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二話 かっこかわいい

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 あれから数日が経ち、女子達からの人気は無くなりつつあった。
 まぁ元はオタクだから見た目が良くてもこの喋り方に難があったのだろう。
 ちなみにうちの学校は髪を染めたりしない限り注意したりしない学校だ。
 まぁだからと言ってピアスはOKとかではないが、髪型とか案外自由だしバイトも一様許可制だ。
 僕はちなみにバイトはしていない。
 何故かと言うと、僕は絵が得意なんだ。
 だからそこら辺の賞金ありますよ的なものに応募して、そこからはちょちょいのちょいで賞金ゲットだぜ!をするのだ。
 
 「あ、まっつんいた」
 急に後ろからそんなことを言われた。
 話しかけてきた正体は自分の見知った顔であり友人だった。
 この人、勇崎健一(ゆうざきけんいち)君。
 身長は僕よりも高く顔もとても整っており、何より常識人だ!
 誰かとは言わないがあんなガンギマリしている化け物とは大違いだ。
 だから僕は同じ学年だけど尊敬して敬語は使ってないがしっかり君付けはしている!
 「どうしたの健一君?」
 「前借りてた漫画返すの忘れてたからさ、今度まっつんの家行っていい?」
 急にそんなお誘いをされてしまったので僕はテンション高く「いいよ!」っと言った。
 「あ、後どうせだし久しぶりに遊びに行かね?圭とか、後まっつんが呼びたかったら命とかも呼んで。どう?」
 「そうだね!」
 テンション高々とそう返事をした。
 詳しいことは授業が始まってしまうから昼休憩の時に話すことになった。
 ちなみに今日は鈴木さんは休みだ。
 案外熱があるらしいから僕はとりあえず学校が終わったらお見舞いに行く予定だ。

 そうして昼休憩、教室で圭と健一君と一緒にご飯を食べながら遊びの計画を練っていた。
 
 そして時間が過ぎ、放課後になった。
 僕はすぐに学校から出て、近くのコンビニなどに寄って軽食や果物を買った。
 ついでにいらないと思うけど冷えピタも買った。

 コンビニなどで買った袋を持ちながらそのまま鈴木さんの家に直行した。
 
 インターホンを押し数秒経つと、「はーい」っと優しい声が聞こえてきた。
 扉が開き、そこから顔を覗かせたのは鈴木さんのお母さんだった。
 「あら、秀ちゃんじゃない。どうしたの?」
 「突然押しかけてすみません。す、命さんが熱を出して休んだと聞いたので心配になってお見舞いに来ました」
 間違えて鈴木さん呼びをしそうになったが、僕は間一髪間違えずに済んだ。
 鈴木さんのお母さんの前で鈴木さんと言ってしまうと、変に揶揄われてしまうので鈴木さんのお母さんの前では命さんと呼んでいる。
 「あらあらありがとうね、命ちゃん今はだいぶ熱はおさまってきたから少し会ってくる?」
 「あ、いいんですか?」
 「うん。秀ちゃんが良ければお願い。命ちゃん今日秀ちゃんと会えなくて寂しいって言っていたから、あんまりくっつかない距離で話をしてきてくれないかしら?」
 「はい、お邪魔します」
 迷惑にならないように普通の声量で言った。
 
