18 / 60
第一部
18
ジークハルトはあまりの衝撃にまんじりともできなかった。寝起きは最悪だった。
それでも仕事はまだ沢山待っている。なんとか身支度して、最近はニーナもジークハルトが令嬢に見染めてもらえるように飾り立てる事を諦めたようだ。無言で使用人達に見送られて、のろのろと馬車に乗って登城した。
足取り重く執務室に向かう。ああ 陛下がクラリッサ色好み王女のもてなしをしろと言ったらどうしよう……私の貞操が風前の灯火だ。
執務室に入ると文官達が挨拶してきた。奥に目をやるとユリウスがいた。ジークハルトに続いてカイルが入ってきたのを見たユリウスは二人を執務室の小部屋に誘った。
「昨日はご苦労だった。クラリッサ王女の相手は大変だったろう」
「はい まさか肉弾戦で来るとは」
「扉を砕いた二人は逮捕されて牢に入れた。王太子の執務室の扉を砕いたのだ。重い罪になると思う」
「あの二人はクラリッサ王女が母国から連れて来たわけではない?」
「クラリッサ王女は兄の国王に逆らって出国してきているので、供は連れてこれなかった。あの二人はこの国に入国したときに世話をした貴族が当てがった供のうちの二人だ。他に侍女がいたので捕縛して尋問中だ」
「クラリッサ王女は?」
「堂々と陛下に拝謁を申し出て、扉を斧で粉砕してジークハルトを見染めたことまで自白したので、王太子襲撃未遂として監禁した。某国に知らせたのであちらから迎えに来るだろう。賠償金持ってな」
クラリッサ王女は知能が足りないのか?他国で傍若無人に振る舞って許されるわけもないのに。
「ユリウス様は昨日のことは私達はお知らせしませんでしたがいつお知りに?」
「ああ すぐに宰相から知らせが来たので、クラリッサ王女の監禁と供の逮捕まで指図した」
「????」
「私は王宮にいたのだよ。今回のことで尻尾を出してくる奴らを捕まえるためにね」
「あのー ミケーレ嬢の具合は?」
ユリウスはミケーレを心配して公爵家に閉じこもっていたのではなかったのか?ジークハルトは気にかかっていたミケーレについて尋ねた。
「クラリッサ王女はミケーレが病気だと知っていただろう?」
ユリウスはそれには直接答えずにそう聞いた来た。
「はい もう死にかけていると言っておりました。極秘事項なのになぜ知っているのかと。やはり……」
「そう 国内で手引きしている貴族達がミケーレに毒を盛って、クラリッサ王女を引き入れたのだ」
「ハーケン公爵家の令嬢が王妃になったら困る奴らがいると言うことですね?」
「そうだ。ジークハルト、なかなか考えられるようになったな」
ユリウスに褒められたジークハルトは嬉しかったが、ちょっと複雑だ。そんなにひどいと思われていたのか……
「王太子妃候補は自薦他薦でごろごろいた。この国では王族も幼い頃からの婚約者は置かないけれども、教養もない令嬢では公務ができない。結局きちんと教育された高位貴族令嬢から選ぶことにはなる。数年前から王太子はミケーレに決めて口説いていたのだよ」
ユリウスが面倒くさいという顔をした。
「王太子殿下の気持ちはミケーレにあるのだから、もうこれで決まりだろうと思っていたのにクラリッサ王女が婚約者を捨ててまで乱入してきて、ミケーレに余計なことを吹き込んだりして無茶苦茶になった」
ああ それで私と見合いしたのか……うん 黒歴史…ジークハルトは思った。
「私がクラリッサ王女の兄の王太子と連携してクラリッサ王女を溺愛していた国王にこの世からお引き取り願った。暗愚な王だったらしくて王太子ももう待てないと思ったらしくすぐ話に乗ってくれた。こうして王女を溺愛してやりたい放題させていた国王を亡くしたクラリッサ王女は一旦は殿下を諦めて、元婚約者の伯爵令息の元に戻ろうとしたら、もう元婚約者と結婚していた。激怒したクラリッサ王女はその妻を毒殺しようとして失敗した。新国王が取り調べている途中に我が国に逃げて来たのが真相だ」
すごい己の欲望にだけ忠実だ。
「そのクラリッサ王女の欲望を利用して、ミケーレ嬢を亡き者にしてクラリッサ王女を王太子妃に据えようとしたわけですね
カイルがユリウスの方を見て言った。
「でもクラリッサ王女を王太子妃にして、我が国の貴族にどんな利益があるんだ?」
ジークハルトがカイルに聞くと
「傀儡でしょうか?ミケーレ嬢に公務をしろと言ったぐらいだからクラリッサ王女は公務ができる教養はないのでしょう。そこを付け込んで王太子妃にさせてやるが、側妃に貴族達の都合のいい娘を送り込もうとしている」
と言った。
「その貴族は……」
「手下はオルノー子爵、ダンドール子爵なのは証拠が出た。あとは黒幕だ」
ユリウスは含み笑いを漏らした。
「さあ 舞台に上がってもらおう。君たちもおいで」
何が始まるのだろうか。
