『少女、始めました。』

葵依幸

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【2】始めましてでしょう女。

2-2

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「ねー、何処行くんですー?」

 ひょこひょこと後ろから顔を出しながら俺の後ろを付いてくる姿はまるでひな鳥だ。
 そんなペットは無視してエレベーターのボタンを押す。

「あのー、無視しないで頂けますかー?」

 以外にも早く俺たちを迎え入れた箱に乗り込みそのまま4階上のフロアへ――、到着だ。

「んんぅ……?」
「ここだよ」

 共同の廊下を少し歩いて角を曲がった先にその家はあった。1008号室、「阿佐ヶ谷」と掲げられた標識を確認してからインターホンを押すとしばらく間を置いて「はい」と返事があった。

「先程連絡させてもらった佐々木だ」

 告げると「ああ、ちょっと待ってて下さい」とスピーカー越しに声が聞こえ――扉が開いた。

「いらっしゃいませ」

 ぺこりと頭を下げたのは長い黒髪の黒髪の女の子だった。十代後半……だろうか。長いロングスカートと淡い水色のブラウスが落ち着いた、清楚な雰囲気を醸し出してる。

「突然悪かったな。佐々木晋也だ。こっちは――……ん? どうした」

 振り返ると頬を膨らませたバカ面が目に入った。

「すねてるんですッ」
「…………」
「あらまぁ、可愛らしい子ですね。お名前は?」

 軽く腰を屈め、視線の高さを合わせる姿は自然と“お姉さん”という言葉を連想させる。

「こういう時は自分から名乗るのが常識ですよっ!」
「あらあら、それはごめんなさい?」

 微笑み、軽く頭を下げる。何を勘違いしているのか偉そうに指摘する姿になんだか俺が恥ずかしくなって来た。

「すみません。こいつバカでなもんで」
「いいんですよ」

 微笑む表情は柔らかく、可愛らしかった。さぞかし同年代の間ではモテるんだろうな――、なんて考えているとドタドタと足音がして中から男の子が姿を現した。

「ミコノ、何してるんだ?」
「圭介くん、すみません……」
「いや、別に構わないけど……おっさんが佐々木さん?」
「ああ、佐々木晋也だ。急に訪ねて悪かったな」

 ミコノと呼ばれた少女と同じぐらいの年齢だった。多分高校生ぐらいだろう。体格はいい方ではなく、如何にも温室育ちの栄養が足りてないって感じだ。眼鏡の奥で細い目が俺を睨む。

「……阿佐ヶ谷圭介です。どうぞ中に。ミコノ」
「はい」

 愛想が悪いだけで敵意がある訳では無いらしい。俺たちを案内するのは少女の役割らしくそのまま奥に引っ込んで行ってしまった。

「すみません、彼少しだけ人付き合いが苦手な物で……」
「ああ、気にしないでくれ。人と話すのが苦手なのはお互い様だ。――邪魔するぞ」
「はい」

 言って玄関を潜る。当然ながら間取りはウチと同じような物だった。ただ散らかり放題のウチとは違い、手入れの行き届いた――それこそ、気品に満ちた家具が余裕を持って配置されている。

「ほぉー……、なんか高そうな花瓶ですね……」

 靴箱のすぐ上に飾られているそれは確かに値が張りそうで、生けられている花も一輪挿しではあるが寧ろそれが品の良さを醸し出していた。

「……君が掃除を?」
「ええ」

 俺たちが脱いだ靴を丁寧に並べ直すミコノは嬉しそうに微笑む。

「部屋が綺麗ですと心も美しくなると言いますから」
「……なるほどな」

 部屋が心を映し出す、というのは聞いた事がある。あながち間違っちゃい無いのかも知れないな。

 ――とはいえ、何だが息が詰まりそうだ。

 清潔に保たれすぎている。理路整然と並ぶそれらは中にいる俺達にまでそれを強要して来るような物を感じる。

「こちらへどうぞ」

 先を行く少女に案内されリビングへと。

「座って」

 先にソファーに腰掛けていた少年が向かい側を勧めてくる。少女は台所に向かい、お茶を入れ始める。俺の視線に気付くと微笑み、ソファーを促す。だがどうにもその仕草は腑に落ちず、また部屋が綺麗すぎる事もあってか落ち着かない。 

「おい、早く座れ」

 それはバカも同じだったようでうろちょろと動き回る姿に命令し、俺も腰掛ける。ふわりと沈み、適度に反発する感覚が値の張る物だと主張していた。何となく想像はついていたものの、やはりこの「サービス」を利用している層というのは相当の富裕層らしい。一般市民には知られざる、金持ちの道楽――、そんな言葉が浮かび呆れる。くだらない事を考えつく奴らもいたもんだ。

