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しおりを挟む「さて、お忙しい中お集まりくださりありがとうございます。王太子殿下よりお話があるとのことです」
私が初めて会った王太子の側近の一人というアーダルベルト卿がニック、リヒャルト、国王夫妻が集まった客間で口を開いた。
王妃はちらちらと国王と息子の王太子に交互に視線を向けている。私はリヒャルトに『何が始まるのですか』と耳打ちをした。
「おい!リヒャルト!エレオノーラ王女は私の婚約者だから!」
テオバルトが叫ぶと、リヒャルトが端麗な眉を顰めた。
「おや、自覚があるとは知りませんでした」
きつーい嫌味と寒風を食らって、思わずたじろぐテオバルト。アーダルベルトがテオバルトに向かって
「まず、今までの態度を謝らないと。急に手のひら返されてもエレオノーラ王女も受け入れることは難しいのでは?」
と言う、とてもまともな忠告をした。まあ、私個人としては謝罪されても、今までの行いが酷すぎて、許しますなんて簡単に言えないけど、国対国の公的な関係から行くと許すべきなんだろうけれど。迷うところよ。
と考えていたらテオバルトがいきなり正座した。床によ。王太子がよ。
「今までの行いを反省している。番にこだわるばかりにきちんと自分の婚約者に向き合わないなんて愚かだった。我が国の方が強大だからと言って、嵩にかかって上から命令したくない。対等な立場で、一から婚約者としての関係を構築してくれないだろうか。今までの振る舞い誠に申し訳なかった!」
と言って手をついて頭を下げた。周りはしーんとなった。それはそうよね。彼はこの大陸一の王国の最強のトップなのだ。国王はいても軍を掌握している王太子が実質的トップだ。その彼が弱小国の一王女に過ぎない私に頭を下げている。しかも這いつくばって。
彼の側近達も謝れと言ったけれど、王太子がここまですると思ってなかったようで、驚愕に目を見開いている。だれも口を開かないので、仕方なく私は王太子に近づいた。
「とりあえず立ってください」
そう言うと王太子は上目で目を潤ませて私を見つめた。
なんとなく可愛いじゃないと思った私はちょろいかも。
竜眼は見たことないからどんな風か知らないが、この先祖返りの眼は人間と変わらないなぁとぼんやりとそう思った。
「エレオノーラ?」
おずおずと声をかけられて、はっとした。とにかく王太子の手を取って立ち上がらせた。私より頭一つ大きい。その美丈夫にものを言うために私は腰に手を当て背伸びをした。なんのため?そりゃ小さい自分を大きく見せるためよ。
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