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禁忌の毒
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白牙は、森から出るとガイアと視線を合わせながら状況を確認する。ガイアの他に白狼達が20匹以上。南方にいる仲間は、戦える状況ではない。だが、ガイア達は、姿を現さない南方の仲間を警戒している様だ。もし、戦えたとしてもこの戦力差。勝てる見込みはない。何よりガイアの後ろには、エレナ様がいる。お互いが出方を伺う無言の駆け引きに終止符を打ったのは、エレナだった。
「剣を納めて、白牙。貴方が武器を納めれば、この方達は、貴方を襲わないわ。」
エレナの説得に白牙は、目を疑う。白狼達と自分の間にエレナ様がいる。
「何を仰っているのですか、エレナ様。早くそこからお逃げ下さい。」
白牙は、直様エレナに声を掛けたが、エレナは、微動だにしなかった。白狼達の前に身を晒す主君の娘。だが、白狼達は、相変わらず威嚇の唸り声こそあげているが、ガイアも他の白狼達さえもエレナを襲う気配がない。そんな状況に困惑する白牙。そんな白牙に対し、ガイアは、牙を向くと立ち塞がるエレナに
「そこを退け、エレナ。戦いは、もう始まっているのだ。」
と警告した。だが、ガイアの警告にもエレナは、
「なら、私を先に殺して。目の前で家臣が殺されるのを黙って見てるなんてできないわ。」
と返した。ボスの言葉を無視するエレナの態度に他の白狼達は、前足を蹴ると一斉にエレナに襲い掛かった。それは群れとして当然の行動だったが、ガイアは、そんな白狼達からエレナを守る様に前に出ると他の白狼達を制するかの様に睨みつけた。ガイアのその形相に白狼達は、次々と地に伏せる。エレナは、自分を守ってくれたガイアに感謝するとその意を込めて、ガイアの身体を撫でた。本来なら人族と獣族が触れ合うなんて有り得ない。だが、ガイアは、それを受容れていた。まるでガイアがエレナに従っているかの様な光景に白牙は、再び目を疑った。それでも武器を納めることのできない白牙に対し、エレナは、目の前まで近づくと、しっかり白牙の顔を見て、
「白牙、貴方も武器を納めて。」
と命じた。エレナの眼差し、そして、その言葉についに白牙の戦意は、消え去り、白牙の斧槍は、地に落ちた。白牙は、エレナの前に跪くと
「…申し訳ございません。この白牙、エレナ様の命に従います。ですが、この状況について、ご説明いただけますか?」
と尋ねた。エレナは、白牙の言葉に頷くとガイアとの経緯(いきさつ)を白牙に伝えた。エレナは、話し終えると
「ごめんなさい、白牙。貴方も白炎を傷つけられたのに。でも、私は、これ以上、誰かが傷つく姿は、見たくないの。」
と謝った。白牙は、そんなエレナの肩を触ると
「エレナ様。お気遣いありがとうございます。遺恨がないと言えば嘘になります。ですが、白炎も白西の防人の1人。戦地に立った以上、覚悟はできていたはずです。」
と返した。そして、エレナの説明に対し、
「しかし、ガイアの妻子が犠牲になっていたとなると我々の悪い予想が当たってしまった様です。」
と答え、此方の状況を伺うガイアを見ると覚悟を決め、
「エレナ様。ガイアと話す事は、できますか?」
と頼んだ。エレナは、頷くと白牙を同行させ、ガイアの元に向かった。エレナと違い明らかに敵意を向けるガイアに決死の覚悟で白牙が口を開く。
「森の主よ。エレナ様より事情は、聞いた。我が領民がお主の家族を害した事を心から詫びよう。その上でこれ以上の犠牲を出さぬ為にこの戦い、お主達には引いてもらいたい。」
白牙の提案に後ろに控えていた白狼が怒りを顕にする。
「人間風情が何を言う。我らに引けだと。ふざけるな。我が一族を害した事、万死で償わせる。」
