6 / 81
始まりは
高校生になってから5
しおりを挟む顔の腫れも落ち着いて、高校にもいつものように通いだした。
和真もものすごく心配してくれた。
嬉しかった。
もう一つ嬉しかった事がある。
それは俺の発情期が来なくなった事だった。
予定日を過ぎても発情期のようなものは来ず、一応いつもの病院にいって検査もした。
心の問題や、ホルモンのバランスの崩れから発情期が止まる事は若いうちは良くあるらしい。
その結果はもちろん病院から秋人に伝わったみたいで、発情期の時期を過ぎても秋人から直接連絡が来ることはなかった。
両親も気を遣ってなのか、その件に関しては触れられる事がなかった。
「あーー、発情期が来ない生活ってサイコー」
「まーたそんなことを言って…」
すべてあった事を和真だけには伝えていた。
「嫌いな秋人の顔を見なくてすむ。俺がΩだって実感しなくていい瞬間が減る事は幸せな事だよ?」
「そっか…」
曖昧な表情をする和真。
和真の言いたいこともわかる。
けれど、俺には今が幸せでしかなかった。
発情期がこない番なんてさっさと番を解除してほしいくらいだった。
一年生が終わり、高校二年生になっていた。
俺と秋人の関係は変わらないまま、発情期も来ないまま、平凡な日常が訪れていた。
「ただいま」
そう言って、いつものように帰宅する。
「おかえり、今秋人君が来てるわよ」
そう母親が嬉しそうに言う。
「……はぁ?」
急いで2階に上がり、俺の部屋を開けると、本当に秋人がいた。
「俺の部屋でなにしてんの」
俺はいかにも嫌そうな顔見せる。
久しぶり、元気にしてた?なんて声を掛けるはずもない。
「雪を待ってた」
そりゃみりゃわかるけど、とは言わず、俺はカバンをおいて、ブレザーをクローゼットに閉まった。
「今日、お前の誕生日」
「へ?あーそうだったか…」
「俺の誕生日は先月終わった」
あー、全く忘れていた。
自分の誕生日も、秋人の誕生日も。
だって、生まれたことに感謝するような人生ではなかったからだ。
母さん父さんごめん。
ぼんやり立っていた俺を秋人は抱き寄せると、そっと首元に触れる。
「っ…!」
うなじの噛み痕を触られるのは慣れない。
ぞくぞくと刺激が身体を走る。
今日は珍しく優しいオーラの秋人はそのまま顔を寄せて俺の唇を奪った。
「っ、ん…」
ついばむような優しいキスだった。
コイツにもこんな事が出来るのか、とぼんやり考えていた。
その後は会話もなく、ただ抱きしめ合った。
触れるのは、あの事件以来だった。
母が、誕生日だからと奮発した料理とケーキを秋人と食べた。
もちろん俺は発情期ではないから、その夜秋人は自分の家へと帰って行った。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる