悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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 ヨーゼフは後ろ手に縛りあげられた上で両足も縛られて床に転がされていた。叫び声をあげるので猿轡もされていた。なんとかして拘束をはずそうと身をよじるので近衛騎士にその度に押さえつけられていた。
 フェリクス達が入室した姿を見てヨーゼフは何かを叫ぼうと顔を上げた。そしてフェリクスの後ろにいる父親が視界に入った瞬間ヨーゼフの目は溢れんばかりに見開かれた。

「話を聞くにはそれでは仕様がない。猿轡を取って椅子に座らせろ」

「殿下 危険です」

 マークス・マッテンハイマー近衛第一騎士団副団長が異を唱えた。
 そんな副団長の姿を認めて騎士団長が近づいた。

「私は息子の事でこれから謹慎する。全ての権限をこの時から副団長に委譲する」

 そう言って自分の剣帯につけられた騎士団長の徽章を外して副団長に手渡した。

「……団長……」

「頼んだぞ。マークス」

 副団長も子息が抜刀して容疑者の奪還を図った罪で団長もそのままではいられないことはわかっているので黙って受け取った。

「団長も副団長もいる。危険と言えないだろう。それに猿轡では何も言えない。猿轡を取ってやってくれ」

 フェリクスが側にいた護衛に声をかけた。声を掛けられた近衛騎士は乱暴にヨーゼフを立ち上がらせて、持ってきた椅子にドスンと座らせた。ヨーゼフは学園入学前前までは近衛の鍛錬所に来て訓練に参加していた。熱心に鍛錬する少年は可愛らしく団員のマスコットだった。
 ヨーゼフはほとんどの近衛騎士と顔見知りだったのだ。それなのに加害者のために親しい近衛騎士に斬りかかるとは。護衛の近衛騎士達は可愛がっていた弟分のしでかした事が信じられなかった。
 そのために敬愛する騎士団長が何かの罪に問われる事も辛かった。

 周りの思惑も知らずに、猿轡を外されたヨーゼフの第一声は

「父上!マリアは冤罪です!」

 と言うものだった。ここには王族もいる。最低の礼儀作法すらなくしたのかと周りの近衛騎士達はがっかりしていた。

「フェリクス殿下 申し訳ありません。この愚か者と先に話がしたいのですが」

 騎士団長がフェリクスに頭を下げた。
 フェリクスはそれを見ながら少し考えて

「構わないよ。少しの時間でいいか?」

 と聞いた。

「はい 長くは掛かりません」

 騎士団長はそう言って自分の息子に向き合った。

「ーーーヨーゼフーーーーお前は廃嫡だ。そして容疑者を連れ出そうとした罪、近衛騎士に抜刀した罪、平民になって償うのだ」

 騎士団長はヨーゼフの目を逸らせないようにガッチリと視線を合わせてそう言った。ヨーゼフは思わぬことを言われて驚愕で何も言えないようだった。それでもしばらくしてから

「ーーー父上 私はマリアが冤罪である事を信じております。近衛が取り囲んで拘束していると聞いたので、かわいそうに恐怖で震えているだろうと思ってーーー」

「ーーーーー剣を持って容疑者を逃すつもりだったのかーーー」

 騎士団長に言葉を遮られる。

「ーーーーそうではありません!守ってやろうとーーー」

「犯罪者を何から守る!」

 そう父親に怒鳴られてヨーゼフは思わず怯んだようだった。

「ヨーゼフ お前がどう言おうとどう考えようと事実は事実なんだ。私は弱いものを守ると言うことが騎士の第一歩だと教えて来た。なのにお前がしたことはなんだ。何も証拠もないことでデングラー公爵令嬢に辛く当たっていたそうじゃないか。少しでも公爵令嬢に味方すると、アルベルト殿下とその側近達の仕返しが普通じゃないほど庇った人間に降りかかる。生徒達はそれが怖くて公爵令嬢の周りには誰も近づけなかったそうじゃないか」

 フェリクスもアランもそれは初耳で思わず耳をそばだてる。ヨーゼフは顔色を悪くしながらもまだ抗弁する。

「だ 誰がそんな嘘をーーーー」

「婚約解消の詫びにヘス伯爵家に訪問した時にエミリア嬢に会ってもらえた。お前の不義密通での婚約解消だ。平身低頭で謝るしかない。エミリア嬢はヨーゼフに本当に愛する人ができたなら、婚約を先に解消してからにして欲しかった。だがそれよりもアルベルト殿下と側近達が男爵令嬢の言いなりになって公爵令嬢を虐めているその姿に幻滅したのだと。学園に入る前の弱いものに優しいヨーゼフはもうどこにもいない事が悲しいと言われたよ。どこでどう間違ってしまったんだ!ヨーゼフ!」

 父親の血を吐く叫びにヨーゼフは俯いた。


 
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