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序章、第一話
大丈夫、危ないことはしないから
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◆
「スズメ!」
「ヨル!・・・・・・とロム」
「僕の顔みて嫌そうにするのやめてくれる?」
当主が自警団に話に行った後、スズメとユウギリのところにヨルとロムがやってきた。スズメは久々にみるヨルの姿に素直に喜んだ。それはヨルも同じようで何処にも怪我がないか確認されたあと、思い切り抱き締められる。
「無事でよかった!」
「ちょ、ヨル! 苦しいっ」
「それくらい我慢するんだね。この馬鹿が君をどれだけ心配してたか」
ぎゅうぎゅうと力を入れられて悲鳴を上げると、隣に立っているロムが意地悪そうに笑った。どうやら助けてくれるつもりは無いらしい。心配をかけたのは悪かったが、少し愛情表現が過ぎるのではないだろうか。親もなく、今まで愛情を注いでくれる相手に恵まれなかったスズメにはヨルの行動の意味が分からなかった。ヨルは「良かった」「死んだかと思った」と繰り返し呟きながら大粒の涙を流している。抱き締め返すべきだろうかとも思ったが、さっきから勝手に身体が固まって動けない。慣れていないのだ、こういうのには。結局何も出来ずにヨルが満足するまで揉みくちゃにされ、スズメはぐったりと床に腰を下ろした。
「どうしたスズメ!? 座り込んで具合が悪いのか!?」
「いや! 大丈夫! 元気だから!」
勘違いしたヨルがまた心配そうに近付いてきたので危険を察してすぐに立ち上がる。
抱き締められるのは嫌ではないのだが、とても疲れるので暫く遠慮したい。今度はロムも止めに入ってくれて「話が進まないからその辺にして」とヨルを引き剥がしてくれた。
「それで? 無事ならどうして施設に戻って来ないの?」
腕組みをして此方を見下ろすロムの姿はなかなかに迫力がある。しかしここで負ける訳にはいかない。
「俺にもここで出来ることがあると思って・・・・・・クーデターを企ている連中を見張ってるんだ。それに施設に帰ったら、施設にいる仲間達を危険に晒すことになる」
トコヤミ達はスズメがクーデターに気付いていることを知っている。きっと今頃いなくなったスズメを血眼で探しているに違いない。クーデターの計画を外に漏らされる前に今度こそ息の根を止めようとしてくる筈だ。そんな中で堂々と施設に帰れば、施設を襲撃されるかもしれない。スズメ以外に称号持ちもいない状況でそのような事態になるのは絶対に避けたかった。施設に帰れないのであれば此処でユウギリと共にトコヤミ達の動向を見張ろうと思ったのだ。しかしヨルとロムは顔を見合わせて顰め面をしている。
「あのね、スズメ。君はまだ訓練生なんだよ?」
「そんな危ないこと今すぐやめるんだ」
二人は自警団で匿おうとか、ここから安全に連れ出すにはなどと話し合っている。
けれどスズメの意思は固かった。
「俺、ここから離れないよ」
「スズメ!」
「あのさ、連中は俺のこと探してると思うんだ。だってクーデターのことを知っているのは俺だけだし」
もしかしたらスズメを助けたザンヤにも情報が漏れていると思われているかもしれないが、ザンヤが身内を売るとまでは考えていないだろう。だとすれば気を付けなければいけないのはスズメの方だ。
「俺が自警団にいると万が一連中にバレたら、クーデターの計画に何か変更が出るかもしれない。せっかくゴトウシュサマがお忍びで護衛もつけず自警団に依頼しに行ったのが水の泡だ」
少しでもリスクは避けたいのだと言えばヨルとロムは渋い顔で閉口した。二人とも今までのスズメとの会話でトコヤミ達が施設や自警団を見張っている可能性に思い至ったのだろう。
「大丈夫、危ないことはしないから」
続けて言い募ればはぁとロムの方が溜め息をついた。
「ここで何もせずじっとしているなら見逃してあげる」
「ロム、それはっ!」
「自警団だって百パーセント安全だって訳じゃない。君の妹さんには僕たちがスズメを探していることには気付かれているだろう。このままスズメを探し続けている振りをする方がいいかもしれない」
スズメは行方不明のままとした方が安全だと判断したのだろう。ロムは渋々といった様子でスズメの提案を受け入れた。ヨルはまだ納得していない様子だったが、最終的には「絶対危ないことはするな」と言い含めてロムの考えに従う。二人はスズメをまだ探している振りをしながら時々スズメの様子を見に来ることにして、部屋を後にした。名残惜しそうなヨルに笑顔で手を振ってスズメはよし、と気合いを入れる。こうなった以上は絶対クーデターを止めてやる。