その言葉に呼応するかの様に他の白狼達も唸りを上げる。だが、白牙は臆するどころか、睨み返し、
「それは此方とて同じ事。お主達が殺した領民達にも家族がいた。その怨みは、お主達と同じ。お互い血で血を洗う戦いが始まるだけだ。」
と返した。白牙の言葉に白狼達が前足に力を込める。
「望むところだ。我らには、獣王である親父がいる。今度は、貴様ら全員を根絶やしにしてくれるわ。」
今にも襲いかかりそうな白狼達。ガイアも白牙に詰め寄る。白牙は、今にも自分に喰らいかかろうとするガイアをしっかり見ながら
「引けぬか…。だが、森の主よ。此方にお主達を殺す武器があるとしてもか。」
と言った。その言葉にエレナが反応する。
「待って。どういう事。…まさか…。貴方、禁忌の毒を使うつもりなの。ダメよ。許さないわ。」
暗具が使われる事を危惧し、興奮しながら詰め寄るエレナに白牙は、
「エレナ様。落ち着いて下さい。私が使うわけではありません。イヴァイルです。彼奴が暗具を持って、この森に入ったと報告があったのです。」
と話した。エレナは、白牙の言葉に信じられないといった表情を見せ、
「何で。アレは、貴方達、四門の長かお父様の承認がなければ、持ち出せないはず。どうして、あの人が持っているの?」
と聞いたが、白牙は、首を振ると
「どうやって入手したかは、分かりません。ですが、諜報部からの確かな情報です。暗具が使用されれば、この戦いは、もう避けられなくなる。私は、暗具が使われる前にイヴァイルを止める為に此処に来たのです。まあ、状況は変わってしまいましたが。」
と答えた。白牙の言葉に口を閉じ、心配そうにガイアを見るエレナ。そして、何も言わずにガイアにしがみつくエレナの姿がガイアに白牙の言葉の真実味を表していた。ガイアは、エレナをあやす様に自分の頭を擦りつけると白牙を見て、
「森の奥から我が眷属達の血と混じって嫌な臭いがする。お前が言っている事は、真実なのだろう。だが、此処は、我らが聖地。譲るつもりはない。お前は、エレナを連れて此処から離れろ。我らの矜持にエレナを巻き込むつもりはない。」
と言って、自分にしがみつくエレナを白牙に預けようとした。だが、離れようとしないエレナ。その時だった。森から不気味な笑い声と共に人影が現れた。
「剣を納めて、白牙。貴方が武器を納めれば、この方達は、貴方を襲わないわ。」
エレナの説得に白牙は、目を疑う。白狼達と自分の間にエレナ様がいる。
「何を仰っているのですか、エレナ様。早くそこからお逃げ下さい。」
白牙は、直様エレナに声を掛けたが、エレナは、微動だにしなかった。白狼達の前に身を晒す主君の娘。だが、白狼達は、相変わらず威嚇の唸り声こそあげているが、ガイアも他の白狼達さえもエレナを襲う気配がない。そんな状況に困惑する白牙。そんな白牙に対し、ガイアは、牙を向くと立ち塞がるエレナに
「そこを退け、エレナ。戦いは、もう始まっているのだ。」
と警告した。だが、ガイアの警告にもエレナは、
「なら、私を先に殺して。目の前で家臣が殺されるのを黙って見てるなんてできないわ。」
と返した。ボスの言葉を無視するエレナの態度に他の白狼達は、前足を蹴ると一斉にエレナに襲い掛かった。それは群れとして当然の行動だったが、ガイアは、そんな白狼達からエレナを守る様に前に出ると他の白狼達を制するかの様に睨みつけた。ガイアのその形相に白狼達は、次々と地に伏せる。エレナは、自分を守ってくれたガイアに感謝するとその意を込めて、ガイアの身体を撫でた。本来なら人族と獣族が触れ合うなんて有り得ない。だが、ガイアは、それを受容れていた。まるでガイアがエレナに従っているかの様な光景に白牙は、再び目を疑った。それでも武器を納めることのできない白牙に対し、エレナは、目の前まで近づくと、しっかり白牙の顔を見て、
「白牙、貴方も武器を納めて。」
と命じた。エレナの眼差し、そして、その言葉についに白牙の戦意は、消え去り、白牙の斧槍は、地に落ちた。白牙は、エレナの前に跪くと
