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ブラックな教会
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武具屋に行こうと思ったが、死に戻りについて聞いてからにした方が装備を決める参考になりそうなので教会に来ている。
教会の場所はギルドで受け取った地図情報にも載っていた。
何と言っても一般アバターが
『死んでしまうとは情けない』
と言われる場所だから、有意義なお説教が聞けると思う。
情けないって言葉は言われた人より能力が高い人しか言えない言葉だしな。
教会は扉を常時開きっぱなしで誰でも入れる。
天井は高くドーム状だが建築の構造上なのか横の太い梁がいくつも通っていてそこから灯りがぶら下がっている。
天井板が無い家って感じかな。
ネズミや泥棒は隠れられない仕様に潔癖が現れている。
「こんにちは」
「ようこそ当教会へ」
礼拝堂の隅で箒を動かしている修道服の人物に声をかけると定型文が帰ってきた。
「あの」
「今日はお祈りですか?」
ここの祭壇でお祈りをするとスキルの成長か確認できる。
この反応はモブキャラの様なのでギルドで作った身分証のカードを見せる。
「これはこれはサーバーマスター様、おいで頂きましてありがとうございます」
「教会のシステムに詳しい人と話がしたいんだが、空いてるかい?」
「甦りの魔法陣の部屋に司祭様がおられます。礼拝堂側からは通常は入れないようになっておりますが、マスターの身分証カードをドアにかざしていただければ優先的に開けます」
「それはスゴイ」
思わず手に持ったカードをまじまじと見てしまった。
「一般の方が拾っても使えませんので御安心を」
「助かるよ。じゃあ、お邪魔するね」
ハルナは躊躇いなくドアにカードをかざす。
カチッと鍵が外れる音がして、ドアは手前に引けた。
中を覗くと、驚いた顔の司祭様と目が合った。
「そちらからのお客様とは珍しいですね。どちら様で?」
「こう言う者です」
言葉で名乗るのもなとと思ってカードを出して見せる。
今更だけどカードに記載されている職業は『カントウ圏サーバーマスター』となっている。
「当教会へようこそおいで下さいました」
司祭様が丁寧に頭を下げるのを見ると何だかいたたまれない。
見た目が年配者だから俺のような若いのに頭を下げさせるのは恐縮するな。
「こちらは教えを乞いに来た方だから頭は下げないでもらえると助かります」
あ、つい敬語が。
「そうですか。では一般の方へ対応する時と同じ話し方でよろしいですか?」
「結構です」
そんな会話をしていると部屋の魔方陣がブオンッと風の音を立てて光りだした。
驚いて思わず身構えてしまった俺の前に静止するように司祭様が腕を上げていた。
「大丈夫です。何処かで亡くなった一般アバターが転送されてくる合図です。先に対応しますので、此方を着けてお静かにお待ち下さい」
司祭様が俺の首に何かをかける。
ロザリオ?さっきまで司祭様の胸に下がっていたものだ。
大きめの十字架に宝石でゴテゴテ装飾がされている。
再びブオンッと音がして、魔法陣の真ん中に倒れた人間の姿が現れる。
司祭様は円の外に立っている。
うわっ血みどろだ。
司祭様が持っていた杖で円の中をトンと突くと血糊がシュワワ~と蒸発していく。
怪我はそのままだけど。
「アバター再構築」
司祭様が言うと目の前にウインドウが浮かぶ。
一番上に再構築のための費用とあり、次に今回の戦闘での経験値数値。
その下に今回の戦闘中に手に入れた貨幣。
更に下に差引された数値が書かれている。
「少し足りませんね」
司祭様が呟いて魔法陣の中に入っていく。
杖の先を遺体の手の平に載せて呟く。
「カドヴューション」
すると手の平からコインが溢れだし、そのすべてが魔法陣に吸い込まれて消えた。
司祭様が円の外に戻って。
「アバター再構築開始」
ブオンッと魔法陣が輝き遺体が宙に浮かぶ。
体の修復が行われ、装備までキレイに元通り。
こうなっていたのか。
遺体を浮かべたまま司祭様は部屋を出て礼拝堂の祭壇の前に立ち、遺体を祭壇の階段下に降ろした。
礼拝堂の掃除をしていた修道員の皆さんは困ったように眉を寄せていたが手を止めて扉を閉めてから祭壇前に集まってくる。
司祭様が遺体に向かって杖を掲げると先端の石が光って遺体に光を飛ばし、光は反射して天井のステンドグラスに当たって乱反射を起こし、その光は遺体に帰ってきた。
美しい光景だった。
俺も礼拝堂まで付いて来て端っこでコッソリ見てた。
遺体がむっくりと起き上がり司祭様を見た。
「本当に……死んでしまうとは情けない。その身を大事になさい」
「ありがとうございました!」
一般アバターはあっさりと帰って行った。
扉が再び開いたまま固定される。
「お疲れ様です」
思わずそう声をかけていた。
司祭様は黙って眉を下げ奥の魔法陣の部屋に戻ったので俺もついて行った。
「それで、私にサーバーマスターのお役に立てることがございますか?」
「あ~情けない話なんだが引き継ぎ不備があってな。教会のシステムを教えてほしい」
「そういう事でございましたか。では場所を変えましょう」
司祭様が俺の着けているロザリオを持ち上げ優しくキスすると司祭様の姿がブレ、二人になった!