スズメは二人から言われた言葉も忘れ、一人意気込んだ。
「スズメ!」
「ヨル!・・・・・・とロム」
「僕の顔みて嫌そうにするのやめてくれる?」
当主が自警団に話に行った後、スズメとユウギリのところにヨルとロムがやってきた。スズメは久々にみるヨルの姿に素直に喜んだ。それはヨルも同じようで何処にも怪我がないか確認されたあと、思い切り抱き締められる。
「無事でよかった!」
「ちょ、ヨル! 苦しいっ」
「それくらい我慢するんだね。この馬鹿が君をどれだけ心配してたか」
ぎゅうぎゅうと力を入れられて悲鳴を上げると、隣に立っているロムが意地悪そうに笑った。どうやら助けてくれるつもりは無いらしい。心配をかけたのは悪かったが、少し愛情表現が過ぎるのではないだろうか。親もなく、今まで愛情を注いでくれる相手に恵まれなかったスズメにはヨルの行動の意味が分からなかった。ヨルは「良かった」「死んだかと思った」と繰り返し呟きながら大粒の涙を流している。抱き締め返すべきだろうかとも思ったが、さっきから勝手に身体が固まって動けない。慣れていないのだ、こういうのには。結局何も出来ずにヨルが満足するまで揉みくちゃにされ、スズメはぐったりと床に腰を下ろした。
「どうしたスズメ!? 座り込んで具合が悪いのか!?」
「いや! 大丈夫! 元気だから!」
勘違いしたヨルがまた心配そうに近付いてきたので危険を察してすぐに立ち上がる。
抱き締められるのは嫌ではないのだが、とても疲れるので暫く遠慮したい。今度はロムも止めに入ってくれて「話が進まないからその辺にして」とヨルを引き剥がしてくれた。
「それで? 無事ならどうして施設に戻って来ないの?」
腕組みをして此方を見下ろすロムの姿はなかなかに迫力がある。しかしここで負ける訳にはいかない。
「俺にもここで出来ることがあると思って・・・・・・クーデターを企ている連中を見張ってるんだ。それに施設に帰ったら、施設にいる仲間達を危険に晒すことになる」
トコヤミ達はスズメがクーデターに気付いていることを知っている。きっと今頃いなくなったスズメを血眼で探しているに違いない。クーデターの計画を外に漏らされる前に今度こそ息の根を止めようとしてくる筈だ。そんな中で堂々と施設に帰れば、施設を襲撃されるかもしれない。スズメ以外に称号持ちもいない状況でそのような事態になるのは絶対に避けたかった。施設に帰れないのであれば此処でユウギリと共にトコヤミ達の動向を見張ろうと思ったのだ。しかしヨルとロムは顔を見合わせて顰め面をしている。
「あのね、スズメ。君はまだ訓練生なんだよ?」
「そんな危ないこと今すぐやめるんだ」
二人は自警団で匿おうとか、ここから安全に連れ出すにはなどと話し合っている。
けれどスズメの意思は固かった。
「俺、ここから離れないよ」
「スズメ!」
「あのさ、連中は俺のこと探してると思うんだ。だってクーデターのことを知っているのは俺だけだし」
もしかしたらスズメを助けたザンヤにも情報が漏れていると思われているかもしれないが、ザンヤが身内を売るとまでは考えていないだろう。だとすれば気を付けなければいけないのはスズメの方だ。
「俺が自警団にいると万が一連中にバレたら、クーデターの計画に何か変更が出るかもしれない。せっかくゴトウシュサマがお忍びで護衛もつけず自警団に依頼しに行ったのが水の泡だ」
少しでもリスクは避けたいのだと言えばヨルとロムは渋い顔で閉口した。二人とも今までのスズメとの会話でトコヤミ達が施設や自警団を見張っている可能性に思い至ったのだろう。
「大丈夫、危ないことはしないから」
続けて言い募ればはぁとロムの方が溜め息をついた。
「ここで何もせずじっとしているなら見逃してあげる」
「ロム、それはっ!」
「自警団だって百パーセント安全だって訳じゃない。君の妹さんには僕たちがスズメを探していることには気付かれているだろう。このままスズメを探し続けている振りをする方がいいかもしれない」
スズメは行方不明のままとした方が安全だと判断したのだろう。ロムは渋々といった様子でスズメの提案を受け入れた。ヨルはまだ納得していない様子だったが、最終的には「絶対危ないことはするな」と言い含めてロムの考えに従う。二人はスズメをまだ探している振りをしながら時々スズメの様子を見に来ることにして、部屋を後にした。名残惜しそうなヨルに笑顔で手を振ってスズメはよし、と気合いを入れる。こうなった以上は絶対クーデターを止めてやる。
スズメは二人から言われた言葉も忘れ、一人意気込んだ。
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