俺が少女の魔法式≒異世界転移で伝承の魔法少女になった件について

葵依幸

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1-2 女の子と黒猫

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「……へ……、へ……、え……?」

 お尻を打ったらしい、ジンジンと腰が痛んだ。
 周りの景色は教室から一転し森の中。
 崖の上から静かに滝が流れ落ち、僕が呆然と使っている湖へとなっていた。

「な……なんだ……ここ……」

 鬱蒼と茂った木が周囲を取り囲み、「ギャアギャア」と聞いたこともないような声を上げて頭上を鳥が飛んでいく。
 味わったことの無いような濃密な自然の香りと、ポタポタと頬に滴り落ちる雫が非現実感を増していった。

「ぁ、あの……?」
「へ……?」

 ぴちゃん、と水の落ちる音。
 ふと声をかけられ振り返った先ーー、そこには……、

「……ど……どなたですか……」
 怯えきった表情でこちらを伺う、『裸の少女がいた』。


「じゃfw時事fsジェイおr;jが瀬drftgyふじこ!??!?!?」
「きゃぁああああ!?」


 思わず飛び上がるとつられて驚いた少女も悲鳴をあげる。
 二人一緒に悲鳴をあげて、二人一緒に固まった。

「ぁ……あの……ここはどちらで……?」
「ここは竜宮の泉ですが……何故こんなところに……?」
「い……いえ……私にも……ちょっと……」

 ギクシャクと答えながらチラチラとどうしても気になって眺めてしまう。
 白い肌、長い髪。僅かに成長仕切っていない胸を押さえて頬を赤く染める姿は何だかこうっ……、

「うぁあああっ!!!」
「!?」

 ボシャンッと頭から水に浸かり頭を冷やす。

「(うぅうう……)」

 ぶくぶくと泡を溢しながら冷静に考えを巡らせた。
 良くない、良くない……! 女の子の裸を見ることは良くない……!!

「ぁ……あの……」
「ひゃいッ!?」

 肩を突かれて思わず飛び上がり、つられて振り返ってしまう。
 飲み込まれてしまいそうなほどに真っ直ぐな瞳が僅かに青色に染まった透明な銀髪での中で見つめていた。

「な……なんでしょう……」
「悪いお方では……ないんですよね……?」
「た……多分……」

 悪いと思いながらも目を反らせずにいると頭の中で声が響いた。

「……っ?」

 聞き覚えのあるその声に慌てて声の主を探す。
 見たこともないような木、登るのは到底不可能だと思われるような崖、……なんか……変なカエルみたいな蛇みたいな生き物ーー、……声を探してぐるぐる視線を巡らせ、そうして、

「(あかり!!)」
「そこか!!」

 声の主を湖(泉)の中で見つけた。

「大丈夫か!?」
「げほっげほげほっ……」

 そして、その体を持ち上げ……、僕は呆然とする。
 上から下まで、自分でもどうかと思いながらその結梨の裸体を観察してしまう。

「ゆ……ユーリ……?」
「なによぉ……」
「本当にユーリなのか……?」
「……は……?」

 そうして結梨の目が驚愕に見開かれる。
 ユーリは……俺の幼馴染の猫山結梨はーー、……その名の通り、『猫に』なっていた。

 ……ちなみに黒猫。

「……にゃー……?」

 ……黒い髪が綺麗だったから黒猫……?
 首を傾げる僕に対し、言葉を失っていた結梨もようやく口を開いた。

「……あんたこそ……本当に燈なの……?」
「え……?」
「だってその顔……その体ーー……、」

 視線を結梨から水面へと。
 そこに映る自分の姿へと移し、そしてーー、

「は……?」

 自分が、『見たこともない美少女になっていることに』絶句した。

「な……なんだこれ……」

 服装は学生服のままだ。

 学ランは脱いでいたからかカッターシャツにスボンを履いている。
 でも、その胸は僅かに膨らみ、ベルトもあっていないからかズボンはずるりと今にも落ちそうになっている。

「なんで女になってんだ!?」

 ていうかあれだ!? 女の子だ!!!
 ペタペタと顔やら胸やら触ってみて明らかに男の体とは違う「柔らかさ」みたいなものがあって、「うわわわわわ!?」自分の体なのになんかすごい違和感がある。っつーか、なにこれ!?

「知らないわよ! 私の方こそ明らかにおかしいでしょ!?」

 猫山だから猫……?
 妙に変なところだけ冷静になったけどその理論だと僕の方はどういう理屈なんだっ……?

「ぁ……あのぉ……」
「ひゃいっ……!?」

 突然後ろから声をかけられ、思わず声が裏返ってしまった。振り返るとあの少女が訝しげにこちらを見ている。

「あ……あの……これはそのっ……」

 我ながら情けないほどに動揺してあれこれ言いわけを考えてみるけど、何を言い訳すればいいのかすらわからない。
 というか、裸を見てしまった(見てしまっている)のは謝罪すべきことなんだろうけど今僕は女の子なだけで、女の子が女の子の体を見るのは別に問題がなさそうな話だけど、でも僕は男の子なわけで……!

「なにを先ほどから一人でぶつぶつと……?」
「い、いやぁ……これには深い訳が……!」

 とりあえず落ち着いて整理しよう! お互いに!
 そう自分に納得させようとすると突然少女が悲鳴をあげた。

「なっ、なに!?」
「でっ……伝説の神獣様!?」

 小さな胸を隠していた手で驚きを隠そうとする。

「やっ?! 隠すとこ違う!!」

 思わず僕は自分の目を覆った。

「どっどうしてこんなところに……!」

 チラチラと指の間から様子を伺うと、その目は僕の抱えている結梨こと黒猫に注がれていて、顔色は真っ青になったり真っ赤になったり慌ただしく変化していた。

「神獣様が竜宮の泉に……?! でもだってそんなここにはどうして……!?」

 良くわからないけど彼女も彼女で混乱しているようだ。

「…………はぁ……」

 おかげで一周回って僕の方が冷静になれた。
 つまり……これはアレだ……。

「あのさぁ……」
「はいっ!!!?」
「とりあえず……服……着ない……?」

 目のやり場に困る。

「し、失礼しました!!!」
「あはは……」

 少女は可愛らしいお尻を見せながら岸へと上って行き、そんな後ろ姿を眺めていた僕は、結梨に思いっきり顔を引っ掻かれた。

 猫のひっかきは、かーなーり、痛い。
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