ロザリオは片方の司祭様の胸に戻っていた。
驚いた顔の俺を見て司祭様Sが小さく微笑んだ。いたずらに成功したって顔だ。
「こちらの仕事も休むわけにはいきませんからね。
意識は戻れば共有できますし、便利ですよ」
ロザリオの無い司祭様が移動して何もない壁に杖の石を当てると、扉が現れた。
「こちらへどうぞ」
部屋の中には簡素な木のテーブルと長イス。テーブルクロスと同じ布がイスにも敷かれている。
壁には小さめの祭壇がはめ込まれている。
促されてイスに座り、司祭様も向かい側に座る。
「ではどこからお話しいたしますか?」
「一番大事なことをまず聞こう。サーバーマスターに死に戻りが無いって本当か?」
「システム的にはそうなっておりますね」
「怪我して手足に破損が出来たら治らないって聞いたんだが……」
「回復魔法や薬の効果はありますが、切れたのではなく無くなった場合は最高回復薬が必要になりますね。マスターの為ですが無いものは使えませんのでなかなか難しいと思われます。
一般アバターですとそれに見合う献金が使えますが、初心者が無茶ばかりして手持ちがないのに何度も教会に飛ばされてくるとため息をつきたくなりますね。
いっそ無謀者は裸で放り出してやりましょうか?」
「苦労してるんだな」
テーブルに肘をついてうなだれている司祭様の頭を撫でたくなったので、帽子を取って頭を撫でる。
司祭様は動かない。
「ありがとうございます……」
顔を上げない司祭様は唇を噛んで泣くのを堪えているようだ。NPCなのに苦労しすぎだろ。
俺が隣に移動してくると少し顔を上げたので頬を撫でてやる。
驚いた顔になって開いた唇が赤くなっていたのでそこも撫でる。
「たまには甘えたっていいだろ?」
赤くなって固まったままの司祭様の唇を舐めるように奪いながら髪を撫で首を撫で襟をくつろげる。
堅苦しい服装が乱れる様子が背徳的だがこの場合は素晴らしいと言っておこう。
「ん!」
すべて受け入れる体勢。激しいキスをしなくても首にキスしたら速攻で落ちた。
・教会司祭ヒューセの個人情報
・シンジュ教会の一般アバターブラックリスト
・シンジュ教会の一般献金者一覧
・教会業務一覧
・サーバーマスター用復活魔法作成
え?
出来るのか?
