私の名前を呼ぶ人は(とっても短い婚約破棄 連載版)

桧山 紗綺

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卒業後

新たな動き 2

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  先生を見つけるのにはてこずった。姿が校舎の何処にもなかったから。
  校舎の外に足を伸ばしてようやく見つけた。
 「先生っ!」
  駆け寄ろうとした足がぎくりと止まる。
 「…先生?」
  表情を削ぎ落したような顔で虚空を見つめる姿はリシアが見たことのない姿だった。
 「ああ…、君か」
  瞬きをして先生がリシアに視線を合わせる。
  こちらに向かって歩いてくる先生はもういつもの笑顔を浮かべていて、さっきの表情の片鱗も見えない。
  こんなところでどうしたんですか、と聞きたいのに聞けなかった。
 「どうかした?」
  逆に聞かれてしまう。
  聞く機会を完全に逸してしまった。
 「ええと、先ほど伯爵家から使いが来まして」
  先生を探していた理由を説明するとわずかに口の端を上げる。
  穏やかそうな表情と合ってなくてちょっと怖いです。
 「そうか、伯爵は君と話をするつもりがあるのかな」
  それはリシアにもわからない。
  贈った手紙を読んだかどうかすらわからない状況では何とも判断のしようがなかった。
 「リシア」
  先生の手がリシアの眉間を突く。
 「な、何ですか」
  突かれたところを両手で押さえる。
  痛くはなかったけれど唐突で意味がわからない。
  見上げると先生がふっと笑う。
 「ダメだよ、眉間に皺を寄せてちゃ」
  そんなに難しい顔をしなくていいから、と笑う先生にリシアも笑みを返す。
 「父から直接手紙が来たら行ってきていいですか?」
  はっきりと反応があったとわかれば行動に移してもいいだろう。
  聞くと先生も頷いた。
 「うん、そのタイミングならかまわないよ」
  来たら連絡して、と指を取られる。
 「はーい」
  心配されてるのかと思うとうれしい。
  子供っぽく返事をしてみる。
  軽く頭を撫でられるのがくすぐったくて、くすくす笑ってしまう。
  微かな不安はどこかに行った。
  父親がどう出てくるのか、楽しみなくらいだった。 
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