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コゼニーランド
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まるこ :しりはいらぬか。しりはいらぬか。
客 :やあまるこ。今日はしりは有料なのか。
まるこ :1回もんだら10エオレだぞ。
客 :(しりをもむ音)
まるこ :よくばりなパワーであるな。
あまり欲をかいていては死ぬぞ。
客 :うんうん。
まるこ :この瓶に10エオレいっこ入れるのだぞ。
客 :ものすごい量もまれてるな。
まあこの店の癒しだから100エオレあげよう。
まるこ :よくわからんがみんなどうしてそんなたくさん入れるのだ?
金は人間の命より大事なものだとひしからきいているのだが。
客 :この量もしかして皆同じ要領で突っ込んでいくのか…
(まあ10エオレなんて小銭要らないし財布を片付ける為だろうが)
というか、腐海に来るような奴の大半は金より大事なものが
あるようなイカれた連中ばっかりだよ。
もっとも、一攫千金を夢見て来るのも居ないわけじゃないが。
まるこ :ひしは一攫千金なのか。
客 :どうだろうねえ。こうして地獄の一丁目に店を構えてる以上は
特別金に困っているわけじゃないだろうし。
アデルロウで店を開くのはかなり難しいと聞くぞ。
私は商売人じゃないから詳しいことは分からないが…
メント :ぎゃっ ちょっと目を離したら何やってるんすかまるこ。
その瓶の中身はお金じゃないっすか。
客 :まさかの店非公認。
メント :だめっすよ勝手な事しちゃあ。どうしてそんな事するんすか。
まるこ :お金ためる……
メント :ためてどうするんすか?
まるこ :お金をためたらな……部屋に飾るのだ…
メント :飾る?! お金飾ってどうするんすか。
まるこ :しりで得た金だからな。俺のしりにはこれだけの価値がある
という優越感にひたるのだ。ひしよりすごいしりだぞ。
客 :その瓶の中の小銭全部数えても店の品ひとつも買えなさそうなのに…
何て無欲な優越感だ。君のしりにはもっと価値があるはずだから
もう少し入れてあげよう。
メント :ちょっと、そんな大金ぶちこまないで下さいっす。
客 :なんだかよくわからんチャリティ協会の募金より価値のある募金です。
お金をあげると虫が喜ぶ…それだけで私の心は癒されるというもの。
メント :まるこを風俗嬢みたいな扱いしないでくださいっす。
フィッシー:まるこを風俗嬢だと?
客 :やあ店長。相変わらずまるこの話に対してだけは人を殺す顔になるね。
メント :ちょっとフィッシーくん。フルタ工務の納期に間に合わないって
言ってたのにどうして店先に出てくるんすか。早く工房にもどって
アデルロウの外壁用防毒塗装の練成をするっすよ。納期にあわせて。
フィッシー:まるこに手を出したら殺す。それがこの店の掟。
メント :わかったわかった。はいはい、早く戻って。
客 :店長雨季は大変だね。あんたが来るまではこの時期開店休業状態だった
覚えがあるから、まるこもそうだがあんたもありがたいよ。
この店以外どこもオールドマン世代の売り方だから。
メント :そういえばフィッシーくんはオールドマンバイヤー方式を嫌って
コンビニエンスな魔法屋にしたって聞いてたっすよ。
言われてみれば確かに理不尽な売買っすからねえオールドマン方式。
魔術師は年寄りほど優秀というオールドマン主義に則った商売で
見た目の年齢や名前の実績に応じて値引きされていく売り方……
本来は弱弱しい若者に変化してまだ駆け出しの人を助けようとする
店側の善意を悪用する小賢しい魔法使いに対抗するために普及した
そうっすけど、代を重ねて成り立ちを知らずに名のある老魔術師にだけ
適正価格で売って、無名の若い魔術師には割高で売りつける
横暴な店が当たり前になってしまったそうっす。
客 :魔法屋はそれが普通だよ。未熟なうちは危ないものもあるから
仕方ないと思ってたけど、店側の理不尽な屁理屈だったと
初めて知った時は腐海で探索した時より驚いたものだ。
メント :賢者の弟子なのに賢者になれそうもないってフィッシーくんはよく
言ってるっすけど、そういう着眼点はさすが賢者の弟子っすよね。
バプト :別に俺が教えたわけじゃないよ。俺は魔法屋で適正価格なる方法を
教えただけだもの。
メント :おじさん急に現れないでほしいっす。
まるこ :オヤヂしりをもむか。今日は有料だぞ。
バプト :(しりをくるったようにもみつづける音)
まるこ :ほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
客 :えっその適正価格になる術というのは……
バプト :魔法薬の相場と薬草等の魔法媒体の目利きを教えてあげた。
本当の値段を即座に見抜けば言いがかりでもなんでもないだろ?