「司祭様?」
「はぁ……ヒューセとお呼びくださいマスターハルナ」
「じゃあ……ヒューセ様。復活魔法作成なんて出来るのか?」
「作って見せます!」
まだのようだな。まあ意欲は買いか。
「あ、いまさらだが、俺の現状のスキル確認を頼んでもいいか?」
「はい!ぜひ承ります」
司祭のヒューセ様は俺の手を取るとすっくと立ち上がって部屋の祭壇前まで優雅に促してくれた。
祭壇の中の観音開きの扉を開くと、中にある丸い球が見えた。
「此方は礼拝室の神像とリンクしておりますので石に触れて頂けますか?」
「ああ」
石に触れた俺の手の上にヒューセ様の手が乗る。
そして何かが送り込まれるような感覚を感じた。
すると目の前にウインドウが開いた。
――――――――――---‐
榛名
スキル
『レンタル』『魔法攻撃耐性Lv1』『刀術』『命中率UPLv2』『基本魔法』
――――――――――---‐
「マスターハルナ、情報をカードに記憶させますか?」
「ああ、頼む」
「ではカードは手にお持ちいただきますようお願いいたします」
俺は言われて空いてる方の手にカードを持つ。
そして何か送り込まれる感覚の後、カードがぼんやり輝いて記録が終わったようだった。
「スキルの詳細はウインドウ上でしか確認できませんので、ご確認いただくとよろしいかと存じます」
「そうか。じゃあ」
ウインドウのスキルの字に指で触れると小さいウインドウが開く。
――――――――――---‐
『基本魔法』
すべての属性の最小魔法が使える。
本人のレベルが上がると威力を上げることができるようになる。
『魔法攻撃耐性Lv1』
魔法で攻撃された時のダメージを減らせる。
使う事でレベルが上がる。
レベルが上がると弱い魔法は無効化される。
『刀術』
刃物の扱いが上手くなる。
手に持つと使い方を体で感じる。
体術と併用すると威力が上がる。
『命中率UPLv2』
攻撃の命中率が上がる。
使う事でレベルが上がる。
レベルが高くなると弱点が見えるようになる。
『レンタル』
粘膜接触した人の能力を借りることができる。
随時選択式。本人のスキルは消えない。
――――――――――---‐
最後の、何だこれ!
「『レンタル』はサーバーマスター専用のスキルのようでございますね」
「良いのか?こんなスキル使って」
「サーバーマスターなのですから多少は一般より優位性があって当然かと存じます。私はもっと付けたいと愚考致しますが」
「使い慣れないと宝の持ち腐れってやつだろ」
「それはそうでしょうが……」
「でもそうなるとヒューセ様の使える『復活魔法』と『スキル確認』と『祈り』と『アドバイス』が使えるって事だよな?」
「左様でございます」
「凄い便利そうだな」
「スキル確認は媒体の石が無いと網膜転写になりますのでご注意を」
「そうすると指で触れられないから」
「詳細の確認は出来ないかと」
「そうか~少し残念だな」
「その場合は当教会をお尋ねください」
ヒューセ様が優しげに微笑んだ。いや、また来てねってねだる子供のようだ。
そんな顔したヒューセ様が思い出したように手の中に何か出した。
「マスターハルナ、こちらをお持ちください」
「ん?ロザリオ?」
このロザリオは教会の修道員も持っている物らしく、司祭様の力の増幅器だそうだ。
身に付けていると司祭様の加護の結界に包まれる。
さっきまで着けていたのも、もしもの一般アバターからの干渉が起こらないようにだったそうだ。
「先程まで身に着けて頂いていたものは私のオリジナルでございますよ」
「え?」
「オリジナルは私が守りたい者が身に付けると認識阻害が発生するのです。しかしオリジナルはお譲り出来ず申し訳ございません」
「そ、そこまでは求めてないからな」
慌てて落ち込むヒューセ様をなだめ、肩を叩く。
「復活魔法を考えてもらえるだけでもとても助かるよ」
「そうでございました!まずはこのロザリオに緊急避難の魔法を込めておきます!」
「なんだって?」
ロザリオを握りしめて祭壇に祈ろうをするヒューセ様をちょっと止める。
「お怪我をされてHPが減ったのを感知して教会に転送する魔法でございます」
「かすり傷でも発動したりしないよな?」
「小さな怪我でもどんな状態異常になるかわかりませんので!」
「それは待て!せめて半分にしろ!」
「……畏まりました」
何とかなだめて内容を変更した魔法がロザリオに込められる。
これは『祈り』の効果で、物を持たずに祈るとステータスが少し回復する。
「何か知りたい事があったら、ぜひ当教会にお越し下さいませ」
「大変かもだけど、無理はするなよ。迷惑な冒険者は懲らしめる位でいいと思うぞ」
「畏まりました。ニッコリ」
やっと教会の用事が終わった。
教会の場所はギルドで受け取った地図情報にも載っていた。
何と言っても一般アバターが
