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閑話 デングラー公爵
私はルードルフ・デングラー この国の筆頭公爵家当主だ。
私達夫婦は貴族の婚姻では珍しく恋愛結婚だった。
妻と学園で知り合った時お互い婚約者がいた。
私の婚約者は幼馴染の間柄で政略は一切なかった。彼女が私と婚約したいと懇願してきて受けたものだった。妻に対するような熱烈な感情は抱いたことはなく、親戚の子と言うぐらいにしか思ってなかったが、結婚なんて穏やかなこのぐらいの気持ちでできる思っていた。が、妻と出会ってしまった。もう他の女性と結婚などできない。
妻とはお互いの婚約を解消するまで会うことすら不自由だ。一刻も早く解消したかった。
まず両親に伝えた。幼馴染だから幼い頃から知ってる婚約者を切り捨てるなどと父は拒否をした。だったら駆け落ちしても構わないと言うと、持病で身体がうまく動かせない父の代わりに在学中でも執務をしていた私の言うことが通った。
相手側の爵位は伯爵でこちらから婚約を解消を申し出ても支障はなかった。学園を卒業後私が父の後を継いで、三つ年下の婚約者が学園を卒業してから婚姻という約束だったので婚姻まで五年以上ある。学園入学前の婚約者と婚約を解消しても若い彼女のこれからは困らないだろうと慰謝料を何倍も支払うからと申し出た。
なのに婚約者に泣きすがられた。私を愛していると言って婚約解消に応じてくれない。
ほとほと困ったが君と結婚する気持ちはもうないと正直に話した。愛する人がいることも。
妻の方は政略だったので公爵家が利益補填することですぐ解消できたのに、私の婚約者だけいつまでも応じてくれなかった。
穏やかに解消しようと思っていたのにあまりに取り縋られて困った私は公爵家の権力を使い一方的に婚約破棄をした。それでも慰謝料は伯爵家にきちんと支払ったが倍額にした分は返されてしまった。
私達はお互いの学園卒業後結婚した。幸せだった。一つ欠けることは私の元婚約者が私と結婚できない事を嘆いて修道院に入ったこと。それでも妻と結婚できたことで日常に紛れて忘れていた。
なかなか子に恵まれなかったが、数年後ようやく身篭り、新しい生命を心待ちにしていたのに、妻が出産時急変し母体か子供かどちらかと言う状態になってしまった。
私はもちろん妻を選んだ。最悪子供など養子でもよかった。でも妻はあなたに子供をあげたいと医師に子供を残してくれと頼み込みんでいたそうだ。医師が妻の言う通りにしたかどうかわからないが、難産で何十時間も苦しみようやく女児を産み落とした。妻は死の床で繰り返し女児のことを私に頼み、産湯を使ったばかりの女児を抱きしめて亡くなった。
私は最愛を無くして呆然とした。これは一人の女性を虐げた私に対する神の仕返しか。
娘は妻と同じ髪の色同じ瞳の色、妻によく似た容貌。私は娘を見るのがつらくて目を逸らした。
そして自分は別邸に移り、乳母に養育一切を任せた。乳母は妻の乳姉妹で妻と姉妹のように育って妻に強い愛情を持っていた。
乳母は乳児の世話をろくにせず放置していた。死なない程度の世話のみしていた。
理由は妹のような妻を殺した子供だからだと後から自供した。
娘は泣いても泣いても構ってくれない事を本能で知り喜怒哀楽のない幼児になっていたと言う。娘が五歳になった頃新参の侍女が乳母に平手打ちをされても泣かない娘を憐れみ、私のところに処罰覚悟で駆け込んで来た。
私は久し振りに会った妻によく似た娘が痩せ衰えて衰弱している様に激怒し、乳母を主への虐待でその場で手打ちにした。他の見てみぬふりをした使用人も新参の侍女以外全員鞭打ちの上推薦書無しで解雇した。公爵家に勤めていたのに推薦書がないと言うのは今後ろくな職につけないと言うことだ。
乳母の夫も従者として私に使えていたが、乳母の所業を知っていても私に知らせなかった。乳母と同じく手打ちにした。そんなことで娘に対する罪は償えない。
この時私は娘を抱きしめて守ってやるべきだった。が、できなかった。それは私も私から妻を奪ったものとして娘を恨んでいたからだ。
新しい邸を買い、医者を付け、新しい使用人を自分の目で見て雇い、何かあったら自分に報告が来る様にして、貴族の娘として恥ずかしくない教養を身に付けさせた。これで自分は親としての責任を果たしていると思っていた。
この時、我が子なのに興味なく放置した実の父が一番悪いのだと誰か私にはっきり言ってくれたら娘は死ななくて済んだかもしれない。
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