 トントンっと鈴木さんの部屋の扉をノックした。
 「秀です、鈴木さん入ってもいいですか?」
 「あ、秀君?いいよ」
 そう言われたので扉をガチャっと開けた。
 扉を開けたらベッドの上に寝転んでいる鈴木さんがいた。
 「鈴木さん大丈夫ですか?」
 「うん。結構熱下がったから明日からには行けると思うよ」
 その声はいつもの声とは違く、あまり覇気がなかった。
 「そうですか、良かった」
 とりあえず元気では無いが体調がとても悪そうってわけでも無いので一旦安心はした。
 僕は鈴木さんが寝転んでいるベッドまで近づいて袋を置いた。
 「とりあえず軽食と飲み物と果物とか買ってきたから食べたくなったらお母さんとかに言って食べて。後いらないと思うけど一様冷えピタも買ってきたから。とりあえず冷えピタは鈴木さんのお母さんに渡しておくから」
 「うん、ありがとう。果物って何買ってきた?」
 「りんごとバナナ買ってきたけど、今食べたいの?」
 「うん、後こっちきて...」
 そう言われたので僕は鈴木さんの近くまで寄った。
 「ねね、キスしていい?」
 「ダメですよ、病人は安静にしとくべきだから」
 そう言って僕はさりげなく離れた。 
 近づくと無理やり掴まれてぶちゅちゅされそうだから離れた。
 まぁだけどこんなふざけたことを言えるってことはかなり治ってきてそうだな。
 「とりあえず僕はりんごとバナナ切ってきますんで、下行ってもいいですか?」
 「うん。あ、だけどママにとりあえず許可取って。多分許可降りると思うけど、よろしく」
 「はい」
 そう言ってりんごとバナナを持ち下まで降りた。

 「鈴木さんのお母さん、果物買ってきたのでここで切ってもいいですか?」
 っとリビングの扉の前で言った。
 「あらあらいいの?」
 勢いよく扉が開けられた。
 そこからはテンション高々の鈴木のお母さんが出てきた。
 「はい、なのでキッチン借りてもいいでしょうか?」
 「いいわよ、どうぞ」
 僕は遠慮なく入らせてもらい、キッチンに立った。
 包丁がありそうなところの引き出しを引いた。
 案の定そこには包丁があったので、それを手に取りりんごの皮を剥き始めた。
 「秀ちゃんりんごの皮剥くの上手じゃないの」
 「はい、料理好きなんで大体の料理は作れます」 
 「へぇ、未来有望ねぇ。命ちゃんをよろしくね」
 「あ、はい」
 鈴木さんのお母さんは僕と鈴木さんが付き合っていることを知っている。
 「お父さんはわからないけど私は命ちゃんと結婚願望があっても反対はしないからね」
 「あ、はい。え?」
 日常会話の途中に急に娘と結婚してもいいよと言われてしまったので、思考停止してしまった。
 「いいんですか?こんなロン毛でボッチな僕で」
 「いいわよ、出来れば髪の毛結ぶか切って欲しいけど。だけど見た目よりもね、秀ちゃんは内面的なものがかなり魅力的だから私からしたら願ったり叶ったりなのよ。後髪の毛の下はかなり可愛いし」
 「そうですか...え、可愛いんですか?」
 個人的には普通よりも少しかっこいい顔だと思っていたのに、可愛いだと!?
 「命ちゃんも言ってたわよ、カッコ可愛いって。あ、だけどあの時はものすごくかっこよかったって言ってたわよ」
 「それって、命さんと初めて会った時の話ですか....?」
 「そうわよ、命ちゃん凄くノリノリと話してくれたわよ」
 家族にも話しているとは思っていたが、普通に恥ずかしい思い出だから嫌なんだよな....
 「恥ずかしい思い出なんであんまり触れないでください...」
 僕は頬を赤らめながらそう言った。
 「あらそうなの?ごめんなさいね」
 僕は果物を切り終わった。
 「鈴木さんのお母さん、フォークとかってどこにあります?」
 「あ、そこら辺の棚の中に入ってるから漁ってもいいわよ」
 僕は鈴木さんのお母さんに許可をもらったので、1番上の段から漁っていた。
 「後一つ聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」
 「はい、いいですよ?」
 僕はなんだろうと思いながら待っていた。
 「命ちゃんのこと、まだ鈴木さんって呼んでいるわよね?」
 何故バレている!?なんて思いながらこの状況をどう切り抜けようと考えていた。
 「えっと、あの、はい」 
 僕は一つの手段、もう正直に言ってしまう作戦に出た。
 「高校生の時ぐらいまでいいかもしれないけど、大学生か社会人、あるいは結婚する前には直しておいてね」
 「あ、はい」
 僕は流石に結婚していいよっと言われまくると照れてしまうので、ととくさと鈴木さんの部屋に行った。
 
 
 
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