『死んでしまうとは情けない』
と言われる場所だから、有意義なお説教が聞けると思う。
情けないって言葉は言われた人より能力が高い人しか言えない言葉だしな。
教会は扉を常時開きっぱなしで誰でも入れる。
天井は高くドーム状だが建築の構造上なのか横の太い梁がいくつも通っていてそこから灯りがぶら下がっている。
天井板が無い家って感じかな。
ネズミや泥棒は隠れられない仕様に潔癖が現れている。
「こんにちは」
「ようこそ当教会へ」
礼拝堂の隅で箒を動かしている修道服の人物に声をかけると定型文が帰ってきた。
「あの」
「今日はお祈りですか?」
ここの祭壇でお祈りをするとスキルの成長か確認できる。
この反応はモブキャラの様なのでギルドで作った身分証のカードを見せる。
「これはこれはサーバーマスター様、おいで頂きましてありがとうございます」
「教会のシステムに詳しい人と話がしたいんだが、空いてるかい?」
「甦りの魔法陣の部屋に司祭様がおられます。礼拝堂側からは通常は入れないようになっておりますが、マスターの身分証カードをドアにかざしていただければ優先的に開けます」
「それはスゴイ」
思わず手に持ったカードをまじまじと見てしまった。
「一般の方が拾っても使えませんので御安心を」
「助かるよ。じゃあ、お邪魔するね」
ハルナは躊躇いなくドアにカードをかざす。
カチッと鍵が外れる音がして、ドアは手前に引けた。
中を覗くと、驚いた顔の司祭様と目が合った。
「そちらからのお客様とは珍しいですね。どちら様で?」
「こう言う者です」
言葉で名乗るのもなとと思ってカードを出して見せる。
今更だけどカードに記載されている職業は『カントウ圏サーバーマスター』となっている。
「当教会へようこそおいで下さいました」
司祭様が丁寧に頭を下げるのを見ると何だかいたたまれない。
見た目が年配者だから俺のような若いのに頭を下げさせるのは恐縮するな。
「こちらは教えを乞いに来た方だから頭は下げないでもらえると助かります」
あ、つい敬語が。
「そうですか。では一般の方へ対応する時と同じ話し方でよろしいですか?」
「結構です」
そんな会話をしていると部屋の魔方陣がブオンッと風の音を立てて光りだした。
驚いて思わず身構えてしまった俺の前に静止するように司祭様が腕を上げていた。
「大丈夫です。何処かで亡くなった一般アバターが転送されてくる合図です。先に対応しますので、此方を着けてお静かにお待ち下さい」
司祭様が俺の首に何かをかける。
ロザリオ?さっきまで司祭様の胸に下がっていたものだ。
大きめの十字架に宝石でゴテゴテ装飾がされている。
再びブオンッと音がして、魔法陣の真ん中に倒れた人間の姿が現れる。
司祭様は円の外に立っている。
うわっ血みどろだ。
司祭様が持っていた杖で円の中をトンと突くと血糊がシュワワ~と蒸発していく。
怪我はそのままだけど。
「アバター再構築」
司祭様が言うと目の前にウインドウが浮かぶ。
一番上に再構築のための費用とあり、次に今回の戦闘での経験値数値。
その下に今回の戦闘中に手に入れた貨幣。
更に下に差引された数値が書かれている。
「少し足りませんね」
司祭様が呟いて魔法陣の中に入っていく。
杖の先を遺体の手の平に載せて呟く。
「カドヴューション」
すると手の平からコインが溢れだし、そのすべてが魔法陣に吸い込まれて消えた。
司祭様が円の外に戻って。
「アバター再構築開始」
ブオンッと魔法陣が輝き遺体が宙に浮かぶ。
体の修復が行われ、装備までキレイに元通り。
こうなっていたのか。
遺体を浮かべたまま司祭様は部屋を出て礼拝堂の祭壇の前に立ち、遺体を祭壇の階段下に降ろした。
礼拝堂の掃除をしていた修道員の皆さんは困ったように眉を寄せていたが手を止めて扉を閉めてから祭壇前に集まってくる。
司祭様が遺体に向かって杖を掲げると先端の石が光って遺体に光を飛ばし、光は反射して天井のステンドグラスに当たって乱反射を起こし、その光は遺体に帰ってきた。
美しい光景だった。
俺も礼拝堂まで付いて来て端っこでコッソリ見てた。
遺体がむっくりと起き上がり司祭様を見た。
「本当に……死んでしまうとは情けない。その身を大事になさい」
「ありがとうございました!」
一般アバターはあっさりと帰って行った。
扉が再び開いたまま固定される。
「お疲れ様です」
思わずそう声をかけていた。
司祭様は黙って眉を下げ奥の魔法陣の部屋に戻ったので俺もついて行った。
「それで、私にサーバーマスターのお役に立てることがございますか?」
「あ~情けない話なんだが引き継ぎ不備があってな。教会のシステムを教えてほしい」
「そういう事でございましたか。では場所を変えましょう」
司祭様が俺の着けているロザリオを持ち上げ優しくキスすると司祭様の姿がブレ、二人になった!