あとは魔法使いでもびびるビンタの仕方かな。
あいつらは武器や暴力には屈しない力があるが、一般人でも
やれる暴力の前には無力なんだよ。音がでかい派手なビンタを
食らわして「この薬は25ストナだろ? お?」って凄んであげれば
大体の店は御見逸れしましたってその値段で売ってくれる。
客 :魔法使いがびびるビンタってどんなだ…
バプト :こうだ。
(店にひびく激しいビンタ音)
客 :………御見逸れしました。
ううっ頬の衝撃より音が耳にひびいて目が回る。
だがこれをすれば私も他所の店で…
バプト :値切るんじゃなくて適正価格で売れと脅すんだ。
魔法製品の目利きが正しくできなきゃこのビンタをしたところで
うるせー殺すぞって店からたたき出されるのがオチだよ。
まあだからお前にも無償で教えたんだけども。
でもあの子、まさか最初から適正価格で物を売る店を
たててしまうなんてねえ。賢者もびっくりよ。
メント :ははあ、そこに繋がってるんすね。
客 :最近のオールドマン方式は見た目に関わらず交渉して値切らないと
とてつもない詐欺値で買わされるんですよ。めんどくさいから
一切交渉しないでいいここは便利です。薬草関係の質もいい。
これなら若干高くても1階で無理くりして値切って買うよりいい。
魔法の触媒は量より質がものをいいますからね。
メント :まあ、代わりにセールをしないという特徴もあるんすけどね。
値引かないけど、割高でもないのがうちの店の特徴っす。
書いてあるとおりの値段で売る。
客 :まさにコンビニエンス。
バプト :最初から決められた値段で売る魔法屋なんて前代未聞だよ。
そういう店は商品に自信が無い証拠とか経営不振とか
素人とかわらない店とか言われて客がつかないといわれてたのだけど…
でもそれを理由に買いに来る客がいるって事は、望まれていたんだね。
客 :『適正価格』って大事ですね…
バプト :媒体の目利きって買うときに必要な技能だと思ってたのに、
まさか売る側として使うとはねえ。思えば確かに優秀な商人は
優れた目を持ってるね。
メント :ボクも本来口下手で人前で喋れなかったのに、
言葉の魔術である呪術のために色々言葉を学んできたっす。
それが占い師の副業で役に立ったと思ったらお店の販売員でも
役に立ってるっすよ…何が役に立つかわかんないもんすね。学って。
まるこ :オヤヂ……しりをもんだからには金をよこすのだ。
いっぱいもんだからいっぱいよこすのだぞ。100エオレくらい…
メント :あっ だからそういうのはダメって言ったっしょ。
バプト :えーっエオレ銭なんて持ってないよ。これでだめ?
まるこ :……それはお金に見えぬからダメだ。
メント :100ストナ金貨なんて大金虫にあげたら働いてる人が泣くっす。
バプト :うちにエオレ銭の貯金箱あるけど今の手持ちにはないん。
いいじゃんいっぱいもんだし。
客 :この町相場がそもそも高めだからエオレ銭あんまり息してないしな。
ストナ貨だけで生活できるというか。便利だよなあ。
まあ1階の話だけども。3階はさすがにボチボチ使うかな。
メント :金銭感覚が昔に戻りそうっす…もう何が庶民的なのやら。
ところでまるこはどうしてエオレ銭をそう欲しがるんすか。
まるこ :ひしの部屋の床によく落ちてる。
これは何だと訊いたらお金だって。店の金にはうるさいのに
自分の小銭には頓着しないのがどうもよくないから
まるこがみつけたらまるこのものでいいって俺に瓶くれたのだ。
この瓶がたまったら罰としてひしが花を買ってくれるらしいぞ。
花がもらえてしりも認められるならいいことづくめだ。
メント :そういうことっすか…って、最初から入っていたお金と
お客さんが入れたお金がもうどれだかわかんないっすね。
客 :じゃあこの小銭入れのエオレ銭全部ぶちこんで花を貰おう。
何となくためてたけど、どうせたまる一方だし。
(小銭を瓶に注ぐ音)
まるこ :わあい。
メント :ああああああああ
もう本来の趣旨がかききえてるうううううう
客 :やあまるこ。今日はしりは有料なのか。
まるこ :1回もんだら10エオレだぞ。
客 :(しりをもむ音)
まるこ :よくばりなパワーであるな。
あまり欲をかいていては死ぬぞ。
客 :うんうん。
まるこ :この瓶に10エオレいっこ入れるのだぞ。
客 :ものすごい量もまれてるな。
まあこの店の癒しだから100エオレあげよう。
まるこ :よくわからんがみんなどうしてそんなたくさん入れるのだ?