「……で聞きたい事ってなに?」

 切り出したのは少年の方だった。

「ボクも最近飼い始めたばかりだから、あんまり答えられないかもしれないけど」

 その視線は丁度紅茶を持って来たミコノに向けられていた。分かってはいたものの、やはり少女の事を「飼う」と言う姿を見るとあまり居心地の良いものじゃない。

「……そうか、やはり彼女が君のパートナーだったんだな」
「ああ、ミコノだ。ボクのパートナーにしてボクの彼女です」
「……は?」

 紹介されたミコノは恥ずかしそうに俯くばかりだ。まるでそれが本当にそうだというように。

「彼女だと……?」
「そうだよ、ボクの恋人だ」
「ロボットと恋愛をしてるのか?」
「もちろん」

 おかしなことを言っているのは俺の方だと言わんばかりの態度だ。隣で座るバカを見ると俺と同じように驚き、目を丸くしていた。

「コイツらに……恋?」

 見合わせる。大きな目が同じように見つめ返し、あり得ないと言わんばかりに首を振った。

「……気は確かか?」

 確かに精巧なロボットかも知れないが所詮機械だ。第一、そんなものは――、

「そんな事より、聞きたい事があるんじゃないの?」

 俺の態度が気に触ったのか若干不機嫌そうになりながらも話を促す。

「ああ、そうだな……」

 まぁ別にこの少年と少女がどんな関係でも俺の知ったこっちゃ無い。自由恋愛、どうぞお好きにやってくれれば良い。人の人生に兎や角言う為にわざわざ訪れた訳じゃない。お言葉に甘えさせていただき、さっさと本題に入らせて貰うとする。

「まず、こいつらは何なんだ。朝起きたらいきなりデカい段ボールに入ってたんだが」

「ああ、それはボクも同じ。ネットで書き込みを見つけてクリックしたら翌朝ミコノが部屋に居た。母さんに説明するとき少し手間取ったよ」
「コイツを家族に紹介したのか?」
「まあね。ロボットだって言っても信じてくれないだろうから家政婦雇ったって言ったけどさ」
「家政婦なぁ……」

 圭介の後ろで立っている少女に目をやると案の定目が合った。こちらの調子を伺うような微笑を浮かべ、主人に仕えている。それなのにウチのと来たら……。

「――おい、食い過ぎだぞ」

 テーブルの上に置かれていた洋菓子をつまみに摘んでいたバカに釘を刺す。多少の礼儀作法は知っているはずなんだが――、

「だってミコノちゃんがどうぞって言うから」
「それに下って食い過ぎだバカ」
「良いんですよ? いっぱい有りますから遠慮しないでね」
「はいっ!」

 この差は一体なんなんだ……。育成ゲームの機能でも着いていて、その内に色々覚えるんだろうか? それじゃまるで子育てじゃないか――、

「ん……? どうしましたご主人?」
「なんでもねぇよ」

 こんな餓鬼は死んでもいらねぇ……。

「じゃあ圭介、もう一つ聞かせてもらうがコイツらは一体――、」
「ちょっと待った」

 気を取り直してまた質問しようとすると不機嫌そうな言葉に遮られた。

「さっきからコイツらコイツらって、名前で呼んであげなよ。可哀想だよ」
「……ああ、悪い」

 そうだコイツはハートフルなんとかに恋する男の子だった。きっと人形とかに名前をつけて遊んでる奴らと同じなんだろう。理解出来んがな――。

「コイツらが――、マキやミコノ達は一体なんなんだ」
「一体なんなんだって言われても……、一体何を答えれば良いのさ? ハートフルパートナーって説明されたでしょ? 会社案内やマニュアルを見れば大抵の事は書かれてるし、それ以上の説明なんて無いと思うけど――……おじさんてもしかして馬鹿なの?」
「…………」

 言い返しそうになるがグッと堪えた。こんな子供相手に怒ったって仕方が無い――が、なんかコイツが来てから我慢する事がかなり増えてないか……?

「?」

 当の本人は頬いっぱいに菓子を頬張り知らんぷりだ。余りにも腹が立ったのでその手に持っていたものを一つ奪い、口の中に放り込む。マカロンだった。

「欲しいなら欲しいって言えば良いじゃないですかー」
「黙って食ってろ」

 その手にテーブルの上のそれを乗せてやる。

「食うなとか食えとかどっちなんですかー!」
「お前が目障りにならなきゃ何でも良いんだよ」
「きーっ! 酷いですーっ!」

 ったく、話が進まない……。

「――――で、だ……。悪いが少々想像力に欠けるものでな……? イマイチこの子達がどういう目的で派遣されてるのか分かってないんだ」

 なんとか精一杯下手に出たつもりだった。頬はひくついていたかもしれない。

「目的ねぇ……」
「何のメリットがあって未来創造館とやらがハートフルなんとかを派遣してるのか、そもそもそれって怪しい宗教団体じゃないのか? コイツや――その、ミコノだって、本当にロボットかどうか確かめる手段は無いだろ。もしかすると大掛かりな詐欺だって可能性だって捨てきれない。そうだろ?」

 ロボットかどうかについては確かめる方法は無くは無いんだろうが、倫理的にどうかと思うしな。

 圭介はしばらく悩み、幾分か俺を舐め回すように伺い――、

「分かった、ボクの師匠の所に案内するよ」

 突然立ち上がった。

「師匠……?」

 圭介はミコノにメールを送るように指示をし「そう、師匠だ」と不敵に笑ってみせた。
 その姿に隣でバカは目を輝かせていたが――、

「……なんだか嫌な予感しかしないな」
「ふぇ?」


 そうしてその予想は的中する。
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