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デングラー公爵は少し口籠もり、話す事を考えているようだった。フェリクスとアランは辛抱強くデングラー公爵が話始めるのを待った。
「殿下 これから私が話す事は荒唐無稽だと思われると思います」
「どんな話でも構わない。続けてくれ」
「……私は亡くなった妻とは学園で知り合いました。その時私には彼女の懇願で受けた幼馴染の婚約者がいましたが、妻と結ばれるために無理矢理幼馴染と婚約破棄をしました。彼女はまだ学園に入園前で私との婚約もそう知られていなかったので彼女には新しい婚約者がすぐ出来るだろうとたかをくくってました。私は婚約者に親戚の女の子程度の気持ちしかなかったのですが、あちらは違ったようでした。私に酷く執着していたのです。結局彼女は両親が婚約者破棄を受けても自分が私の婚約者だと言い張り、私のところに行こうとするので父親に修道院に入れられたと聞きました」
「……それは気の毒な話だな……」
フェリクスがぽつりと言うとデングラー公爵は頷いた。
「若い頃の事とは言え安易に彼女との婚約を受けるべきではありませんでした。結局彼女を不幸にしただけでしたから」
「それから元婚約者はずっと修道院に?」
アランが尋ねるとデングラー公爵は頭を横に振った。
「修道院と聞いたのですが、実は彼女はヒルシュフェルトの母方の実家に身を寄せていました。両親が私の結婚するところを見せないために」
ヒルシュフェルトーー国を一つ挟んだ東の国だーーーー
デングラー公爵は目を瞑って何かを考えているようだった。
「殿下は呪というものがあるのをご存知でしょうか。そしてそれが出来る巫女がヒルシュフェルトの血筋に生まれると言う事を」
フェリクスとアランがぴくりと眉を上げた。
「公爵…それをどこから…」
「妻を亡くしてからだいぶ経ってから元婚約者がヒルシュフェルトで亡くなったと聞き、伯爵家に弔問に出掛けました。恨言の一つでも言われる覚悟でして行ったのに、伯爵夫人に泣いて詫びられました」
「なぜ?」
「伯爵夫人はヒルシュフェルトの巫女の血筋にあたりそれがいやでわざわざ我が国に縁を求め嫁いで来たと。元婚約者は何も知らずにヒルシュフェルトに渡りそこで呪を知り、自分が巫女の血筋である事を喜び私の妻を呪ったそうです。そして妻は亡くなった。呪いには代償がいる。命には命。妻を呪った元婚約者は妻が亡くなってから徐々に衰えて亡くなったと伯爵夫人の実家から知らせてきたと」
「ーーーそんな事ができるのかーーー」
「お疑いはもっともです。私も荒唐無稽な事と半信半疑でした。でも伯爵夫人に残されたお子様に愛情が持てませんよね。顔も見たくないと思っていますよねと言われたのです。確かに妻を亡くす原因の妻そっくりの娘を愛せませんでした。それでずっと別邸に住まわせて極力会わないようにしていました。ですが表面的には取り繕っていたので、疎遠の伯爵夫人が知るはずもない。伯爵夫人が言うには元婚約者は万が一妻が生き残った時のために妻が産んだ子に私が愛情を持てないように呪ったと」
「それはなにを代償にして……」
「伯爵夫妻の娘に対する愛情です。亡くなったと実家から連絡が来るまで夫妻は娘の顔も見たくないと思っていたそうです。荼毘に伏された遺骨と遺品が送られてきてその中に呪に使った私から貰った指輪に赤で私の名前が書かれ黒焦げになって入っていたそうです。伯爵夫人は巫女なのでそれを使って何をしたかすぐわかったそうです」
「その呪と今回の事件はどう繋がっている?」
フェリクスが尋ねるとデングラー公爵は辛そうに声を絞り出した。
「それからようやく娘に興味が持て、愛情らしきものが娘にわきましたが、もう遅かったのです。私が見捨てている間に乳母に虐待されていた娘は私を信用してくれませんでした。せめて虐待が発覚した時に私が抱きしめていれば………」
「それで令嬢は父親に相談できなかったのか」
フェリクスいたましげにデングラー公爵を見て、今はもういない公爵令嬢を想った。
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