悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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 いつの間に扉の前に立っていたデングラー公爵。どこからエトムントの話を聞いていたのだろう。だれも動かず時間が止まったようだった。しばらくしてのろのろとエトムントが口を開こうとしたらデングラー公爵が先に話し始めた。

「エトムント お前の本性はこれか。養子縁組は解消する。モンデール伯爵家への帰属も認めない。モンデール伯爵には私から話をする。モンデール伯爵が親子の情で逆らう場合はモンデールは一族から放逐する。お前は貴族籍を除籍され平民としてどこへでも行け。だがこれだけ第一王子殿下に不敬を働いて無事に済むかな」

 冷たい凍るような声だった。

「義父上!義姉上が亡くなった今、後継は私に決まっているではありませんか」

 わざとらしい明るい声で、そう言いながらエトムントは公爵に近づいて行く。フェリクスは血走った目をしたエトムントの姿に違和感を覚え考える間もなく咄嗟に身体が動いた。

「護衛!エトムントを拘束しろ!」

 そう叫んでフェリクスはエトムントの前に回り込み、顎を下から殴り飛ばした。殴られて後ろにそのまま倒れ込んだエトムントの懐から隠していたナイフが転がり落ちた。
 護衛がエトムントを拘束し、転がり落ちたナイフを布で包んで押収した。

「殿下 危ないことはやめて下さい。御身を大切にしていただかないと」

 フェリクスには歩み寄って来たアランからのお説教が待っていた。フェリクスは面倒くさそうに答えた。

「咄嗟に身体が動いてしまった。これからは気をつけるよ」

 そう言ってもアランの怒りは収まらない。

「こう言うことは護衛に任せて下さい。エリックも動いていたじゃないですか。護衛の動きも目の端に入れて下さい」

 アランにガミガミ叱られる羽目になってしまった。

 デングラー公爵は近衛騎士に縛り上げられ『離せよ!』と抵抗しながら連れていかれる元養子を熱のない目で見つめていた。
 フェリクスは護衛が持っているエトムントの落としたナイフに視線を止めた。

「そのナイフ 加害者が持っていたナイフに似ている。柄のところの飾りが一緒のようだが」

 それを聞いてデングラー公爵が進み出てナイフを見た。

「……我が家の紋章です……」

「と言うことは加害者が持っていたナイフは被害者のものだと偽装するつもりだったとと言うことか。そしてナイフを加害者に渡したのはエトムントだろうな。とことん悪意を感じるな。エリック 加害者の持っていたナイフとこのナイフを比べ報告してくれ。入手経路も調べてくれ」

「了解いたしました」

 ナイフを持って護衛の一人が下がった。

「フェリクス殿下 助けて頂きありがとうございました。殿下の前に侍るのに凶器を持つなど許されることではありません。例え養子縁組を解消しても我が公爵家の罪です。処罰をお受けいたします」

 と言ってデングラー公爵が膝を折ってフェリクスの前に頭を垂れた。

「よい このことは不問としよう。頭を上げよ。ただエトムントの私への言葉の不敬は見逃さない」

 デングラー公爵は言われた通り頭を上げた。

「ですが、殿下 娘が死んでしまったので私は爵位を返上するつもりです」

「親族からもっとマシな養子取ればよかろう?」

「いいえ 殿下 今度のことは私にも責任があります」

 アランが立ったままのフェリクスと膝をついたままのデングラー公爵の間に入った。

「話をされるのでしたらお座りになってはどうでしょうか」

 そうアランに言われて、フェリクスも気が付いた。

「そうだな。話は聞かせてもらおう。まずは座ってくれ」

 デングラー公爵は素直にエトムントが座っていた椅子に座った。そしておもむろに口を開いた。

「愚かにも娘が婚約者に疎まれ義弟になった男に貶められていたことに気が付きませんでした」

「令嬢は父親に何も言わなかったのか」

「はい いえ 言わなかったのでなく言えなかったのです」

「どう言うことでしょうか」

 アランも口を挟む。

「長い話になりますがお時間よろしいでしょうか」

「大丈夫だ。この後の尋問される人間は頭を冷やした方がいい奴らばかりだ」

 フェリクスが片頬を歪めて笑った。

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