンッ!!』
と席を立つ。

前の席の学生達がこちらを一瞥し、不思議がっていたが、何事も無かったかの様にまた講義を受け続ける。



   「待って!!待って!!
    え??嘘でしょ??」

驚いた様に彼女は笑った。



       ☆☆



年が明けまして、おめでとうごさいます。
久しぶりに良い天気、青空が広がり、太陽サンサンが降り積もった雪達を溶かします。

大学の階段教室の窓の外の長めのツララの、
 
      水滴が、

ポタポタと滴り落ちる今日の午後。

それを2人で眺める。
お揃いのパジャマ。
裏表逆で。

俺と彼女の大学生活がもうすぐ終わりそうです。

    







  
















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