それでも仕事はまだ沢山待っている。なんとか身支度して、最近はニーナもジークハルトが令嬢に見染めてもらえるように飾り立てる事を諦めたようだ。無言で使用人達に見送られて、のろのろと馬車に乗って登城した。
足取り重く執務室に向かう。ああ 陛下がクラリッサ色好み王女のもてなしをしろと言ったらどうしよう……私の貞操が風前の灯火だ。
執務室に入ると文官達が挨拶してきた。奥に目をやるとユリウスがいた。ジークハルトに続いてカイルが入ってきたのを見たユリウスは二人を執務室の小部屋に誘った。
「昨日はご苦労だった。クラリッサ王女の相手は大変だったろう」
「はい まさか肉弾戦で来るとは」
「扉を砕いた二人は逮捕されて牢に入れた。王太子の執務室の扉を砕いたのだ。重い罪になると思う」
「あの二人はクラリッサ王女が母国から連れて来たわけではない?」
「クラリッサ王女は兄の国王に逆らって出国してきているので、供は連れてこれなかった。あの二人はこの国に入国したときに世話をした貴族が当てがった供のうちの二人だ。他に侍女がいたので捕縛して尋問中だ」
「クラリッサ王女は?」
「堂々と陛下に拝謁を申し出て、扉を斧で粉砕してジークハルトを見染めたことまで自白したので、王太子襲撃未遂として監禁した。某国に知らせたのであちらから迎えに来るだろう。賠償金持ってな」
クラリッサ王女は知能が足りないのか?他国で傍若無人に振る舞って許されるわけもないのに。
「ユリウス様は昨日のことは私達はお知らせしませんでしたがいつお知りに?」
「ああ すぐに宰相から知らせが来たので、クラリッサ王女の監禁と供の逮捕まで指図した」
「????」
「私は王宮にいたのだよ。今回のことで尻尾を出してくる奴らを捕まえるためにね」
「あのー ミケーレ嬢の具合は?」
ユリウスはミケーレを心配して公爵家に閉じこもっていたのではなかったのか?ジークハルトは気にかかっていたミケーレについて尋ねた。
「クラリッサ王女はミケーレが病気だと知っていただろう?」
ユリウスはそれには直接答えずにそう聞いた来た。
「はい もう死にかけていると言っておりました。極秘事項なのになぜ知っているのかと。やはり……」
「そう 国内で手引きしている貴族達がミケーレに毒を盛って、クラリッサ王女を引き入れたのだ」
「ハーケン公爵家の令嬢が王妃になったら困る奴らがいると言うことですね?」
「そうだ。ジークハルト、なかなか考えられるようになったな」
ユリウスに褒められたジークハルトは嬉しかったが、ちょっと複雑だ。そんなにひどいと思われていたのか……
「王太子妃候補は自薦他薦でごろごろいた。この国では王族も幼い頃からの婚約者は置かないけれども、教養もない令嬢では公務ができない。結局きちんと教育された高位貴族令嬢から選ぶことにはなる。数年前から王太子はミケーレに決めて口説いていたのだよ」
ユリウスが面倒くさいという顔をした。
「王太子殿下の気持ちはミケーレにあるのだから、もうこれで決まりだろうと思っていたのにクラリッサ王女が婚約者を捨ててまで乱入してきて、ミケーレに余計なことを吹き込んだりして無茶苦茶になった」
ああ それで私と見合いしたのか……うん 黒歴史…ジークハルトは思った。
「私がクラリッサ王女の兄の王太子と連携してクラリッサ王女を溺愛していた国王にこの世からお引き取り願った。暗愚な王だったらしくて王太子ももう待てないと思ったらしくすぐ話に乗ってくれた。こうして王女を溺愛してやりたい放題させていた国王を亡くしたクラリッサ王女は一旦は殿下を諦めて、元婚約者の伯爵令息の元に戻ろうとしたら、もう元婚約者と結婚していた。激怒したクラリッサ王女はその妻を毒殺しようとして失敗した。新国王が取り調べている途中に我が国に逃げて来たのが真相だ」
すごい己の欲望にだけ忠実だ。
「そのクラリッサ王女の欲望を利用して、ミケーレ嬢を亡き者にしてクラリッサ王女を王太子妃に据えようとしたわけですね
カイルがユリウスの方を見て言った。
「でもクラリッサ王女を王太子妃にして、我が国の貴族にどんな利益があるんだ?」
ジークハルトがカイルに聞くと
「傀儡でしょうか?ミケーレ嬢に公務をしろと言ったぐらいだからクラリッサ王女は公務ができる教養はないのでしょう。そこを付け込んで王太子妃にさせてやるが、側妃に貴族達の都合のいい娘を送り込もうとしている」
と言った。
「その貴族は……」
「手下はオルノー子爵、ダンドール子爵なのは証拠が出た。あとは黒幕だ」
ユリウスは含み笑いを漏らした。
「さあ 舞台に上がってもらおう。君たちもおいで」
何が始まるのだろうか。
あなたにおすすめの小説
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
謹んで、婚約破棄をお受けいたします。
パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。