「…申し訳ございません。この白牙、エレナ様の命に従います。ですが、この状況について、ご説明いただけますか?」
と尋ねた。エレナは、白牙の言葉に頷くとガイアとの経緯(いきさつ)を白牙に伝えた。エレナは、話し終えると
「ごめんなさい、白牙。貴方も白炎を傷つけられたのに。でも、私は、これ以上、誰かが傷つく姿は、見たくないの。」
と謝った。白牙は、そんなエレナの肩を触ると
「エレナ様。お気遣いありがとうございます。遺恨がないと言えば嘘になります。ですが、白炎も白西の防人の1人。戦地に立った以上、覚悟はできていたはずです。」
と返した。そして、エレナの説明に対し、
「しかし、ガイアの妻子が犠牲になっていたとなると我々の悪い予想が当たってしまった様です。」
と答え、此方の状況を伺うガイアを見ると覚悟を決め、
「エレナ様。ガイアと話す事は、できますか?」
と頼んだ。エレナは、頷くと白牙を同行させ、ガイアの元に向かった。エレナと違い明らかに敵意を向けるガイアに決死の覚悟で白牙が口を開く。
「森の主よ。エレナ様より事情は、聞いた。我が領民がお主の家族を害した事を心から詫びよう。その上でこれ以上の犠牲を出さぬ為にこの戦い、お主達には引いてもらいたい。」
白牙の提案に後ろに控えていた白狼が怒りを顕にする。
「人間風情が何を言う。我らに引けだと。ふざけるな。我が一族を害した事、万死で償わせる。」
その言葉に呼応するかの様に他の白狼達も唸りを上げる。だが、白牙は臆するどころか、睨み返し、
「それは此方とて同じ事。お主達が殺した領民達にも家族がいた。その怨みは、お主達と同じ。お互い血で血を洗う戦いが始まるだけだ。」
と返した。白牙の言葉に白狼達が前足に力を込める。
「望むところだ。我らには、獣王である親父がいる。今度は、貴様ら全員を根絶やしにしてくれるわ。」
今にも襲いかかりそうな白狼達。ガイアも白牙に詰め寄る。白牙は、今にも自分に喰らいかかろうとするガイアをしっかり見ながら
「引けぬか…。だが、森の主よ。此方にお主達を殺す武器があるとしてもか。」
と言った。その言葉にエレナが反応する。
「待って。どういう事。…まさか…。貴方、禁忌の毒を使うつもりなの。ダメよ。許さないわ。」
暗具が使われる事を危惧し、興奮しながら詰め寄るエレナに白牙は、
「エレナ様。落ち着いて下さい。私が使うわけではありません。イヴァイルです。彼奴が暗具を持って、この森に入ったと報告があったのです。」
と話した。エレナは、白牙の言葉に信じられないといった表情を見せ、
「何で。アレは、貴方達、四門の長かお父様の承認がなければ、持ち出せないはず。どうして、あの人が持っているの?」
と聞いたが、白牙は、首を振ると
「どうやって入手したかは、分かりません。ですが、諜報部からの確かな情報です。暗具が使用されれば、この戦いは、もう避けられなくなる。私は、暗具が使われる前にイヴァイルを止める為に此処に来たのです。まあ、状況は変わってしまいましたが。」
と答えた。白牙の言葉に口を閉じ、心配そうにガイアを見るエレナ。そして、何も言わずにガイアにしがみつくエレナの姿がガイアに白牙の言葉の真実味を表していた。ガイアは、エレナをあやす様に自分の頭を擦りつけると白牙を見て、
「森の奥から我が眷属達の血と混じって嫌な臭いがする。お前が言っている事は、真実なのだろう。だが、此処は、我らが聖地。譲るつもりはない。お前は、エレナを連れて此処から離れろ。我らの矜持にエレナを巻き込むつもりはない。」
と言って、自分にしがみつくエレナを白牙に預けようとした。だが、離れようとしないエレナ。その時だった。森から不気味な笑い声と共に人影が現れた。
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