金は人間の命より大事なものだとひしからきいているのだが。
客 :この量もしかして皆同じ要領で突っ込んでいくのか…
(まあ10エオレなんて小銭要らないし財布を片付ける為だろうが)
というか、腐海に来るような奴の大半は金より大事なものが
あるようなイカれた連中ばっかりだよ。
もっとも、一攫千金を夢見て来るのも居ないわけじゃないが。
まるこ :ひしは一攫千金なのか。
客 :どうだろうねえ。こうして地獄の一丁目に店を構えてる以上は
特別金に困っているわけじゃないだろうし。
アデルロウで店を開くのはかなり難しいと聞くぞ。
私は商売人じゃないから詳しいことは分からないが…
メント :ぎゃっ ちょっと目を離したら何やってるんすかまるこ。
その瓶の中身はお金じゃないっすか。
客 :まさかの店非公認。
メント :だめっすよ勝手な事しちゃあ。どうしてそんな事するんすか。
まるこ :お金ためる……
メント :ためてどうするんすか?
まるこ :お金をためたらな……部屋に飾るのだ…
メント :飾る?! お金飾ってどうするんすか。
まるこ :しりで得た金だからな。俺のしりにはこれだけの価値がある
という優越感にひたるのだ。ひしよりすごいしりだぞ。
客 :その瓶の中の小銭全部数えても店の品ひとつも買えなさそうなのに…
何て無欲な優越感だ。君のしりにはもっと価値があるはずだから
もう少し入れてあげよう。
メント :ちょっと、そんな大金ぶちこまないで下さいっす。
客 :なんだかよくわからんチャリティ協会の募金より価値のある募金です。
お金をあげると虫が喜ぶ…それだけで私の心は癒されるというもの。
メント :まるこを風俗嬢みたいな扱いしないでくださいっす。
フィッシー:まるこを風俗嬢だと?
客 :やあ店長。相変わらずまるこの話に対してだけは人を殺す顔になるね。
メント :ちょっとフィッシーくん。フルタ工務の納期に間に合わないって
言ってたのにどうして店先に出てくるんすか。早く工房にもどって
アデルロウの外壁用防毒塗装の練成をするっすよ。納期にあわせて。
フィッシー:まるこに手を出したら殺す。それがこの店の掟。
メント :わかったわかった。はいはい、早く戻って。
客 :店長雨季は大変だね。あんたが来るまではこの時期開店休業状態だった
覚えがあるから、まるこもそうだがあんたもありがたいよ。
この店以外どこもオールドマン世代の売り方だから。
メント :そういえばフィッシーくんはオールドマンバイヤー方式を嫌って
コンビニエンスな魔法屋にしたって聞いてたっすよ。
言われてみれば確かに理不尽な売買っすからねえオールドマン方式。
魔術師は年寄りほど優秀というオールドマン主義に則った商売で
見た目の年齢や名前の実績に応じて値引きされていく売り方……
本来は弱弱しい若者に変化してまだ駆け出しの人を助けようとする
店側の善意を悪用する小賢しい魔法使いに対抗するために普及した
そうっすけど、代を重ねて成り立ちを知らずに名のある老魔術師にだけ
適正価格で売って、無名の若い魔術師には割高で売りつける
横暴な店が当たり前になってしまったそうっす。
客 :魔法屋はそれが普通だよ。未熟なうちは危ないものもあるから
仕方ないと思ってたけど、店側の理不尽な屁理屈だったと
初めて知った時は腐海で探索した時より驚いたものだ。
メント :賢者の弟子なのに賢者になれそうもないってフィッシーくんはよく
言ってるっすけど、そういう着眼点はさすが賢者の弟子っすよね。
バプト :別に俺が教えたわけじゃないよ。俺は魔法屋で適正価格なる方法を
教えただけだもの。
メント :おじさん急に現れないでほしいっす。
まるこ :オヤヂしりをもむか。今日は有料だぞ。
バプト :(しりをくるったようにもみつづける音)
まるこ :ほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
客 :えっその適正価格になる術というのは……
バプト :魔法薬の相場と薬草等の魔法媒体の目利きを教えてあげた。
本当の値段を即座に見抜けば言いがかりでもなんでもないだろ?
