たばこ

ともえどん

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たばこ

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 連なる街灯の導く先は、古ぼけたアーケード街だった。シャッターが左右を閉めた。夕日が後ろに影を伸ばした。
 ポケットからタバコを取ろうとすると、空箱だった。田島はそのまま握りつぶし、少し歩くと、自動販売機がぼんやりと灯っているのを見つけた。顔を青白く染めながらセブンスターを探すが、見つからなかった。腹いせに蹴飛ばすと、がたがたと鳴って、マイルドセブンとチェリーが取り出し口に落ちてきた。拾い上げてポケットに入れると、肩を叩かれた。警官だった。
「見てたよ。おたく、お金払ってないでしょう」
 訝る警官の背後、自動販売機の隣は交番であった。ありゃ、とおどけた田島は、そのまま俯いた。
「れっきとした窃盗罪だよ。ちょっと着いてきて」
 ポケットの左手を掴まれると、田島は警官を殴り飛ばした。そのまま走り去ろうとするが、待てえ、といった叫びが背後から聞こえたところで、もう一度向き直った。
「ポリ公。俺はタバコが嫌いだ」
 チェリーを一本咥え、マッチで火をつけた。上る白煙越しに、警官が拳を振り上げる。
「臭えし、たいして美味くもない。ただな」
 警官をすいと避けると、咥えていたタバコをそのまま眼球へ焼きつけた。熱い、熱いとうろたえる顔を、思いきり蹴り飛ばす。猫を轢いたような声を上げた、転がる警官の頭を踏みつけ、今度はマイルドセブンを咥えて、ライターで火をつけた。
「ああ、全力で無駄なことをしているんだな、と思えるところは悪くねえ」
 めいっぱい煙を吸い込むと、なんとか起きようとする警官に吐きかけた。青白い光が染める煙は、透きとおるような透明だった。
「無駄であることすらわからねえ、てめえらみたいな馬鹿と違ってな」
 暮れのアーケード街に落ちた夕日は、タバコの先端で紅く燃えていた。
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