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「失礼します。デングラー公爵閣下がおいでになりました」
エリックがデングラー公爵の入室を告げた。
「検死も終わってすぐにも戻りたいだろうに申し訳ないが、至急確認したいことがあるので来てもらった。まずは座ってくれ」
デングラー公爵は勧められた先程までフリッツが座っていた椅子に座った。
「いいえ、まだ柩が届いておりませんのでまだ戻れません」
「なぜ柩に納めてから帰邸するのですか」
横からアランが尋ねるとデングラー公爵はアランを見て答えた。
「ーーーー遺体の損傷が激しいのです。最初は私が抱いて帰るつもりでしたが、医師から全身を骨折していて打撲も受けているので、抱き上げるとーーそのーーー遺体が損壊してしまう可能性があると。柩に納めて帰邸した方がいいと言われたのです。一度も抱いてあやしたこともない娘を最後に抱き上げようと思ったのですが、愚かで情け無い父はそれも叶いませんでした」
その言葉にフェリクスもアランも返答することもできない。それでも少し間を置いて話題をフェリクスが変えた。
「ボートン医官総長か」
「はい、彼が来るとは意外でした」
「アイリーン医師の付き添いとか言っていたが」
「はい、そう言ってましたが」
「デングラー公爵はボートン医官総長と親しいのか?」
「アイリーン嬢が私が後見しているものと婚約しましてその時に何度か会っています」
その名前を聞いてフェリクスとアランは目を見交わした。
「後見していると言うのは……」
デングラー公爵はフェリクスを見ながら答えた。
「ここの教師をしているダニエル・アンカーです」
「ダニエル・アンカーはアンカー伯爵家の三男だが養子だと聞くが、それはーーー」
デングラー公爵はフェリクスがなぜそんなことを聞くと言う顔をして言った。
「私がアンカー伯爵に頼みました」
「なぜそんなことを?公爵はダニエルとどう言う関係なのだ?」
デングラー公爵は言いにくそうだったが
「娘を虐待していた乳母の話をしましたが、ダニエルはその乳母の息子です」
と言ってフェリクスを見た。フェリクスはゆっくりと口を開いた。
「令嬢の乳兄弟ということか?」
「いいえ 乳姉妹はダニエルの妹の方です」
「どういうことか説明してもらっていいか?」
フェリクスはこれは動機に近づくのではとゴクリと唾を飲み込んだ。
「乳母と私の従者の間には子供がいました。ダニエルと妹です。親族は処刑されたような夫婦の子供達の引き取りを拒否したので孤児院に入れたのですが、ある日ダニエルが尋ねて来たのです。私は乳母は仕方ないが従者をしていた父親まで問答無用に処刑をした事を後悔していました。自分の情けなさで虐待に気がつかないだけなのに、夫婦なのに止めなかった。それだけで処刑してしまった。後から考えると娘と自分は別居していたから私の従者は妻の乳母とは別居だったから知らなかったかもしれない。それなのに一言も弁解せずに斬られるままでした。だから尋ねて来たダニエルが妹を養うために学園に行って自立したいので援助して欲しいと……」
「それで貴族の身分を買ってやったのですか?令嬢には冷たいのによその子供には優しいのですね」
アランが思わず言ってしまった。
「私の罪悪感からです」
デングラー公爵は俯いた。
「それでダニエルが学園を卒業して教師に採用される時の推薦人になったのですね?」
「そうです。学業の成績も良く人当たりもいいので採用試験も難なく通りました」
「妹はどうなったんですか」
「孤児院にいる時に引き取りたいと言う貴族がいたから渡したと言ってました」
アランがもしやと思いながら聞いてみた。
「その妹の名前と引取先は?」
「……マリアだったと。引き取った貴族はヘニッヒ男爵だったと思います」
こんなところに結びつきがあったのかとフェリクスは驚きを隠せなかった。
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