幸せを噛みしめて

ゆう

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新しい世界

夏休み旅行記~ブルームン王国編3~

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 どうして時間とは有限なのだろう。幸せな時間はあっという間。秋人と海外旅行は時間がゆっくり過ごせて、穏やかな毎日だった。
 別荘を中心に温泉や植物公園にも行った。それだけで俺は十分旅行欲が満たされた。

 秋人も仕事は電話や午前中にさらりとこなすぐらいで、ほとんど俺との時間に使ってくれた。
 きっとお仕事沢山溜まってると思うけどごめんなさい。 

 そう思っていた頃、秋人がちょっと真面目な顔で今日は大事な話しがあると言い、人払いをした部屋に呼ばれた。

「…話しって?何か問題でも起きた?」

 飲み物だけは用意してあり、俺はレモンのいい香りがする紅茶をカップに淹れながら秋人の前の椅子に座って話を聞く。なんとも言いにくそうな秋人、秋人に言いにくい事なんてあるのだろうか?


「……嫌なら断ってくれてもかまわないのだが…」

 と、歯切れの悪い前置きを言うと、嫌々口を開いた。

「第三王子である煌弥こうやが夏休み明けからうちの学園に通いたいと言っているんだ」

「…………え!!?」

 第三王子って、俺を夜伽係にしてやろうなんて言って無理矢理抱いた子だよね…。もう関わる事もないだろうと思っていた名前を聞いて、俺は思いっきり目を見開いた。

「王族は基本学校には通わず、優秀な講師が付き、王宮で王族としての勉強を学ぶ事になるんだが…」

二人の間に沈黙が流れた。

「王子が三人居ただろう。あの三人の母親は全員違い、腹違いの兄弟なんだ。まだ子供の出生率と生存率が低かった頃に産まれたのが第一王子と第二王子で、その頃の王宮はとにかく後を継がせる子を作る為、後宮は沢山の人が住んでいた。

もちろん子が成せないものはそこに住み続ける事は出来ない。俺達からしたら異様にも思えるかもしれないが、権力のある所はこういったことが普通だったらしい」

 俺は秋人が語る、王族に関する話に耳を傾けていた。
 番がある世界では複数の奥さんを持つことはない。αは番のΩに執着心を見せ、Ωは番のαに依存する。β同士の間では浮気や不倫、略奪愛なんて映画やドラマが流行ったりしていることも知っていたが、αやΩは繋がりは強いため、そういった世界はどこか知らない世界の事様に思っていた。

「しかし、それも俺が開発した薬や医療環境によって解決。後宮に人を沢山呼ぶ事はもちろんそれなりにお金がかかるから、今はもう閉鎖に近い。王子を産んだ三人の王妃様が住んでいるくらいだ。

その中でも第三王子を産んだ王妃様は、跡継ぎ問題が解決された後に出来た王様の唯一の政略結婚ではない愛した方だ。つまり第三王子は愛する相手との子供。それは大層甘やかされて育ったそうだ」

 なるほど。初めて出会った時のあの傲慢で俺様な感じは今まで自分の我がままが通ってきたからだろう。
 なんとなく想像がついてうんうんと頷く。

「正直あんな事をされた雪には頼みたくない事なんだが、陛下たちから第三王子の煌弥を王族として正して欲しいと頼まれたんだ」

「えぇ…!?」

「あの後から煌弥は雪に会いたいと、合わせないと何もしないの一点張りらしい」

 はぁとため息をつく秋人。煌弥の我儘に困り果てた陛下たちは、あんなことがあり頼みにくいのを承知の上で秋人に連絡を入れたのだ。

 乱暴をした煌弥の事は殺したいくらい憎いと秋人は漏らすが、放置するわけにもいかないと思っているのだろう。
 陛下や王子達の事を大切に思っているのは知っているし医者としての血が騒ぐのか秋人は人が困っていると助けてしまうタイプだ。

「いいよ…、俺達でなんとかしよう!」

 正直乱暴をされるのはもうこりごりだが、俺達の上に立つものがああでは困る。
 俺に何が出来るかは分からないけれど、相手が俺と会いたいと言うならば話はいくらでもできるだろう。
 秋人は複雑な表情だが、俺が受け入れたの見てほっとため息を漏らす。

「手のかかる子供が一人増えたみたいだ」

「確かに…」

 夏休み明けに大きな問題が増えたなぁと思いながらも俺達は昔のまだ慣れなかった子育ての思い出を語りながら紅茶を啜った。

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