あとは魔法使いでもびびるビンタの仕方かな。
あいつらは武器や暴力には屈しない力があるが、一般人でも
やれる暴力の前には無力なんだよ。音がでかい派手なビンタを
食らわして「この薬は25ストナだろ? お?」って凄んであげれば
大体の店は御見逸れしましたってその値段で売ってくれる。
客 :魔法使いがびびるビンタってどんなだ…
バプト :こうだ。
(店にひびく激しいビンタ音)
客 :………御見逸れしました。
ううっ頬の衝撃より音が耳にひびいて目が回る。
だがこれをすれば私も他所の店で…
バプト :値切るんじゃなくて適正価格で売れと脅すんだ。
魔法製品の目利きが正しくできなきゃこのビンタをしたところで
うるせー殺すぞって店からたたき出されるのがオチだよ。
まあだからお前にも無償で教えたんだけども。
でもあの子、まさか最初から適正価格で物を売る店を
たててしまうなんてねえ。賢者もびっくりよ。
メント :ははあ、そこに繋がってるんすね。
客 :最近のオールドマン方式は見た目に関わらず交渉して値切らないと
とてつもない詐欺値で買わされるんですよ。めんどくさいから
一切交渉しないでいいここは便利です。薬草関係の質もいい。
これなら若干高くても1階で無理くりして値切って買うよりいい。
魔法の触媒は量より質がものをいいますからね。
メント :まあ、代わりにセールをしないという特徴もあるんすけどね。
値引かないけど、割高でもないのがうちの店の特徴っす。
書いてあるとおりの値段で売る。
客 :まさにコンビニエンス。
バプト :最初から決められた値段で売る魔法屋なんて前代未聞だよ。
そういう店は商品に自信が無い証拠とか経営不振とか
素人とかわらない店とか言われて客がつかないといわれてたのだけど…
でもそれを理由に買いに来る客がいるって事は、望まれていたんだね。
客 :『適正価格』って大事ですね…
バプト :媒体の目利きって買うときに必要な技能だと思ってたのに、
まさか売る側として使うとはねえ。思えば確かに優秀な商人は
優れた目を持ってるね。
メント :ボクも本来口下手で人前で喋れなかったのに、
言葉の魔術である呪術のために色々言葉を学んできたっす。
それが占い師の副業で役に立ったと思ったらお店の販売員でも
役に立ってるっすよ…何が役に立つかわかんないもんすね。学って。
まるこ :オヤヂ……しりをもんだからには金をよこすのだ。
いっぱいもんだからいっぱいよこすのだぞ。100エオレくらい…
メント :あっ だからそういうのはダメって言ったっしょ。
バプト :えーっエオレ銭なんて持ってないよ。これでだめ?
まるこ :……それはお金に見えぬからダメだ。
メント :100ストナ金貨なんて大金虫にあげたら働いてる人が泣くっす。
バプト :うちにエオレ銭の貯金箱あるけど今の手持ちにはないん。
いいじゃんいっぱいもんだし。
客 :この町相場がそもそも高めだからエオレ銭あんまり息してないしな。
ストナ貨だけで生活できるというか。便利だよなあ。
まあ1階の話だけども。3階はさすがにボチボチ使うかな。
メント :金銭感覚が昔に戻りそうっす…もう何が庶民的なのやら。
ところでまるこはどうしてエオレ銭をそう欲しがるんすか。
まるこ :ひしの部屋の床によく落ちてる。
これは何だと訊いたらお金だって。店の金にはうるさいのに
自分の小銭には頓着しないのがどうもよくないから
まるこがみつけたらまるこのものでいいって俺に瓶くれたのだ。
この瓶がたまったら罰としてひしが花を買ってくれるらしいぞ。
花がもらえてしりも認められるならいいことづくめだ。
メント :そういうことっすか…って、最初から入っていたお金と
お客さんが入れたお金がもうどれだかわかんないっすね。
客 :じゃあこの小銭入れのエオレ銭全部ぶちこんで花を貰おう。
何となくためてたけど、どうせたまる一方だし。
(小銭を瓶に注ぐ音)
まるこ :わあい。
メント :ああああああああ
もう本来の趣旨がかききえてるうううううう
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