悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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「近衛第一騎士団長子息とはヨーゼフ・ヘルマンだな」

「はい!」

「身柄を拘束いたしました。興奮状態なので猿轡を噛ませて床に転がしてあります」

「そいつも興奮状態か……父親のヘルマン近衛第一騎士団長を呼べ。近衛に剣を向けるなど軽い罪では済まされない。父親を呼べ」

「すぐ伝令を飛ばします!」

「マリアとか言う女はどうした」

「『助けに来てくれたのね!』と両手を胸の前で組んで膝をついて感動してましたが、あっさり副団長に拘束されると『ヨーゼフの役立たず!その剣は飾りなの!』と騒いでおりました」

「また誰かが来るかもしれん。用心は怠るな」

「は!失礼します!」

 扉のところに立つ護衛の同僚に黙礼して伝令は出て行った。


「殿下 その女に関わった男達はどこかおかしな状態になっていますね」

 アランがそう言うとフェリクスは

「まだ三人目だ。あと二人を尋問してからだな。その前に誰か公爵令嬢と親しかった令嬢は見つかったか?」

 そう返した。

「聞いて参ります」

 アランが教室を出て行った後フェリクスが一人でいる時にいきなり扉が開いた。護衛が慌てて抑えようとしたが、無理矢理入ってきた人間が第二王子あることに気がついた。それでもやんわりと扉前に留めた。

「かまわない」

 フェリクスにそう言われて護衛達は身体を離した。アルベルトは急いでフェリクスに近寄った。

「兄上 マリアは無実です。即刻解放して下さい」

 フェリクスはじろりとアルベルトを眺めた。アルベルトは先程より落ち着いては来ているとフェリクスは見た。

「それはどう言う証拠を揃えての言葉かね?」

「兄上 彼女は私の妃になる存在です。近々私が立太子すれば王太子妃になりそして将来の王妃です。その彼女を拘束など不敬です。即刻解放を求めます。事情を聞きたいようでしたら私が立ち会いの上で話はしましょう。譲ってもそれだけです」


 フェリクスはだめだなこれは……とわからないようにため息をついた。

「アルベルトいろいろと突っ込むところはあるが、一番大事な事をまず聞こう。第二王子、君はいつ正式に立太子が決まった?寡聞ながら私は国王陛下からそのような話は伺っていない」

 フェリクスが落ち着いた声で問いただすと、アルベルトは急に落ち着きをなくした。そわそわと一度座ったのにまた立ち上がった。

「それはーーそのーー私が立太子すると言われてーーー」

「誰が言ったのか」

「ーーー陛下の中では私で決まっているとーーーー」

「それは国王陛下に言われたのか?」

「いえ あの母が」

「第一側妃がそう言ったと」

「母が言うなら間違い無いとーーーー」

「なぜ間違いないとおもえる?」

「私は優秀でデングラー公爵の後ろ盾もあってーーー」

 目が虚ろになって来た。

「その後ろ盾のデングラー公爵の令嬢との婚約はどうしたんだ。将来の縁戚としての後ろ盾なら公爵令嬢でなく男爵令嬢を選んだところで無くなるだろうよ」

「後継のエトムントがマリアをデングラー公爵家の養子にして、私達の後ろ盾になってくれるとーーーー」

「そのエトムントは先程デングラー公爵自身に養子縁組を解消され親元の伯爵家からも放逐され今は平民だ」

 アルベルトは驚きで声もないようだった。

「なぜーーエトムントがーー」

「義姉を陥れる企みに加担していた事を養父のデングラー公爵に聞かれたのだから当然ではないか?」

「陥れるなどそんな事するわけありません!」

「だが エトムントの証言では男爵令嬢と共謀して傷害の現行犯にデングラー公爵令嬢を仕立てようとした。その目撃者にエトムントがなるはずだった。つまり主犯は男爵令嬢だ」

「そ そんなわけありません!マリアは可愛く優しく思いやり深く魅力的で王妃に相応しい女性です」

 必死に言い募るアルベルトをフェリクスは呆れたように見た。

「男爵令嬢がどう魅力的であるかはこの事件に関係ない。誰が何のためにデングラー公爵令嬢を殺害したかだ」

「ですからあの女は自ーそう自殺ですよ!」

「残念ながら男爵令嬢がデングラー公爵令嬢を刺すところを見た目撃者がいる」

「は!そんなもの権力にものを言わせて偽証させたに違いありません!」

「自分が死んでいるのにか?どうやって偽証させる?しかも目撃者は生徒じゃない」

 さすがのアルベルトもグッと詰まってしまった。

「失礼します」

 アランが戻ってきた。

「おや 次は第二王子殿下でしたか?」

 訝しげにアランに見られてアルベルトは足音を荒げ、扉の前の護衛の身体を突き飛ばして出て行った。
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