ロザリオは片方の司祭様の胸に戻っていた。
驚いた顔の俺を見て司祭様Sが小さく微笑んだ。いたずらに成功したって顔だ。
「こちらの仕事も休むわけにはいきませんからね。
意識は戻れば共有できますし、便利ですよ」
ロザリオの無い司祭様が移動して何もない壁に杖の石を当てると、扉が現れた。
「こちらへどうぞ」
部屋の中には簡素な木のテーブルと長イス。テーブルクロスと同じ布がイスにも敷かれている。
壁には小さめの祭壇がはめ込まれている。
促されてイスに座り、司祭様も向かい側に座る。
「ではどこからお話しいたしますか?」
「一番大事なことをまず聞こう。サーバーマスターに死に戻りが無いって本当か?」
「システム的にはそうなっておりますね」
「怪我して手足に破損が出来たら治らないって聞いたんだが……」
「回復魔法や薬の効果はありますが、切れたのではなく無くなった場合は最高回復薬が必要になりますね。マスターの為ですが無いものは使えませんのでなかなか難しいと思われます。
一般アバターですとそれに見合う献金が使えますが、初心者が無茶ばかりして手持ちがないのに何度も教会に飛ばされてくるとため息をつきたくなりますね。
いっそ無謀者は裸で放り出してやりましょうか?」
「苦労してるんだな」
テーブルに肘をついてうなだれている司祭様の頭を撫でたくなったので、帽子を取って頭を撫でる。
司祭様は動かない。
「ありがとうございます……」
顔を上げない司祭様は唇を噛んで泣くのを堪えているようだ。NPCなのに苦労しすぎだろ。
俺が隣に移動してくると少し顔を上げたので頬を撫でてやる。
驚いた顔になって開いた唇が赤くなっていたのでそこも撫でる。
「たまには甘えたっていいだろ?」
赤くなって固まったままの司祭様の唇を舐めるように奪いながら髪を撫で首を撫で襟をくつろげる。
堅苦しい服装が乱れる様子が背徳的だがこの場合は素晴らしいと言っておこう。
「ん!」
すべて受け入れる体勢。激しいキスをしなくても首にキスしたら速攻で落ちた。
・教会司祭ヒューセの個人情報
・シンジュ教会の一般アバターブラックリスト
・シンジュ教会の一般献金者一覧
・教会業務一覧
・サーバーマスター用復活魔法作成
え?
出来るのか?
