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閑話 エトムント
俺 エトムント・デングラー 国内有数の裕福な領地を持つ筆頭公爵家の養子。いや、だった男。
生まれはモンデール伯爵家の三男。生家は子沢山で俺の下にまだ妹が三人と弟が一人いる。全て正妻の母の所生だ。父母の間に愛があるからならよかった。残念ながら我が家はデングラー公爵の配下だからおこぼれでやっていけてるが、使用人すら絞らないとやっていけない伯爵家で愛人や妾など金のかかるものは置けない。父母は普段から不満をぶつけ合い仲は良くない。
俺が七歳の時一番下の四男が養子に行った。まだ乳児で何も分からなくてちょうどいいからと裕福な商会の子供に恵まれない会頭夫婦に引き取られてた。見返りか商会から援助が潤沢にあり、それまでは家庭教師は長男だけだったのが次男三男の俺たちにも家庭教師が付いた。
最初はどうせ三男。勉学や鍛錬しても先は王宮の文官か騎士団に入れれば御の字と熱が入らなかった。
ある日次男が『貧乏伯爵家の控えなんて先はない。だったら優秀と言う評判を貰い養子に行く』と言っているのを聞いた。
俺もそれに釣られるように勉学に鍛錬にと次男と争うように学んで、モンデール伯爵家の次男三男は優秀だと評判になった。
そのおかげで次男に本家であるデングラー公爵家の養子にと話が来た。両親は大喜びで送り出そうとしていた。俺はなぜ次男にと仄暗い怒りを抑えきれなかった。
そして次男の馬の鐙に夜中にこっそり切れ目を入れた。次男は馬を巧みに乗りこなし、立ち乗りが得意だ。スピードを出して立ち乗りをしたらーーーー思惑通りに落馬した次男は打ちどころが悪く死亡した。皆が慌てて騒ぐ中、鐙は傷のないものと交換しておいた。使用人が少ないのも幸いし、俺に注目するものはいなかった。
この縁を無くしたくない両親は同じように優秀ですと三男である俺をデングラー公爵家に推薦した。
こうして俺エトムントは輝かしい未来を兄を殺して手に入れた。
デングラー公爵家に入って、初対面した義姉は俺が今まで見たことないぐらい美少女だった。美しい金の髪、耀く紫水晶の瞳、ビスクドールのように整った顔にほんのりピンク色に色づいた唇。完璧な美少女だった。
それなのに偉ぶらず使用人にも優しく接していて、初めて会った俺にも優しく声をかけてくれた。そのソプラノも耳に心地よく響いた。
俺はこの少女と結婚して公爵家を継げたらいいのにと思ったが、残念ながらこの少女は第二王子の婚約者に決まったと言う。俺はそのために養子に選ばれたのだ。一人娘が養子を取らずに王家に嫁ぐために。
第二王子が王太子になったら王太子妃になる。当時優秀だと評判の第二王子にデングラー公爵家が後見に付いたのだ。間違いなく第二王子が王太子に選ばれると思われていた。
俺は最高の環境にわくわくしていた。貧乏伯爵家では手に入らなかったものに囲まれて最高の気分だった。デングラー公爵は細かいことを言わずに、欲しいものは買い与えてくれて、不自由しないように揃えてくれた。唯一の不満は義姉と接する機会が少ないこと。
住んでいる邸が違うのだ。俺はデングラー公爵と同じ邸に住み、勉強の到達度などを数人の家庭教師や剣の教師から義父であるデングラー公爵に報告される。そこでいい評価が得られなかったら生家に戻されたはずだ。だから常に緊張感があった。
それでも義姉と同い年であるから王立学園に進めば美しい義姉と一緒に過ごせることが楽しみだった。そう、入学までは美しい義姉と一緒に学園で過ごせることを俺は楽しみにしていたのだ。なのになぜこんなことになったのか。自分でもわからないのだ。義姉は死んだ。俺の目の前に階段から転がり落ちて来た。美しい義姉は無惨な姿になっても美しかった。
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