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「興奮されていますね」
アルベルトが護衛を突き飛ばして出て行くのを見ながらアランがフェリクスに向かって言った。
「……子供の頃から交流がほぼ無かったので、彼がどんな人柄かよくわからないのだけれど王宮で彼は評判はよかった」
「ですがデングラー公爵令嬢と婚約してからの評判はよくないですね」
フェリクスがアランを見た。
「よく知ってるな」
「私の従兄がアルベルト殿下の侍従だったのですが、あまりに婚約者の扱いが酷くて苦言を呈して罷免されましてね。同じように批判するものは全て辞めさせられてます」
「そうか、アランの従兄と言うとボンズ伯爵の……」
「はい 次男です。アルベルト殿下の勘気を蒙ったので今は隣国におります。王妹殿下があちらの王妃になられてから交流が盛んですのであちらで文官になると思います」
「婚約者の扱いがひどいというと?」
「顔合わせのお茶会には行かれず、その後も舞踏会でのエスコートは形だけファーストダンスも無視をして他の令嬢とこれ見よがしに踊っていたようです」
「だがあの婚約は王命だったはず」
「第一側妃様はご実家が後ろ盾になってくれないのでデングラー公爵家を後ろ盾にと必死です。そのためアルベルト殿下を叱責していたと従兄が言っていました。第一側妃様が既に国王陛下の閨に侍っていない状態なのでこれ以上国王陛下のご関心を得ることは難しいので、折角結んだ婚約を無碍にしていると思われると不味いと焦っておられると思います」
それを聞いてフェリクスがぽつりと漏らした。
「今更だが我が母は相当恨まれているだろうな」
「それはもう。第一側妃様は無理矢理後宮入りをされましたので、陛下のお渡りは当初よりほぼ無く、王妃様も不仲のため離宮におこもりで、王宮で睦まじく暮らしていらっしゃるのは第二側妃という名前の実質上妻のフェリクス殿下のお母上ですから」
アランがあまりにきっぱり断言するのでフェリクスは苦笑いをした。
「ーー先程のデングラー公爵の元婚約者の話だが、恨むべきはデングラー公爵なのに死を望むのはその妻、不幸を望むのはその娘なのだな」
「できるなら取り戻したいーーという気持ちでしょうか」
「婚約者すらいない我らに女心はわからないな!」
「フェリクス殿下と一緒にされるのはちょっとーー」
お互い顔を見合わせて笑った。フェリクスはふと思い出す。
「私は夜会や舞踏会などあまり行かないが、アルベルトがデングラー公爵令嬢を放置して他の令嬢と踊っているところを見たことがある。蔑ろにしているという噂は聞いていたが、放置しているアルベルトの目がずっとデングラー公爵令嬢を追っていた。どう言う心理なのかと思った覚えがあるな」
「それもどう言う心理なのでしょうかね」
二人は黙り込んでしまった。
「失礼します」
出入口の護衛が入ってきた。
「ヘルマン近衛第一騎士団長がいらっしゃいました」
「そうか 子息と一緒に話をしよう。子息が拘束されている教室に案内してくれ。私達もすぐ向かう」
フェリクスとアランは近衛の護衛を引き連れてヨーゼフ・ヘルマンが拘束されている教室に向かった。
丁度入り口でヘルマン近衛第一騎士団長に出会った。ヘルマン近衛第一騎士団長は貴族でもあるが、ずっと騎士の最前線に出ているので、鍛え上げた身体をしていた。フェリクスを見るなり深々と礼をした。
「フェリクス殿下 この度は愚息が誠に申し訳ありません」
「最近様子がおかしいと思うことは無かったのか?」
「ーーーーございます。幼馴染で幼い頃から仲の良かった婚約者に婚約を解消されました。ヨーゼフの不義が原因でございます。情けないことに学園でマリアという男爵令嬢に夢中になり、婚約者を蔑ろにしておりました。婚約者の方が爵位が上ですので、あちらから荒立てずに解消してほしいと言われてしまえば応じる以外できませんーーー」
「ヨーゼフはそれでよかったのか」
「マリアという男爵令嬢を娶りたいと言い出しまして、調べたら学園でとんでもないことをしている令嬢なので反対したのですがーーー」
「聞き入れなかったと」
「左様でございます。このままでは廃嫡というところまで来ていまして、こんな騒ぎを起こしたのならもう決まりです」
「ヨーゼフの話も聞こうか」
そう言うフェリクスに従って教室に入っていった。
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