「司祭様?」
「はぁ……ヒューセとお呼びくださいマスターハルナ」
「じゃあ……ヒューセ様。復活魔法作成なんて出来るのか?」
「作って見せます!」
まだのようだな。まあ意欲は買いか。
「あ、いまさらだが、俺の現状のスキル確認を頼んでもいいか?」
「はい!ぜひ承ります」
司祭のヒューセ様は俺の手を取るとすっくと立ち上がって部屋の祭壇前まで優雅に促してくれた。
祭壇の中の観音開きの扉を開くと、中にある丸い球が見えた。
「此方は礼拝室の神像とリンクしておりますので石に触れて頂けますか?」
「ああ」
石に触れた俺の手の上にヒューセ様の手が乗る。
そして何かが送り込まれるような感覚を感じた。
すると目の前にウインドウが開いた。
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榛名
スキル
『レンタル』『魔法攻撃耐性Lv1』『刀術』『命中率UPLv2』『基本魔法』
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「マスターハルナ、情報をカードに記憶させますか?」
「ああ、頼む」
「ではカードは手にお持ちいただきますようお願いいたします」
俺は言われて空いてる方の手にカードを持つ。
そして何か送り込まれる感覚の後、カードがぼんやり輝いて記録が終わったようだった。
「スキルの詳細はウインドウ上でしか確認できませんので、ご確認いただくとよろしいかと存じます」
「そうか。じゃあ」
ウインドウのスキルの字に指で触れると小さいウインドウが開く。
――――――――――---‐
『基本魔法』
すべての属性の最小魔法が使える。
本人のレベルが上がると威力を上げることができるようになる。
『魔法攻撃耐性Lv1』
魔法で攻撃された時のダメージを減らせる。
使う事でレベルが上がる。
レベルが上がると弱い魔法は無効化される。
『刀術』
刃物の扱いが上手くなる。
手に持つと使い方を体で感じる。
体術と併用すると威力が上がる。
『命中率UPLv2』
攻撃の命中率が上がる。
使う事でレベルが上がる。
レベルが高くなると弱点が見えるようになる。
『レンタル』
粘膜接触した人の能力を借りることができる。
随時選択式。本人のスキルは消えない。
――――――――――---‐
最後の、何だこれ!
「『レンタル』はサーバーマスター専用のスキルのようでございますね」
「良いのか?こんなスキル使って」
「サーバーマスターなのですから多少は一般より優位性があって当然かと存じます。私はもっと付けたいと愚考致しますが」
「使い慣れないと宝の持ち腐れってやつだろ」
「それはそうでしょうが……」
「でもそうなるとヒューセ様の使える『復活魔法』と『スキル確認』と『祈り』と『アドバイス』が使えるって事だよな?」
「左様でございます」
「凄い便利そうだな」
「スキル確認は媒体の石が無いと網膜転写になりますのでご注意を」
「そうすると指で触れられないから」
「詳細の確認は出来ないかと」
「そうか~少し残念だな」
「その場合は当教会をお尋ねください」
ヒューセ様が優しげに微笑んだ。いや、また来てねってねだる子供のようだ。
そんな顔したヒューセ様が思い出したように手の中に何か出した。
「マスターハルナ、こちらをお持ちください」
「ん?ロザリオ?」
このロザリオは教会の修道員も持っている物らしく、司祭様の力の増幅器だそうだ。
身に付けていると司祭様の加護の結界に包まれる。
さっきまで着けていたのも、もしもの一般アバターからの干渉が起こらないようにだったそうだ。
「先程まで身に着けて頂いていたものは私のオリジナルでございますよ」
「え?」
「オリジナルは私が守りたい者が身に付けると認識阻害が発生するのです。しかしオリジナルはお譲り出来ず申し訳ございません」
「そ、そこまでは求めてないからな」
慌てて落ち込むヒューセ様をなだめ、肩を叩く。
「復活魔法を考えてもらえるだけでもとても助かるよ」
「そうでございました!まずはこのロザリオに緊急避難の魔法を込めておきます!」
「なんだって?」
ロザリオを握りしめて祭壇に祈ろうをするヒューセ様をちょっと止める。
「お怪我をされてHPが減ったのを感知して教会に転送する魔法でございます」
「かすり傷でも発動したりしないよな?」
「小さな怪我でもどんな状態異常になるかわかりませんので!」
「それは待て!せめて半分にしろ!」
「……畏まりました」
何とかなだめて内容を変更した魔法がロザリオに込められる。
これは『祈り』の効果で、物を持たずに祈るとステータスが少し回復する。
「何か知りたい事があったら、ぜひ当教会にお越し下さいませ」
「大変かもだけど、無理はするなよ。迷惑な冒険者は懲らしめる位でいいと思うぞ」
「畏まりました。ニッコリ」
やっと教会の用事が終わった。
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